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第69話 覇道
宴会さながらに盛り上がった榊原の快気祝い…の翌日
康太は…夜が明ける前に起き上がり…
覇道を詠んでいた…
窓を全開に開け…外の空気を取り入れる…
熱気の抜けきらない暑さの中…
康太は天に手を伸ばし…何かを探っていた
「何故だ…何故掴めない…」
康太は…呟き…断ち切るかの様に…
窓を閉め…クーラーをつけた
そして榊原の寝ているベットに潜り込む
康太の体に巻き付く腕に…康太は榊原にキスをした
「起こした…?」
「君がいないベットで眠れない…何してたの?」
「覇道を詠んでいた…」
「覇道…?」
「あぁ、覇道だ
それぞれ生きているモノには覇道がある
例えば…オレは伊織なら何処にいるか…探知機はいらねぇかんな
伊織の覇道を詠めば…伊織の居場所は解る…」
「……誰の覇道を探っていたか…聞いても構いませんか?
ダメなら答えなくて良いです…」
「琴音…、琴音の覇道が掴めない…
琴音は…瑛兄の長女だ
京香に逢いに行った時に…琴音がいなかった…だから…探った…」
「掴めない時ってあるの?」
康太は首をふった
「生きて生体反応が有れば…覇道は詠める…
だが…生きていなければ…覇道は詠めない…
オレは果てを見る
星を詠み勝機を呼び込む…
それと同じで…覇道も詠める…
接触のあったモノや…家族ならば…離れていても覇道は詠める…」
「じゃあ…琴音ちゃんは…」
「明日…母に確かめる…伊織も行くか?
一応…出社する訳だから…スーツ着なきゃ行けねぇから面倒だけどな…」
「行っても良い時は、君と一緒に動きます」
康太は嬉しそうに笑って…榊原の首に腕を回した
「もう少し…微睡みましょう
君と…時間が許す限り…微睡み過ごしましょう…」
榊原の、香りが眠りを誘う…
康太は榊原の温もりに…守られ眠りに落ちた
朝、キッチンに行くと、一生は牧場に帰った…と悠太が教えてくれた
四宮は、一生と共に牧場に行き
一条は、仕事が出来なかった日々があったから…毎日が忙しそうだった
力哉が送って行ったので、会社に行くなら待ってて下さい…との事だった
食事を済ませた榊原は、自室に戻り洗濯物をランドリーバスケットごと取りに行き
キッチン横にある洗濯室に入り、ドラム式洗濯機に洗濯物を押し込んだ
乾燥機まで設定して…洗濯機の前にランドリーバスケットを置く
飛鳥井は各部屋にランドリーバスケットがあり、洗濯物は各自そのランドリーバスケットの中に入れ、各々洗濯をする
仕事で洗濯まで手が回らぬ玲香の苦肉の策だった
乾燥まで終わってると、次に使う人間がランドリーバスケットに入れておいてやるか
時間を見計らって取りに行くか…だった
榊原は朝のうちに洗濯を終らせ、会社に行く支度をした
榊原は、もうすっかり飛鳥井の家に慣れてきて、康太より洗濯機の扱いは上手かった
自分流に設定して…ふんわり仕上がり感を楽しんでいたりした
康太も…スーツに着替え…飛鳥井建設に行く支度をする
後は力哉が、帰ってくれば…行けるばかりにして、応接間で待つ
その間も榊原は、部屋にフローリングワイパーをかけたりしていた
綺麗好きな榊原は甲斐甲斐しく洗濯や掃除に精を出す
康太は…応接間のルンバで遊んでいた
「康太…ルンバが壊れますよ…」
「伊織…オレの部屋にもルンバはあるし…
洗濯物は洗濯機に入れとけば良いから…手ぇ抜けよ…伊織…」
「寮生活が長かったから…仕方ないですね…」
「なぁ…伊織は寮に入って…今まで同室者はいなかったんか?」
「同室者…いませんでした…
中等部の頃も…同室者になっても…出て行ってしまうんですよ…。」
「手ぇ出したからか?」
「同室者には手は出しませんよ…
手を出したら…切れた時…困るじゃないですか…」
「………」
なら…鬼だから…逃げたんでしょう…
とは……言えない…かも
「伊織は…モテたからな…」
康太が悲しげに…言う
榊原は、康太を膝の上に乗せ…抱き締めた
「今は君だけのモノです 」
榊原は、康太の頬にキスを落とした
康太は、自分を抱く榊原の腕のROLEXに接吻した
応接間のドアが開くと、力哉が帰って来た事を知らせた
「力哉、飯食ったか?」
力哉は、未だです…と答えると
「飯食って来いよ!」
康太は榊原の膝から降りると立ち上がり
キッチンへと力哉を促した
力哉の隣の椅子に康太も座る
榊原は、力哉に朝食の準備をしてやり康太に冷たいお茶を置いた
「力哉、少し肉が着いてきたな。」
康太が力哉の姿を愛しげに見詰める
「食事の時に康太がいるから…食べたフリは出来ない…」
康太は笑った
「もっと色艶良くなれ
お前はホワイトホース並みの肢体を秘めた馬に化けれる」
「僕はまだ化けますか?
