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第55話 継ぐ者
翌朝、康太は食卓には現れなかった
榊原も現れず…瑛太は呼びに行こうとして
一生に止められた
「辞めときましょう
最中だったら後悔しますよ?
まぁ見たいなら止めませんが…」
一生の言い分に…瑛太は動くのを止めた
一生には解っていたのだ…
康太の追い詰められた精神を…
康太が客間を出た後、ガタンと言う音でドアを開いたら…
康太が崩れ落ちる所だった
榊原がいたから…見送った
倒れた康太を榊原が抱き上げて連れて行くのを…見送った
それ位…緊張して自分を追い詰めて…康太は源右衛門の元に行った
その足で客間に来た
気丈に謝る姿は…ボロボロだった
そんな康太なら…朝は現れない確信があった
闘う前に…兄の顔は…未練が残る
康太は総ての軌道修正がなされない時は…
飛鳥井を出る気なのだろう…
その覚悟の元で今回は動いている
喩え何処へ行こうとも…我等は康太と共にある
それが3人の想いだった
悠太は、敢えて瑛太に、そんな言葉を投げ掛ける一生に……胸騒ぎを覚えていた
何かが起こる…
飛鳥井康太が動く時…
歯車が動き出してしまう
そうしたら誰も止められない…
飛鳥井の家の為なら…
康太は喜んで…飛鳥井を去る
瑛太も何かを感じ取っていた
だが瑛太は…言わない
総てを受け止める為に…見極めねばならないから…動かない
動けば…康太の策略が完遂されないのを、誰よりも知っているから…
朝…康太は榊原の胸の中にいた
眠らず…康太は、榊原を誘惑した
自ら服を脱ぎ…妖艶な目で榊原を誘い
耳元で…お前ので貫いて…と、甘く誘った
体も心も…ボロボロだった
だけど…榊原が欲しかった
体の奥が蠢き動いていた…こうなると
入れて掻き回してもらわないと…熱は引かない
気を失う位…愛されて…倒れた
倒れた康太を、榊原は胸に抱き締めた
康太は榊原から離れると、バスルームに向かった
シャワーの水を浴びる康太の体を、抱き締め
湯に切り替える
体を洗って服装を整えると、榊原は今日は一緒に動きます…と、康太に伝えた
「僕は飛鳥井康太の伴侶
共に君とありたい
君の行くところなら、僕は君と向かう」
榊原が言うと、康太は笑った
「ならば来い!
オレの横で総てを見届けろ
それがお前の定め
オレの生き様を目に焼き付けろ!」
康太に白いスーツを着せると…
榊原は漆黒のスーツに袖を通した
フォーマルでも礼服でもない
漆黒のスーツは、清四郎からのプレゼントだった
康太には白のスーツを。
榊清四郎は息子に対になるスーツを贈っていたのだ
支度をすると、康太は源右衛門の部屋のドアを叩いた。
榊原を、引き連れて…康太は源右衛門を待ち構えていた
ドアを開けた、飛鳥井源右衛門は真贋の正装に身を包んでいた
紋付き袴によく似た真贋の衣装…
それに袖を通す時は、飛鳥井の為…家の為…
飛鳥井源右衛門の覚悟を知る
そして源右衛門も、白いスーツを着た康太と
対の漆黒のスーツに身を包む榊原伊織の姿に
二人の覚悟を知った
源右衛門は、榊原を見ると
「共に逝くか?」と問い質した
榊原は源右衛門を射抜き身を正し「はい」と告げた
「ならば一緒に行け
それがお前の定め。
康太と共にあれ!」
源右衛門は豪快に笑った
源右衛門は、飛鳥井家の仏壇に礼をすると
「ならば、行くぞ!」と勝機の声を高らかに上げた
総てが必然で
寸分違わず軌跡を辿る
それが飛鳥井の真贋の瞳を持つものの努め
飛鳥井建設のビルの中へ、毅然と入る集団に受付嬢は息を飲んだ
源右衛門が受け付け嬢に
「飛鳥井玲香が部屋にいるかだけ教えろ!
