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第56話 繋がる想い

情事の処理をして、体を洗って出る頃には…疲れきっていた ベットに康太は寝そべっていた 「康太…大丈夫?」 榊原は、犯り過ぎ…と反省 「伊織…オレは腹が減ってんだぞ なのによぉー」 時計を見ると…8時半 後、30分て…迎えが来る 榊原は、慌てて支度をした 荷造りはもう、してあった それを玄関に運び…一生と逢う 朝食に現れなかったのだから…一目瞭然 「旦那…嫉妬せんでも…アレは旦那のでっしゃろ…」 瑛太に妬いた…榊原の想いはお見通しだった 「確かめたくなる…我が儘だって…解っているんですけどね‥‥」 ついつい零れる榊原の想いを、一生は掬い上げ戻してやる 「康太は、そんな旦那の想いは解っている だから、お前を受け入れる 康太はお前の為なら…死ぬ瞬間だって脚を開く…それが飛鳥井康太だ お前は愛されてる 命を懸けてお前の愛を生きてんだぜ」 一生は、榊原の肩を叩いた 「一生…ありがとう」 「お前らの朝食はお握り作っておいたから、車の中で食え! 動けねぇなら旦那が連れてこい!」 一生は笑って、応接間に入って行った 榊原は、部屋に戻ると康太は起きていた 「辛くない?」 榊原が声をかけると、大丈夫だ…と、笑っていた 康太の支度をして、部屋を出て応接間に向かうと皆がいた 「腹へったぁ…一生何か食わせろ」 康太が一生に、催促する 「緑川一生特製だ」 と、一生はバカデカい、真っ黒に海苔の巻いたお握りを手渡した 康太はそれを受け取り、かじりついた 「ほれ!旦那にも。」 榊原もそれを受け取り…食べる 「力哉が作ったお握りもある お菓子も買った。さぁ行くぞ」 康太の空腹時の我が儘を計算して、一生は食料を買い込んでいた 9時少し前に、白馬からの迎えが来た 車から降りたのは、白馬の責任者の朝宮一騎 そして………篠崎青磁…一生の逢いたかった人間だ 「康太君、お迎えに上がりました」 朝宮は頭を下げて、挨拶した 朝宮一樹に取って飛鳥井康太は…雇用主なのだ 丁重に饗す存在。 「朝宮、久し振りだな また男前になったな」 康太が笑いかけると、朝宮は礼をした 「篠崎…待ちきれなくて、お前自ら来たか ならばその目で見てみろ、緑川慎吾の忘れ形見を!」 康太は篠崎に一生を紹介する事なく…自分の目で探せ…と言った 沢山いる中から…篠崎は、的確に緑川一生を探し抱き締めた 「慎吾の忘れ形見のこの器 総てがアイツに良く似てる この子以外にアイツを受け継いだ器は見当たらない」 康太は嗤う 「流石、篠崎! その男こそ未来を完遂する事なく…この世を去った、緑川慎吾の忘れ形見、緑川一生だ 篠崎…そのうちお前に預ける この男はオレの果てを見届ける者 器は慎吾よりデカく…己の信念は曲げない 共に生きて行く道は重なる…繋がり… 何時かは…父を越える!お前が育てろ」 篠崎は、御意!と康太に倣った 「一生…お前は越えろ… 何時か…父を越えて…サラブレッドの父になれ。」 一生は、何も言わず頷いた 四宮と康太と榊原は車に乗った 力哉はまだお仕事 悠太は自分で行くと言い…片付けたら、兄の元に行く…と告げ、康太は了承した そして…一人足りなかった… 居なきゃいけない人間が姿を現さなかった 一生も車に乗り込み…篠崎を押し込んだ朝宮は「発車しますよ」と、告げた 車は走りだし…康太は一番後の席をじんどった そして榊原の膝の上に寝そべり…眠りに落ちた 榊原は、康太の髪を撫で…目を閉じた 暫く眠り、目を開けた康太は一生に 「何故、隼人はいない? 