もう僕の姿を見ても戸浪海里を想像する人はいなくなりました」
「お前は、もっと化けれる
だから、もっと色艶良くなれ」
力哉は笑った
康太が言うのであれば…自分はホワイトホース並みの肢体を秘めた馬に化けるのだろうから…
「ご馳走さま。」
力哉は、食器を食洗機に入れスイッチを押すと、康太へ向き直った
「さぁ参りましょうか?
伊織も一緒と言う事は、飛鳥井玲香さん辺りに行かれるのでしょうか?
ならば直行なさい。
僕は部屋で仕事をしますから…」
勘の良い力哉にはお見通しなのだろう…
「力哉…お前も来い…」
康太の言葉に、力哉は静かに頷いた
飛鳥井建設の地下の役員専用の駐車場に車を停めると、康太は車を下りた
そしてエレベーターに乗り、最上階の役員室のある階のボタンを力哉が押した
エレベーターを下りると康太はスタスタ歩き、飛鳥井玲香のいる部屋のドアをノックした
ドアを開けた玲香は…驚いた
朝は、一緒に食事をした康太がドアの前に立っていたから…
家でなく…会社を選んだのなら…
それなりの話があり…
そしてそれは飛鳥井の真贋としての責務で来ている事を察知していた
「中へ入られよ…」
玲香は全員を部屋へ通した
康太はソファーに座ると…足を組んだ
「母ちゃんは、琴音の所在を知っているか?」
康太は単刀直入に聞いた
玲香は…康太に聞かれ…ハッと驚いた
京香を動かした時に居なければならない存在を…何故忘れていた?
「琴音の覇道が詠めない」
康太の言葉に…玲香は唖然となった…
「ならば…弔ってやらねばなりませぬな」
玲香は康太に頭を下げた
「オレが幼き魂を捉え…再生の起動に乗せる
飛鳥井の家を出た子を飛鳥井の墓前には入れなれない…
それが掟だから…
琴音は観音像の中へ入れる…それで良いな…母ちゃん」
「康太自ら…やると言うのか…」
玲香は…飛鳥井の厳しい掟を知っていた
飛鳥井の家から出た…者は…飛鳥井へは戻れぬ
それを…真贋の康太は…二度破ろうと…言うのか…
「琴音の魂は…飛鳥井康太の元に還す…」
「瑛太の子だからか…?