アポは必要ない。」と問い質すと
受付嬢は役員のスケジュールを見ると
「お部屋においでです」と、答えた
康太は受付嬢に
「オレが来た事は、飛鳥井瑛太には伝えるな
決して教えるな!
お前は職務を全うしろ
解ったな?」
と、釘を刺した
何時もの甘えん坊の雰囲気ではなく毅然と言い放つ姿は別人だった
「弁えております!
言うなと申されるのなら
命を盗られようとも話は致しません!」
受付嬢は、プロの顔をして康太に言った
康太は片手を上げると…エレベーターに乗った
飛鳥井建設 広報室のドアを叩くと
中から飛鳥井玲香がドアを開けた
玲香は、驚いた
正装をした飛鳥井源右衛門を引き連れて
対のスーツに身を包んだ…康太と榊原がいたから…
何か言うことはあるのは明白だった
下手したら…飛鳥井康太を永遠に失うかも知れぬ‥‥現実を目の当たりにして
玲香は息を飲んだ
この二人が動く時…飛鳥井は大きな波に飲まれる
動き出した源右衛門も康太も止まりはしない
止めるなれば‥‥この命を擲ってでも‥‥止まりはせぬのは誰よりも解っていた
飛鳥井の眼を…持った生まれた人間を間近に見て来た、飛鳥井の家に嫁いだ玲香が一番良く解っていた
「義父様…康太
……そして伊織
お前達は、飛鳥井の家を懸けて我の元に来たと謂うのだな?
なれば…我は話を聞くしかないではないか
本当に我には部が悪い
お前等は飛鳥井を捨てる覚悟をしてる…
我がそれを受け入れられないのを知っていて…此処にいるのだからな…。」
飛鳥井玲香はソファーに座った
そして源右衛門と康太と榊原に座るように促した
玲香は内線を取ると
「何人たりとも我の部屋に近付けるでない!」と、指示を出した
電話の相手は玲香の本気に息を飲み了承した
玲香には、康太が動く理由に1つだけ心当たりがあった
狙いは…それだと言う確信もあった
「康太、お主が此処へ来た理由を話せ 」
玲香が、康太を促す
康太は不敵に嗤った
「母ちゃんはもう、オレの来た理由を知っている
承知の上で、納得出来る理由を聞かせろと言っている
オレが飛鳥井と刺し違えるつもりなのも解っている
飛鳥井に生きた女だからな…
ならば隠さずにオレは言おう!
それが飛鳥井を支え続けた母ちゃんに対する敬意の証だかんな!」
康太が言うと、玲香は微笑んだ
「17代続いた飛鳥井の家は終焉に向かって走ってる
だから、オレの様な子を成さない子供が生まれた…
オレは飛鳥井の終焉を告げる稀代の真贋として産まれて来た子供だ」
なっ…! 玲香は言葉を失った
「飛鳥井の再生の為に…オレは動いている
軌道に乗らぬなら…オレは飛鳥井の家を去る
考えても見ろよ
飛鳥井の跡を継げる子供が生まれていねぇって事実を…」
康太の言葉を受け、玲香は反論する
「うちには蒼太も恵太も悠太もいる…」と。
「母ちゃん、蒼太は無理だ
アイツはオレと同じだ、子は成せねぇ
アイツの恋愛対象は男だ
恵太は女しか産まれねぇ
しかもその後の子は‥‥望めねぇ
何故なら‥‥結婚生活事態‥‥破綻してるからだ
京香の子は女だった
女ばかり生まれて…飛鳥井は誰が継ぐ?
悠太は締めつければ潰れるぜ
アレは手綱を緩めて自由にさせてこそ使える
オレは女は抱けねぇ
もし抱けと言うなら……オレは伊織と心中する」
「ならば……飛鳥井は終わるか?
我れの代で終わらせては先祖に顔向けも出来ぬわ!」
玲香が嘆く
「母ちゃん…本当は言うつもりはなかった
京香の腹には瑛太の子供がいる」
玲香は…なっ!…と、驚愕の瞳で康太を見た
「京香は、瑛太を捨てたんじゃねぇ
瑛太を守るために家を出た
腹の子を隠して、京香は瑛太の側を離れるしかなかった」
「何故じゃ!