休みを取った筈だぞ」と、問い詰めた 「昨夜も隼人はいなかった…何故だ 」 康太は引かない 一生は「俺にも解らねぇ。お前を待ってたら隼人から電話があって…直接白馬に行く…と告げ…電話を切った かけ直したが…繋がらねぇ 暫し待て!俺が情報を集める」 と、言い切った 康太は…解った…と、言い黙った 「あぁー腹へった! オレに何か食わせろ 」 康太は一生にねだった その時…一生の手に…康太の好きなとんがりコーンを、見つけ唸った 「あ~おめぇはよぉ~ その菓子をオレにも食わせろ! 」 康太が吠えると、とんがりコーンの一つを指に刺し康太の口に入れた パクッと一生の指に齧り着くと、一生が 痛てぇぇぇぇ~と叫んだ 四宮は、一生の手からとんがりコーンを奪うと康太に渡した そして飲み物もクーラーボックスから取り… 榊原と二人分渡した 「んとに…一生は懲りない男ですね」 指をさすさす撫でる一生に四宮は…キツい一発を食らわす そこで負ける一生じゃなかった 「俺のゴットハンドを欲する恋人を満足させられなくなったら、どうすんだよ! 」 と、下ネタ爆裂 「別に困らんよな、聡一郎? アイツは夢見てるもんよー。 目を醒まさせてやれ♪」 康太から直々に指令を受け、聡一郎はほくそ笑む そこへ榊原が身を乗りだし一生の耳をフーッと吹いた すると一生は「ぎゃぁぁぁ…」と悲鳴を上げた 「ゴットハンドが聞いて呆れる… 耳が性感帯なんですからね…」 一生は榊原を睨み付けた 榊原は笑って…君の性感帯なら…解りますよ ……と、嗤った 「………ったく冗談にならねぇ下ネタ言いやがってよぉ 」 一生がボヤいた 「白馬に入りました。後少しで到着します」 朝宮は、康太に告げた 飛鳥井の厩舎は、長野の山の裾野にある 強い足腰を築ける様に、山の傾斜を馬が走れるように整地をして、馬の育成に最適なこの地の環境を見て厩舎を建てたのは飛鳥井源右衛門だった 康太はこの厩舎を18になった今、源右衛門から引き継いでいた 20になる前に真贋の総てを引き継ぐ 言葉通り…飛鳥井源右衛門を継ぐのだ 「到着しました 」 と、朝宮は言うと降りてドアを開けに行く 車のドアを開けると…従業員が出迎えて お辞儀をしていた 康太は慣れたもので、その前を堂々と進んで行った ホテル並の建物の中に通される 実際に此処をホテルにしたのは、康太だった 飛鳥井の人間が年に数回来るだけの為に置いておくのは勿体無い…と、ホテルにして営業をさせた 馬やポニーも乗れるホテルとして白馬では観光名所にもなっていた 況してや、その厩舎からチャンピオンが出れば…ホテルの箔は更に上がる 康太は荷物を部屋に運ぶように師事すると 厩舎に行く、と告げた 観光用のトラックの横を歩くと、関係者以外立ち入り禁止の高い柵が現れる 朝宮は、そこの鍵を開けると康太達を通した 康太は篠崎と共に馬に駆け寄った 「篠崎、これが次にデビューする馬か?」 「はい。乗りますか? 癖がなく乗りやすい馬ですよ 」 康太は頷き、鞍のない馬に乗り跨がった 軽く走ると、リズミカルに走る姿はコースに出ても謙遜もない 榊原は、馬に乗る康太の姿を初めて目にした 騎手さながらの姿勢で、鞍のない馬に乗り 康太は馬から降りると篠崎に向き直った 「脚も良い。軸も良い。 何時デビューしてもおかしくない馬だ。」 康太は一生を呼ぶと馬に乗れと、指示した 一生は、馬の横に行くと、馬の耳を擦りキスをした そして鞍をつけない馬に乗り軽く走った その姿を康太は嬉しそうに見ていた 「伊織も乗るか?」 康太は乗れるか?ではなく…乗るか?