だから…言い継がれて来た慣例を破るのか…」
玲香には…康太の想いが逸脱している風にしか見えなかった
康太は首をふる
「オレは瑛兄の子でも…切り捨てる事は容易い
あの、魂は救っておく必要があんだよ
あの魂は一条隼人の子としてオレの所へ還って来る…
終焉を迎えぬ為の…礎だ
オレは飛鳥井に不要と判断したら切る…
例え…それが瑛兄で有ろうとも…違える事は出来ないのだ…
それが真贋としてのオレの務め
見える果てを誤魔化せば…未来など無いのだ」
玲香はやっと…気が付いた…
緑川一生の子供は、源右衛門の絆を含め…戸浪との強固な絆を築く礎になる
京香の子供は…真贋の子供と…瑛太の分身
京香は、真壁の姓を捨てた…今は…母親の姓を名乗らせているのが…これで解った
京香の存在は一度リセットして…再び瑛太に与えるのだ…分身を産む為に…
琴音の魂は輪廻の道にいれ…一条隼人の子として生まれて来るのだ…
だから、オレの子供は全部で四人…
って事は…榊原真矢は確実に妊娠するのだろう…
もう康太の目には…見えているのかも知れない…
榊原伊織の血を引く子供…
康太は飛鳥井建設のビルを建てる時に…
『双頭の龍が昇る会社を建てる…』と、言った
生まれた親は違えど…酷似した器が二つ
産まれるので有ろう…
此処に来て……やっと飛鳥井玲香は、康太の
…嫌…飛鳥井家真贋の意図を詠んだ
飛鳥井源右衛門は言った…
『我の力より強い希少の真贋。』と……
ならば飛鳥井康太は…飛鳥井終焉を阻止する為に産まれた…真贋
だから…康太の…子は残せないのかも…知れない
玲香はそう想い…康太の定めの重さを痛感した
「ならば、京香の所へ行くぞ…」
玲香が、言うと、康太は…
「葬儀を二つ…出すには良い頃合いかも知れない…行こう…母ちゃん」
玲香は、康太を凝視する…
「まさか…京香の父が……?」
玲香の言葉に康太は頷いた…
「少し早いが…逝った…
最期は安らかに逝った…魂が…清らかだからな…
京香の父の魂が昨夜飛んで来た
孫の琴音の魂を救ってくれ…と。
自分の寿命を縮め…頼みに来た…
オレはそれを受け琴音の覇道を探った…
だが…落ちた魂の覇道は…拾えなかった…
救わねば…ならねぇんだよ母ちゃん」
玲香は立ち上がり…「ならば行かねばならぬな…。力哉、運転頼めるか?」と、力哉に声をかけた
力哉は、はい。と、答え…立ち上がった
部屋を出て…エレベーターを待っていると、瑛太が康太の腕を掴んだ
「康太…何処へ行くんだ?」
瑛太が…康太に聞く
康太の唇が…瑛兄…と動く
「瑛太、康太を離すがよい
康太には真贋としての、仕事があるのじゃ!
邪魔をしてはならぬ!」
飛鳥井玲香のキツい一撃が出ると、瑛太は康太を離した
「瑛兄、帰ったら部屋に行くから。待ってて」
と、康太は瑛太の手を握り…エレベーターに乗り込んだ…
扉が閉まる瞬間…康太は瑛太の手を離した
力哉の運転する車の助手席に玲香は座り
後部座席には康太と榊原が座った
重なる手を絡め…二人は手を繋いだ
「飛鳥井玲香…に、問う。
琴音の葬儀を…瑛兄に教えるのか?」
康太は…その判断だけは…つかなかった
「それを知らせると…京香は静かに子が産めぬ…
恨まれても…事後報告しかあるまい…
総ては飛鳥井の為…家の為…瑛太には堪えてもらおうぞ」
康太は…そうか…と言い目を閉じた
康太が予め京香の居所を力哉が運転するナビに送っておいたから…
力哉は、案内されるままに運転すれば良かった…
静岡の海が見渡せる高台に、京香と京香の父が入院している病院があった
康太は…一度も来てないのに…さっさと歩いて行く
まるで京香の居所を知っているかのように…
病院の最上階の個室に向かうと、軽くノックをしてドアを開け…中へ入っていった
病室の中には…京香の父親が白い布を掛けられ横たわっていた
京香は悲しみ…泣いていた
その横で医者らしき男が京香の肩を抱き…
慰めていた…
「そんな汚い手で京香に触んな!」
康太は医者らしき男から、京香を庇うように立つと…出て行け! と、言葉を放った
医者らしき男は、突然入って来た康太に不快感の念を抱いた
「京香さん、君の知り合いかい?このチビは?」
康太を威嚇しようと…男は康太を睨んだ
「この病室は飛鳥井の借りてる病室!
勝手に入って女を口説く医者など要らぬ
力哉院長を呼べ!