それは裏切りではないのか!」
玲香は康太に迫った
だが康太は微動だにせず言い切った
「裏切りではない
ならば母に問おう!
目の前に自分の両親の寿命が今にも尽きようとしているとする
家は火の車で倒産は免れねぇ状況だ
京香の置かれた立場は‥‥親を取るか旦那を取るか‥しなかった
京香は旦那に一緒に猛火の中へ飛び込んでくれとは言えなかったんだ!
なら飛鳥井玲香に問おう
母ちゃんはそんな状態に立たされて、自分の亭主に助けてと言えるかよ?
亭主に身を焼いてくれと、頼めるのか?」
答えられよ…飛鳥井玲香…と、康太は母に問うた
玲香は言葉を失なった
そんな事は出来る筈などないから…
「京香は選択するしかなかった
総てを知って…板挟みに苦しむ夫は見なくはないからな‥
愛する男を切って、己の身を火の中に投じた
それを裏切りと言うのであれば…京香は…
飛鳥井には戻れぬ
戻らねば…飛鳥井の道は断たれる
軌道に乗せるのがオレの飛鳥井での使命
使命を果たせぬならば、オレは飛鳥井を出る
オレの果てを詠む目には終焉しか映らねぇからな…」
玲香は…やはり折れるしかないではないか…と、嘆いた
「母ちゃんが京香を許して受け入れるならば、京香は瑛太の分身を産む
その子供が飛鳥井の果てを続けていく」
許して受け入れるならば、…?
「ならば今の腹の子は…どうなる?」
「あの子供はオレの器に近い
オレがもらう!
真贋を受け継がせるのは、その子だ
瑛太には告げない
瑛太の知らぬ場所で子供を産ませる
そして身軽になったら…飛鳥井に戻す
だから瑛太は…この先も自分の子供…と、知る事は…オレが許さねぇ
京香にも同じ罰を与えた
母親とは名乗らせねぇ
同じ屋根の下で暮らしながらも
親とは語らせない!
それがオレの下した
瑛太と京香への罰だ」
玲香は涙を流した
そんな辛い罪を…選択せざるしかないと…言うのか
「母ちゃん、オレは業が深い
あの世に行くまでオレは子供を愛す
それが飛鳥井の未来に繋がる
オレは飛鳥井の礎になる
今、新しい風を飛鳥井に入れなければ
飛鳥井は滅ぶ
京香を、許せ
そして受け入れろ
そしたら、京香は、瑛太の分身を産む
オレの子供は全部で4人
瑛太の分身を助け…生きていく
それがオレの目に写る…飛鳥井の果てだ」
玲香の目の前には…命を懸けた家族がいた
飛鳥井の明日を視る目を持つ二人と…一対の伴侶
共に行く覚悟は決まっている
だが…康太は…まだ18…
飛鳥井を背負わせたのは必然的とは言え…
康太の背負う荷物は何時も重い…
こんな小さいのに…
まだ子供なのに…
果てしのない先を詠み背負う…
玲香は康太を抱き締めた
「ならば、母は京香を迎えよう
喜んで迎えて遺恨は残さぬ!
飛鳥井の嫁に真贋が選んだ人間を…許さない筈などない
でも…京香は辛い道を…歩むのだな…
ならば母は…京香を支えよう
京香が飛鳥井にいられるように…京香の礎に…母はなる」
康太は母ちゃん…ありがとうと呟いた
「お前の背負う荷物は重い
母も背負おう
でもな康太…瑛太は何時か知るぞ?