と尋ねた 榊原は「僕が乗っても良いんですか?」と、尋ねた 康太は笑って 「篠崎、伊織がイオリに乗る日が来るとは…」と呟いた 篠崎は「その方が…伊織さんですか?」と尋ねた 康太は「あぁ榊原伊織だ」と名前を告げた 「伊織さん、あの馬は初めて飛鳥井の名前の入らない馬なんですよ イオリーブラウン! 君の名前の入った君への馬(想い)です。」 篠崎は、榊原に馬の名前を告げた 榊原は、信じられない顔をして康太を見た 一生が馬から降りると、康太は榊原に乗るように指示を出した 鞍のない馬に、榊原は跨がると走り出した 康太は、やはりな…と、微笑んだ 体の軸が榊原は決してズレない立ち姿に、乗馬の経験を感じ取っていた それもかなりの腕前。 軽く流して康太の前で降りる 「綺麗な乗馬だった この馬は来月パドックに入る イオリに次に乗れるのは…引退してからだ…それまでコースを走り続ける 間に合って良かった…」 康太は嬉しそうに笑った 伊織に逢わせたかったのだ…康太は。 夜、食事を取っていると玲香から電話が入った 電話を取ると玲香は、電話口でかなり興奮していた 「お前…京香が何時出産するのか知っていたのか?」と、捲し立てた 「母ちゃん…オレは超能力者じゃねぇからよ そんな詳しい事まで解らんもんよー」 康太が愚痴る そこまで見て動いた訳ではないのだ… すると、玲香は 「京香は、妊娠6ヶ月… 今…8月だから…年内か新年早々に産まれるではないか! 今からリフォームしても間に合うか… 嫌…間に合わせねば…飛鳥井のリフォームに入るしかない!」と告げた 「オレは一生達の寝れる場があれば、何処でも良い 友達はダメだと言うなら考えるしかねぇ」 康太は、やはり一生達を側に置いておきたいのだ 一生や四宮や一条寝れる場を潰されると困る 康太がそう言うと 玲香は「お前の友を邪険に出来る筈などないわ! 側で生活すれば、どの子も可愛い 心配するでない! お前ら夫婦の部屋と一生達の泊まれる部屋も設計図に入っておる。 京香は、家を出た時…3ヶ月に入っていた… そして離婚して3ヶ月経った今…6ヶ月と、言う結果が出たわ… まさか…そんな身重であったとは…」 「母ちゃん…後4ヶ月しかねぇぞ? 別にオレは側に住んでも…構わねぇーけど じぃちゃんか引かねぇかんな」 「間に合わせるしかない…絶対に間に合わせる。だから心配するでない。」 玲香は、間に合わせるから!の一点張りで 康太は母に総てを任すと、言った 玲香も…やはり康太には甘いのだ… 電話を切ると、康太は電話の内容を話した 一生は、絶句した… そんな身重であのドレスに身を包んでいたと言うのか… 四宮は、母親は強い…と、少しだけマザコン心を刺激された 榊原は…女は抱けない 後にも先にも康太に似ている人間しか抱けないのだから… 康太に着いてないパーツは対象外なのだ… その晩…一条が現れる事はなかった… ぎりぎりまで部屋には入らず…一条を待つ 朝宮は、飛鳥井の家族専用の部屋を用意した 各々部屋が6つ 広い応接間に沿うように部屋があった 飛鳥井の者が使わない時は、客に貸す 多世代で家族旅行で来る客には重宝される部屋だった ソファーに寝そべり…康太はスマホとタブトを探る 一生と、四宮はPCを探る 「康太…どう探っても…隼人の情報は出ねぇ 」と一生は、疲れて康太に報告した 四宮も…収集出来ずにいた 噂も情報も…何も掴めない まるで…一条隼人が存在しないかのように… ならば…小鳥遊に電話すると…言った 一生は、それでお前の気が済むなら…と、了承した 一生の情報収集の腕を駆使しても…一条の居場所は探し出せなかった 康太は小鳥遊に電話を入れた 鳴らしっぱなしで…やっと小鳥遊が電話に出た 「飛鳥井康太です。