あれは勘の良い男だ…その時…お前はどうする…」
「瑛兄は解っていても…口に出さねぇ
そう言う男だ…
我が子と解っても黙って見守る
しかもオレの器を持って産まれたら…
どの道、子供はオレの手で育てるのが…
飛鳥井の定め
側にはいられはしない。」
涙ぐむ飛鳥井玲香に、源右衛門は
「良く堪えてくれた…玲香
お前には辛い道を歩かせる
だが康太も…わしも修羅の道を歩むしかないのだ…解ってくれ」
深々と頭を下げた
「義父様!頭をおあげになって…
義父様と、康太と伊織が修羅を歩むなら…
我も康太の荷物を背負うのみ…
我は飛鳥井の女ですから…。
終わらせる訳には行きません!」
玲香の瞳には強い光が灯っていた
「母ちゃん、今日オレは真壁を訪ねる
京香を真壁から解き放つ
喩えどんな妨害が有ろうとも…オレは逝く」
康太が宣言すると
「ならば!、母も逝こう!
私はこの目で…京香を見届ける義務がある
瑛太の知らぬ所で動かすのなら、母はそれを最後まで…見届けようぞ!」
着替えて参る…と玲香は奥の部屋へ行った
暫くして…飛鳥井玲香は、黒い着物を身に纏った
飛鳥井の正装をして、母は康太の前に姿を表した
母の覚悟は…未来永劫…飛鳥井の為に…
と、物語っていた
康太が廊下に出ると…運悪く…
副社長室のドアが開いた
何処かへ行くのか、慌てていた
そして…ふと…廊下の奥に康太の姿を見つけた
何故…康太が…?
受付嬢は…康太の訪問を知らせてはくれなかった…
康太の後ろを榊原が続き………
その後には…正装をした
飛鳥井源右衛門と……
飛鳥井玲香……………
康太は瑛太に気が付いたが…
瑛太の方へは来ない…
そればかりか…目付きがキツい…
瑛太は何があったのか…
解らなかった…
康太に何かあったら…兄の自分が…出る!
自分の命に変えても…康太を守る
「康太…」瑛太が康太を呼ぶ
その前に…康太を隠すように…
飛鳥井玲香が出て
「お主は自分の仕事をするがよい!
康太は真贋の役目を果たしておるじゃ!」と告げた
「さぁ、康太…行くぞよ!」
飛鳥井玲香は、康太を促す
こんな所で…躓いていたら…瑛太に隠すのは難しいぞ…と、言わんばかりに…
康太は姿勢を正すと、瑛太に頭を下げた
そして、体を起こすと、歩き出した
瑛太の横を康太は…何も言わず通り過ぎる…
運命の歯車が動き出しているのだ…
何かは解らない…
解らないが…
真贋の2人が動いているのだ…
もう歯車は回ってしまっているのだ…
そして母が出るなら…
もう…何も出来る筈などないのだ…
瑛太は気を取り直して…歩き出した
飛鳥井の家の為に…
真壁の家に行く前に、弁護士の所へ寄った
ある程度の事情を話し、弁護士に動いてもらう
弁護士は、真壁の家に一緒に向かった
家のチャイムを鳴らすと、家の中から…京香が姿を現した
京香は…飛鳥井玲香の姿に…
土下座をしょうと膝をついた
「京香、我は今日お前を責めに来た訳ではない
康太から話は聞いた
再びお前を飛鳥井に迎える為の布石を打ちに来たのだ 」
京香を立ち上がらせ、玲香は京香を抱き締めた
「真贋の源右衛門と康太が決めた事を、我が言う言葉はない
子供を産んだ後飛鳥井の家に戻られよ
それがお主の定め
母と名乗れぬ修羅の道をお前に歩ませねばならぬ…義母を許せ…」
京香は首をふった
飛鳥井源右衛門は、玲香…と名を呼んだ
すると、玲香は背筋を正した
康太が京香に
「京香、さぁオレを家に招き入れろ」と、言うと
京香は、全員を家の中に招き入れた
和室に通された…先には…
首に鈴と本人の詳細が書いた紙がぶら下げられた…母親がいた
そしてその横のベットには…父親が眠っていた
それを見ただけで…苦渋の選択だと理解出来た
「すみません!