小鳥遊さんですか?」 康太が問うと…小鳥遊は 「隼人君の事ですか?」と、聞いて来た 「白馬に行く予定でしたよね? その為に休みを取りましたよね? なのに何故隼人は現れない? 何かあったら…教えて下さい! 隠さず教えて下さい オレには知る権利がある」 康太が…そう言うと…小鳥遊は押し黙った 「小鳥遊さん…隼人に何か有ったら…教えて下さい オレは知る権利がある! 隼人を育てのはオレだ!」 康太がそう言うと…小鳥遊は、やっと重い口を開いた 「隼人さんは…初めて白馬に行けるのが嬉しくて、浮かれていたんですよ… 駐車場まで、待ってなさい…と、言ったの走って行ってしまい… 一人になってしまったんです… 一条隼人を良く思わない俳優の思うツボになってしまい… 殴る蹴るの暴行に加え…強姦未遂も…あり…隼人さんのショックが凄くて…入院しています… 康太さんに知らせるつもりでしたが… 隼人さんの…ショックが酷くて…声も出ない…震えて…触れないので…移動も出来ません… なので連絡は遅れてしまいました‥‥」 小鳥遊の語る総てに康太は……言葉を失った 「小鳥遊さん、オレ隼人の所へ行きます オレの足を手配して下さい!」 小鳥遊は解りました…と、言い…電話を切った 康太は電話を切ると…皆に隼人の事を話した 「康太…お前は隼人の親だ お前の愛で…隼人を守れ そして旦那は康太を支えろ 俺等は…隼人に逢える日を此処で待つ」 一生は、決断していた 一条には……康太しかいない… ならば康太が、隼人を守らねばならない 「隼人のカタは、俺等も取る! 隼人は俺達の仲間だ! 仲間の仇は必ず討つ 康太が、愛して育てている宝ならば尚更 俺は、絶対に許さねぇ! だからお前は隼人を此処まで連れてこい!」 一生は、宣言した 小鳥遊から、今から走ってくれる車を手配しました その車に乗って…来て下さい ……と、連絡が入った ホテルの前で待つと、真っ赤なフェラーリが停まった 榊原と康太は、フェラーリの後部座席に乗ると…物凄い速度で車は走り出した 夜中に近い時間だけあって…道路は空いていた 運転手は「走るから身を低くして寝てろ」 と、言ったきり無言で走り続けた 康太を膝に寝かせ、榊原は、康太を守る 来た時の倍の速さで…フェラーリは走る 都内に入って…やっとフェラーリは速度を落とした 暫く走って…停まったのは…都内で一番大きな大学病院だった 康太と榊原は、フェラーリの男に連れられ…中へ入って行く 関係者以外立ち入り禁止の扉を開け、その中に入った 少し歩くと…特別室の扉があり 「入れ!」と言われた ドアを開けて入ると…部屋は薄暗く… ベッドには…毛布を被って蹲る塊があった 康太は…「隼人…」と名前を呼んだ 毛布の塊が…ピクンと動いた 康太は毛布の塊を抱き締めた 「隼人…オレだ!迎えに来たぞ」 毛布を少しだけ捲ると…震えた一条が脅えた目をして康太を見ていた 「オレも怖い…?触られたくない…?」 康太が聞くと…一条は首をふった 「隼人…顔を見せろ!」 震えが止まらない一条の顔を持ち上げる 顔と言わず…体にも殴られた鬱血があった 康太は優しく一条を撫でた 「お前のカタは取ってやる お前をこんなにした奴は… 地獄に叩き落としてやる だがら…お前は…もう怖がらなくて良い」 康太は一条の顔の傷を舐めた 野生の動物が傷を癒す為に舐めるみたいに 康太は一条の傷を舐めてやった 「お前はオレの子供だろ? 伊織とオレの子供だろ? お前の為に来たぞ!伊織もいる お前を思って一生も聡一郎も祈ってる」 一条は、康太に抱き着いた その体を反対側から…榊原が抱き締める 「何をされた…? オレと伊織が消毒してやんよ お前の傷はオレと伊織が治してやる」 榊原も傷付いた一条の傷を舐めた それで一条が少しでも癒えるなら… 榊原は一条の頭を撫でた 「こ…こぉ…た…ぁ…」 一条の助けを求める声を… 康太は聞いた 榊原も一条の声を聞いた 二人は…怒りで震えた 「何された?言ってみろ隼人…」 一条は……泣き出した 今まで…涙も出なかったのだろう… 涙を拭いて…キスを落とす 康太と…榊原の想いを込めて… 震える一条を抱き締めキスをする 気長に…焦らず…一条の心を癒す 「隼人…目を開けろ…お前の目に写るのは…誰だ?言ってみろ」 康太が、初めて一条に言った言葉を…送る 一条は、目を開けて…康太を見る そして……「飛鳥井…康太…が写ってる」と、答えた その次に榊原の方を見て「榊原…伊織も写ってる」と、続けた 康太は微笑み…一条を抱き締めた 榊原は静かに喜び…康太ごと一条を抱き締めた 康太は一条の唇の傷を舐めた 「後ろ…入れられた…?」 康太は…一条に敢えて聞いた 一条は首をふった 「ズボンを脱がされたから…小鳥遊は…レイプされたと…思ってる…」 「ズボン脱がされて何された?」 「写真を撮られる…所だった…小鳥遊が来たから…逃げられた」 「何が怖くて…隼人は震えてるの…」 「殴られた…意識が遠くなる位… 蹴られて…痛くて…怖かったのだ… そしたら…怖くて…震えが止まらない… オレ様は…終わらないリンチに… 死ぬかと思った… 死ぬなら…もう一度…康太に逢いたと想った… 康太に逢えないから……怖くて… …死にそうになったのだ…」 「白馬に行こう! 一生も聡一郎も待ってる お前に馬の乗り方を教えてやる」 1つ言うごとに…1つ舐めた 榊原は、一条の服を脱がした 体には…全身…鬱血の痕が痛々しかった 榊原は、その痕を撫でた 「隼人…僕もお前のカタは取りましょう 許せない…康太の宝を壊す奴を…僕は絶対に許しません!」 榊原は、宣言した 静かに怒る榊原は…かなり怖かった… 「伊織…痛かったのだ…」 榊原は、一条を抱き締めた 康太は決意の想いを一条の耳元で囁く 「隼人…負けるな… こんな事で…負けるな… お前のカタは取ってやる だから…お前は光っていろ 何処も穢れてなんかいねぇ お前は昔も今も…オレの宝だ」 「康太…オレ様は…怖い… また…誰かに…と…考えるだけで…怖い」 一条の傷は…体より…心の方が深かった… 康太と榊原は…一条を抱き締めるしか… 術はなかった… 一条が康太に抱き着き眠りに落ちると… 康太はベッドに寝かせた 「隼人のカタは…オレが取る…」 康太は悔しそうに榊原を見た 榊原は頷き…解ってます…と答えた 「オレは行く…止められても…行く」 「止めません! 隼人は僕が見てます…君は小鳥遊さんに逢いに行きたいんでしょ?」 康太は頷いた 何処の誰が…一条に暴行を働いたか…聞かねば…ならない 康太は…榊原に一条を頼んだ 「君の想いのままに…。 隼人は僕が守ります」 榊原に背中を押され 病室の外に出ると、フェラーリの男が待っていた 「小鳥遊に逢いに行くんだろ? 来いよ。