目を離すと外に出て行くので…此処でお願い致します」
京香が頭を下げた
テーブルの上には…既に抵当に入った家の書類が出してあった
「会社の債権は、既に渡って…自宅も抵当に入っています…
兄は…行方不明になり、今朝…車に排気ガスを引き込んで死んでいるのを…発見されました…」
と、京香は疲れた顔をして…事情を話した
「京香さん、私は、弁護士の天宮東青です」
弁護士が京香に声をかけた
「名義を直ちに調べる必用があります
経営者に貴方の名前が連ねてあったら…
貴方にかかる債権は免れない…
この書類にサインをして下さい
最悪…経営に名前を連ねている場合…
債権者は貴方に取り立てに来ます
調べて手を打たねばなりません!」
京香は、サインをした
飛鳥井源右衛門は、京香にパンフレットを渡した
「お爺様…これは?」
手に取り…京香は息を飲んだ
「お主の母親は、これから施設に入れる
京香は、父親を連れ…この病院に逝け
父を看取り…お主は子供を生め
そして…総てカタを着けたら、康太が迎えに行く
だから帰って来るのじゃ」
涙で揺れる先に康太がいた
「京香、お前は母に会わす顔はないと言った
もう嫁として認めてもらえない…と、言った
だがオレは母と刺し違えるつもりで、説得した
そして母は許したぞ
もうお前を拒む理由はない
今すぐ母親をその特養ホームから迎えが来たら、連れていく
そしてお前は父親とその病院に行き子を産め
産まれたらオレはお前を迎えに行く
だがそれは…お前等親子を引き裂く瞬間を告げる
オレを恨め京香……。
お前に罪を背負わす…オレを恨め」
康太は…京香に告げる言葉を
一生に死刑宣告をした時の様に…
辛く…苦しんだ…
そんな康太の想いが…京香には痛い程解っていた
子供の時から見てきた康太が…
その台詞をどんな気持ちで言うか…
「康太に渡す子を…我は何としてでも産む
迷っていた時に康太が現れた
そして産めと言った
この子は…康太の所へ行く定めだったのだ
康太…我はお前に救われた…
死のうと思っていたのだ…あの時…
それをこの世に留めたのはお前だ康太…。
ありがとう康太…
お前を恨むなど出来る筈などないではないか…」
京香は康太の手を握り締め…康太に言った
愛してる康太…
お前への愛は未来永劫…瑛太と重なり愛して行く………と。
康太を抱き締める京香に玲香は、
「さぁ行きますよ!
支度をしてらっしゃい
これから向かうと…手配はしてある
お主には我が付き添う
静岡の病院で、お主は父親と過ごせ…
そこへ私は送って逝く
母親の方は、義父様が手配したから迎えが来る
さぁ行きますよ
康太、伊織、お前ら二人はタクシーに乗って家へ帰りなさい
そして白馬に立て!
京香は、我が責任を持って送り届ける」
玲香は行きなさい…と指示をした
康太は立ち上がると、源右衛門と玲香に頭を下げた
その後ろには榊原も…頭を下げていた…
榊原の姿は…康太の伴侶そのものだった
玲香は二人を送り出すと、京香に寄り添った
真壁の家を出た康太は倒れそうになっていた
張り詰めた気持ちが…弛み…崩れそうだった
榊原は、少し歩いた場所にあるカフェに入り、康太を座らせた
榊原は康太の…震える手を握り締めた
「伊織…すまねぇ」
康太は…謝った
「僕に謝らなくて良いですよ
僕は君の為にいるんですから
君を支えれて良かったと思います」
伊織…と、康太が言葉にならない呟きを言う
ラテを注文し、飲む頃には…康太の緊張は解れていた
「うちの母ちゃんを説き伏せるのは…命を懸けねぇと、見破られる…」
康太は大きい溜め息を着いた
「康太…蒼太さんは本当に…?