連れて行ってやる」 康太は、その男に着いて行った フェラーリは意思を持って走る… 康太は街並みを見ていた… ふと繁華街で…見慣れた男の姿を見付け… 康太は車を止めてくれ…と頼んだ 車のドアを開けたまま…降りて…見ていると ……相手も康太のキツい視線に気が付いた… 康太に良く似た…連れが…足を止めて服を引っ張る 康太は…キツい視線で射抜いた… そして不敵に嗤う… 視線の先の人間は…そんな康太の姿に…動きを止めていた 確める為に…道路を渡って駆け寄ろうとした… 次の瞬間…康太は片手を上げ…フェラーリに乗り込んだ 瑛太の目の前を…走り去る… 見知らぬフェラーリに乗って…康太が走る… 瑛太は見間違えかと思ったが… 自分が康太を見間違える筈はないと言う自信があった… 去り際に…片手を上げる仕草は…康太しかいない… ならば…何故お前は此処にいる… 白馬にいる筈の…お前が…どうして此処に… 瑛太は…目の前の相手が…全然違った生き物に見えて仕方がなかった… 相手に謝り…自宅へ急ぐ…その途中で康太の携帯に電話を入れた… 電波は届かない場所だった… 康太は…家に帰っているかも… その想いだけで…瑛太は自宅へ急いだ 康太は、一生にメールを送った その後に…携帯の電源を切った 用が済むまで…誰にも邪魔をされたくないから… フェラーリは一条の事務所の前で停まると… 男は車から降りるように促した ずんずん歩いていく男の後を追うと、事務所の中に小鳥遊がいた 「社長。康太君を連れてきて下さってありがとうございました 」 康太はこの時…初めて社長なんだ…と気が付いた 「康太君、隼人さんの具合はどうでした?」 「レイプはされてかった…と、言ったけど 精神的なショックが大き過ぎて… 戻るには時間がかかる…」 小鳥遊は驚いた… レイプはされてない…って知っている事は… 一条は喋ったのだ…康太に口をきいたのだ 「隼人さんは…喋ったのですね?」 「最初は震って口も聞かなかった… だが…抱き締めたら…少し口を聞いてくれた 隼人は…白馬へ連れて行く…そこで癒す そして…隼人をあんな目に合わせた奴は… オレは許さねぇ…資料を用意しろ キッチリとカタは取る 明日…隼人を白馬に連れて行けるように手配してくれ」 小鳥遊は、康太に書類を渡した… その中には…一条に暴行をふるった人間のリストがあった そして白馬へ一条を連れて行く手筈を整えていた その為に小鳥遊は事務所から離れなかったのだ そして…康太なら…事務所に来るだろう… 社長が乗せて来るだろう…と、言う確信が有った だから…社長を白馬に向けて走らせていたのだ 「康太さん…私共は…隼人さんの仇は討てません… 相手の事務所の力に…うちは… 本気を出されたら…潰されてしまう… 社長が康太さんを事務所に乗せて来た… と、言う事は…社長は康太さんを認めたんです 気難しい社長に気に入られたんです」 康太は唇を吊り上げた その不敵な面構えが…社長の神野晟雅に気に入られたのだ 「社長だか会長だか…オレには関係ねぇ! オレは飛鳥井でしか生きて行けない人間  単刀直入に言う! オレは隼人のカタは取る どこの事務所の奴とかは関係ねぇんだよ オレの道を邪魔するならば…薙ぎ倒す やられたら…倍返しで返す!…それがオレが教わった総てな様に、それしかねぇんだよ」 康太がそう言うと…神野は大爆笑した 「流石…瑛太んちの4男坊だな 飛鳥井源右衛門を継ぐ者に…お願いがあります どうか一条隼人をお願い致します」 神野晟雅は、康太に深々と頭を下げた 「瑛兄の学友か…。 どうりで車を止めてくれ…と、お願いしたら、瑛兄の真ん前だった訳だ お願がいされるまでもなく、オレは命を懸けて…隼人を守る!そしてカタは取る!」 神野は、康太の顔をまじまじと見た 「隼人は何時連れて行っても良い… 動かす時は…一声かけくれ…」 神野は、名刺を取り出すと…渡した 裏にはプライベートの携帯の、番号が書いてあっあ… 「康太…瑛太を許してやれ… お前の見てたのは…兄だろ?」 康太は嗤う 「許すも何も…兄の勝手! オレの伴侶なら殺すが…兄では部が悪い」 康太が言うと神野は笑った 「小鳥遊に病院まで送らさせる」 「オレは隼人が回復するまで白馬から離れない 明日、母の元へそれを告げに行く」 「宜しくお願い致します」 神野は、礼をした 小鳥遊に病院に送ってもらうと、榊原から 「瑛太さんから電話が鳴りまくりです…」 と、告げられた 康太は「 電話に出た?」と聞いた 榊原は……首をふった 「康太は隼人の側を離れない ならば…今、瑛太さんが…迎えに来るのは不本意…ですから出てません」 康太最優先の榊原の気持ちが…嬉しかった 「瑛兄は、白馬に電話を入れる! そしたら…オレが東京にいるのを知るさ その様に一生にメールを入れといた…」 榊原は、何も言わなかった 「伊織…オレは明日、母に逢いに行く オレは隼人が回復するまで白馬から離れない それを伝えに行ってくる 伊織は、隼人に着いててくれるか… 了承もらったら、ホテルから別荘の方へ移る そこで隼人を治してやるつもりだ 母の了承なくして…無理だかんな 明日行ってくるもんよー」 榊原は、「解りました!隼人には僕が着いているので…君は君の用を済ませて下さい」 と、理解を示してくれた 康太は、一条のベットに上がり抱き締めた 榊原は、康太の反対側のベットに上がり一条を抱き締めた 小鳥遊は、ソファーに座りその様子を見守っていた 康太は、母親の出勤時間に合わせて飛鳥井建設に向かった 飛鳥井建設の自動ドアを中に入ると、受付嬢に「母ちゃんいる?」と問い掛けた 受付嬢は「たった今、出勤されました」と康太に頭を下げた 「じゃあ向かうわ! 瑛兄には知らせてOKだからな♪」 と、告げ片手を上げてエレベーターに乗った 母親の広報室のドアをノックすると…飛鳥井玲香が出て…康太の姿に驚いていた 「康太!お主は今、白馬じゃないのか?」 と、言う玲香に康太は一条の身に起こった総てを話した 玲香は絶句した 「オレは隼人が回復するまで白馬から離れねぇ 白馬のじぃちゃんの別荘に連れてって…そこで隼人の傷を癒してやりてぇんだ…」 康太は辛そうに…語った 玲香は…思わず目頭を押さえた 何時もニコニコと、モデルなのに康太の前では子供みたいな顔をした… 一条しか思い浮かばなかった… 「隼人は…飛鳥井を上げて…守る お前の宝は…飛鳥井の宝… 好きなだけ…隼人の側におればよい 飛鳥井の手が要るなら…言いなさい!」 康太は母親に抱き着いた 「隼人は…母親に抱き締められた事もねぇんだ… そんな辛い子供時代を送った隼人を…オレは幸せにしてやりたかったんだ…」 悔しそうに言う康太を玲香は抱き締めた 「隼人は…お主の愛で…守ってやるのじゃ お主の大切な宝を傷付けた輩を我も許しはせぬ 康太、キッチリとカタを取って参れ!」 康太は頷いた 「母ちゃん…昨日…東京で瑛兄を見たよ… 高校時代の…恋人と歩いてた… 淋しかったのかな…瑛兄…?」 心配げに呟く康太に 「紛い物はやはり紛い物にしかなりはせぬ! 捨てておくとよい!」 …と、玲香は言い放った 「母ちゃんは…知ってたんだ…」 「お前の為に…瑛太は生きる決意をした それでよいではないか 兄として最高の男だろ…? お前の為に生きている兄だ。 それ以上でも…それ以下でもない。 他の部分は見てはやるな…目を閉じておれ…」 康太は笑った 「母ちゃん、京香の事頼むな」 「あぁ。心配せんでも京香には我がついておる。 お前は隼人に着いておれ!」 