そして恵太さんの家庭は‥‥」
「あぁ……。
ハッタリは母ちゃんには通用しない
蒼太は…男しか愛せない。だから家を出た
恵兄が最近顔を出さないのは‥‥家族に向けられる顔がねぇからだ‥‥
まぁ恵兄は‥‥」
康太は言葉を濁した
榊原は…あの美しい顔なら…と思った
その心を読んでかは定かではないが…康太は
「伊織…蒼太のホジションは伊織と同じ
アイツは、抱く方で…抱かれる方ではない…」
と、ボソッと言った
榊原は…言葉を失なった…
康太は笑った
楽しそうに…何時もの笑顔で
「さてと、行こうか伊織
明日に白馬に立つ
今日は雑魚寝するもんよー」
「朝まで…康太の下のお口は…僕を食べてましたからね。
これ以上犯ると、明日は白馬に行けなくなりますもんね」
……と、榊原がボソッと呟く
すると康太の顔が赤くなり…涙目で榊原を睨んだ
「その顔は逆効果だと…身をもって知っているんじゃないんですか?」
「伊織…意地悪すんな。」
榊原は笑って康太に手を差し出した
「さぁ帰りますよ。タクシーで帰りましょうか?」
康太はその手を取り頷いた
飛鳥井の家に帰り、スーツを脱ぐと二人は客間に行った
二人を待ってた一生と四宮は「お帰り」と、迎えてくれた
「明日、白馬に立つ!お待たせ一生」
一生は、康太に抱き着いた
「俺は何時でも待つと言ったのに…」
康太は一生の背中を叩いた
そして四宮に「ただいま」と言うと
一生を引き剥がし、四宮が抱き着いた
「康太…庭で花火をしましょ」
四宮が誘うと
「なら飯食ったら花火をやるかんな!」
と、康太が楽しげに言った
キッチンでご飯を食べてると、瑛太が帰ってきた
康太はキッチンを飛び出し、玄関の瑛太目掛けて走って行き、その胸に飛び込んだ
「瑛兄お帰り!」
甘えてスリスリした
スリスリ…康太にすり寄られ、瑛太は康太抱き上げた
「オレは瑛兄が好きだ
だから瑛兄には世界で一番幸せになって欲しい。」
康太は瑛太の首に腕を巻き付け、瑛太の頬に接吻を落とした
「康太…兄は幸せだ
お前がいれば…私は生きていける」
腕に抱き上げた康太は、楽しそうに笑った
「瑛兄、花火をやるもんよー
そして明日には白馬に行くかんな
暫しの別れだ瑛兄。」
瑛太の口にチュツと、キスをして悪戯っ子の様に笑った
会社で見た康太は…命を懸けていた…
見間違いか…?
嫌…あの場所で、あの時見た康太は…覚悟を秘めていた
でも聞いても話さないのは解っている
康太を追い詰めても…口を割らない
だから最初から瑛太は何も聞かずにおくのだ
こんな時は…時を経て知る事となる
今は康太は話さなくとも…何時か康太の真意は見える
だから待てば良いのだ…待っていれば‥‥
食事を終えると、庭で花火を始めた
打ち上げ花火は無理だから…無難な花火を皆でやった
悠太は…足の上に線香花火を落として…火傷した
康太や皆に笑われて…手当てしてもらった
瑛太も久し振りの花火に…暫しの時を楽しんだ
そして…客間で…皆で雑魚寝する時も
康太は瑛太の手を離さなかった
瑛太は仕方なく…
客間で皆と雑魚寝した
康太は瑛太に抱き着いて眠った…
涙が止まらない…康太を胸に抱き締め…
瑛太は何かを悟っていた…
康太は…何時も大変な荷物を背負う
瑛太は康太の為なら…命さえ…かけても後悔はしない
愛しい弟だ…
愛しすぎて…道を踏み外してしまいそうな時もあった…
兄として…康太を見守る…決意は…死ぬより辛い…
重い十字架を背負う定めだった
瑛太は…康太の頭を撫でて
子供の時そうして慰めた様に…
側にいて…康太を抱き締めた
やがて…眠りに落ちる瞬間まで…
兄が…お前を守ろう…
総てのモノからお前を守ろう…
お前のいない世界では生きられない…
お前がいるから…生きていけるのだから…
瑛太の腕の温もりに…康太は背負う重さに涙が止まらなかった
この男を…荊棘の道へ突き落とす…
弟を許してくれ…と。
瑛太は…我が子と直ぐに理解する
それでも…親として抱き締められないのだ…
そんな辛い世界に…瑛太を突き落とす…
弟を恨んでくれて…
構わないから…
朝起きると腕の中の康太は眠っていた
瑛太にしがみつき康太は眠っていた
辺りを見ると…一生と、目が合った
「一生、起きてたんですか?」
そう声をかけると…寝てねぇから…と返答があった
「多分…皆…眠っちゃいねぇ」
一生の言葉に…瑛太は…総てを理解した
一晩中…泣いていた…康太の気持ちが…
此処にいる榊原や一生達には見届ける義務があったのだ…
瑛太は…何も言わず…胸の中の康太を起こした
「康太…起きなさい。」
呼ばれて…目を開ける康太は…何時もの康太だった
どれだけの精神力で…己を建て直しているんだろう…この子は…
「今日は白馬に立つのだろ?
白馬からの迎えが9時頃になると連絡があった
それまでに支度をしなさい。
気を付けてな
お前に何かあったら…
兄は生きられない…事だけ知っておきなさい…」
康太の頬に手をあて顔を上げさせる
「瑛兄、解ってるよ!」
「ならば良い。私は支度をして来る
お前も支度をして、朝御飯だ」
瑛太は起き上がり、去って行った
「さてと、オレも支度して飯食うもんよー
伊織、部屋に帰ってシャワーするかんな」
康太が榊原を急かす
「ハイハイ!全身洗って差し上げますよ」
榊原が、康太を抱き締め言う
完全に二人の世界…
……そんな会話を朝から聞かせんな!
と、一生は怒鳴った
康太は笑って、「じゃあ、お前は聡一郎にお風呂に入れてもらえ!」って返した
聡一郎は「止めて下さい康太!こんなガサツな男とシャワーなど冗談でも止めて下さい!」と、怒った
一生は、聡一郎~と情けない声で…トボトボとバスルームに行った
康太と榊原は、笑いながら自室に戻った
自室に戻ってシャワーを、浴びると…
榊原の手が執拗に康太に伸びた
指が康太の素肌を這う
後ろに伸ばされる指に…康太は榊原にしがみついた
「伊織…無理…」
昨夜は朝まで…幾度となく求めあった…
なのに…今朝も…それは体が辛い…
バスタブに入り座ると…榊原は康太を抱き上げた
そして自分の性器の上に体を落とす
「入るぅ…ねっ…伊織が入って来るぅ…」
「兄と解っていても…妬けるんですよ…康太…」
康太は榊原の、首に腕を巻き付け接吻した
「伊織だけ…なのに…」
「君を愛し過ぎる男の妬きもちです…
許しなさい」
激しく体が上下する
康太の肉壁が榊原を受け入れて歓喜して蠢く
敏感に綻んだ肉壁は、榊原に絡み付き締め上げる
康太の体は…天性の男を泣かせる躯…
男は一度手にしたら…溺れて…狂う…
「ぁっ…ぃくぅ…伊織…奥を突いてぇ…」
決定的なトドメを刺してと…康太が哀願する
榊原は、康太の願い通り、奥のイイ場所で康太の肉壁を擦り上げた
榊原の腹に…康太の白濁を飛び散らすと同時に…康太の中で…榊原は総てを吐き出した
「伊織…疲れたぁ…」
康太がぐったりと榊原に凭れかかった
「嫌だった…?」
康太を好き勝手したのは認めるから…聞いてみる
「嫌な筈…ない
伊織が欲してくれて嬉しい」
嬉しそうに…康太は笑った
……胯間にずんと来る言葉だった
「ぃ…伊織…」
…………やはり、胯間にずんと来た
康太の中で…さっきよりデカく成長していた
「康太が育てたんでしょ?」
康太は首をふった
再び始まった快感に…康太は泣いて榊原にしがみついた
康太の中で…長く吐き出すまで…康太は榊原に、犯され続けた
ともだちにシェアしよう!