康太は頷き、玲香から離れた 「じゃあ白馬に帰るもんよー」 玲香は「気を付けて行くがよい」と送り出した 母親の広報室を出ると、瑛太はドアの前で待っていた 「兄の所へは寄らずに帰る気か?」 瑛太が康太に問う 瑛太の伸ばす手を…康太は避けた 瑛太は傷付いた瞳を…康太に向けた 「瑛兄…広報室は、出入りが激しい部署だ 此処で抱き上げて持ち帰る気だったろ? こんな人の多い場所で…それは恥ずかしいかんな!」 康太が瑛太を見上げる 瑛太は康太に抱き着いた 唯…何も言わず…抱き締めていた 「瑛兄…母ちゃんが今ドアを開けたら怒り出す事間違いねぇぞ!」 と、康太が瑛太に言うと、瑛太は康太を抱き上げた 抱き上げて…副社長室のドアを開けて入った 部屋に入ると…瑛太は康太を下ろした 「やはり…昨夜見たのは…康太だったんだな 軽蔑されてしまったのかと…悲しくなった」 瑛太は康太から離れない… 「高校時代の恋人と……ヨリを戻す程…オレが恋しかったのか? ならばオレを抱くか…? 紛い物は…所詮本物にはなれないって… 知ってても…オレが欲しかったのか? ならば…オレを兄にくれてやる」 康太は服を脱ぎ出した… 露になった素肌は…康太にしかない本物だった 上半身を脱ぐとズボンに手をかけた… 瑛太は…その手を止めた 「康太……止めてくれ…」 その声は…絞り出された…瑛太の想いだった 康太に服を着せ…釦をかった 「私はお前の兄として生きる決意をした 飛鳥井の総てで…お前を背負う決意をした お前の兄で…いさせてくれ… お前の兄としてお前を愛させてくれ 頼む…」 瑛太の腕が震えていた… 「オレの兄は飛鳥井瑛太! 兄はオレの誇りであり…総てだ オレは瑛兄が好きだ… 多分…伊織に、出逢う前に…手を出してれば…オレは瑛兄のモノになった オレは一度所有者を決めたら…他は見ない 瑛兄だけのモノになれたのに…」 瑛太は、首をふった 「私はお前の兄で良い… お前が笑って生きていてくれるだけで… 私は生きていける…」 邪な感情を…総て胸に押し込み… 想いを断ち切った 兄として生きる決意をした 康太の為に生きる決意をした… その自分が崩れ去る…事だけは出来なかった… 「ならば、離せ! オレには時間がねぇんだよ 動かなきゃなんねぇんだよ。離せ」 康太は瑛太の巻き付けてある手を離させた 「康太…兄には何も話してはくれない気か?」 「そうじゃねぇ…隼人に着いててやりてぇんだよ。」 ……と、康太は一条の事を話した だから、急いで病院へ帰りたいのだと…言った 「ならば、兄が送っていこう」 「瑛兄…今…凄く忙しいんだよな…?」 「お前は気にしなくて良い その前に…聞きたい事もある」 瑛太は、康太を抱き締めたままソファーに座った 膝の上に康太を座らせ… 「昨夜の…フェラーリは、誰だったんですか? 変な事はされませんでしたか? 伊織君はどうしたんですか?」 と。質問攻めにする 康太はポケットから名刺を取り出すと、瑛太の前に差し出した 「昨夜のフェラーリの男」 そう言って見せてくれた名刺は……… 神野晟雅…悪友である 「彼と逢ったの? 昨日のフェラーリの運転席にいたの? どう言う経緯で…こんな男と…」 こんな男と…って友人でっしゃろ… 「隼人の所属事務所の…社長」 瑛太は……えっ…と驚いていた 「白馬に動かす前に、連絡を入れる そしたら、隼人を白馬に連れて行く… 多分…当分…戻らねぇ 伊織は、隼人に着いててくれる だから母ちゃんの了承を取ったら、一日も早く白馬に連れて行きてぇんだ」 康太はプンプンと怒っていた

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