伊織、そこからソイツを出すな」
榊原が逃げようとする男を押さえて取り押さえた
下手に暴れられたら…京香の子供が危なくなるからだ。
力哉は、ナースステーションへ走り
院長を呼べと!迫った…
余りの迫力に…院長は慌ててやって来た
院長の姿を見ると康太は言い放った
「院長、飛鳥井が預けた人間を、貶めた罪は重い…
それなりの覚悟はしてもらわないとな…。」
康太の瞳が院長を射抜く
「その男は看護婦にも手を付け…患者でも気に入れば口説く
お前の娘は男を見る目がないな…」
院長は…男を娘の婿とは公表していなかった…
なのに的確に…言葉を吐く康太に…院長は頭を下げた
「申し訳ございません…院長の娘婿と言う立場を利用して…この様な振る舞いは断固として許せません。お許しを…」
康太はふん…と鼻を鳴らした
「母よ…京香を動かせ
京香の父が逝去した今、此処に置く必要などないわ」
康太は京香の側に行き…抱き締めた
「母ちゃん、葬儀家の手筈を
力哉、入院代を清算して来い
伊織、ソイツを離せ」
榊原は、院長の婿養子を離し…その前に立った
「飛鳥井の真贋は、世代交代をした
オレはこの病室の未来など見る気はねぇんだよ
こんな婿養子を切れない愚かな人間など見るに値はしない…」
康太は言い放った
「そっ…それだけは…」
「源右衛門は引退した!
オレは見るつもりはない。それだけだ…」
「葬儀の用意を致します…入院代も…要りません…ですから…お願い申し上げます」
「そんな微々たる金など要求せねばならねぇ程、飛鳥井は落ちぶれてはいねぇんだよ」
飛鳥井玲香は、院長の前に立ち…「と、言う事だ…院長…」と、引導を渡した
「京香…何もされてねぇよな…」
康太は聞いた
京香は、康太を抱き締め…されてはおらぬ…と、答えた
京香は、悲しんでいたのだ…父親の死を…
「玲香、聞きたいこともある
葬儀屋が来たら場所を移す
母ちゃんホテルかマンションを用意しろ」
「ならば…横浜に移す…知り合いの病院に明日預ける…今日は横浜のホテルに私も泊まり明日頼みに行くとしょうぞ…」
玲香は段取りを付けるように話す
「オレは一旦会社に顔を出す…顔を出すまで…待ち続けるに決まってるからな…
伊織は力哉と帰れ」
榊原は頷いた
暫くすると葬儀屋がお辞儀をして病室にやって来た
玲香は段取りを話し、横浜の葬儀場を告げた
親族も居ないので密葬で弔う…つもりだった
「ならば…行くとするか…」
飛鳥井玲香は皆を促した
力哉の運転する車に、京香は康太と一緒に乗り込んだ…
だが……かなりお腹が競りだしていて、康太は前に乗るか…と、聞いた
京香は首をふり…康太に抱き着いた
肩を震わせて泣く…京香の背中を…康太は擦り続けた…
車が横浜に入ると、康太は
「ニューグランドに行け力哉 」
と、指示を出した
ホテルニューグランドの正面玄関に止まると、係員に車のキーを渡し、車を下りた
飛鳥井玲香は、ホテルに入り…部屋を取った
総支配人は、飛鳥井…と、名前を聞き付けると…やはり出て来た
「康太様、お久し振りで御座います」
総支配人は深々とお辞儀をした
「今日は嵐は纏ってはいないぞ…」
と、康太は穏やかな笑みを浮かべた
「貴方がお見栄になると一報が来るのです
そしたらお顔を伺いたくなって…出て来るのです…お許しを」
総支配人は茶目っ気たっぷりに笑った
ベルボーイが総支配人の側に来ると…総支配人は
「お部屋の御用意が出来ました。
私自らご案内致します。どうぞ。」
と、皆の前に立つと…姿勢良く歩き出した
ホテルに尽くして…半世紀…の背中が康太に語りかけてきた
「総支配人は、来年定年か…。
淋しくなるな…此処に来て貴方を見れなくなるのが…」
総支配人は背中を向けたまま「ありがとうございます」と、賛辞を受け止めた
「このお部屋で御座います。
後で…私より…心ばかりの差し入れを入れますのでお待ちください。ごゆるりと御過ごしください」
部屋に着き、ドアを開けると、康太に鍵を渡し…静かにドアを閉めた
康太はスーツの上着を脱ぐと、ソファーの背凭れにかけた
そしてソファーに座り足を組んだ
「京香、昨夜お前の親父が魂を飛ばして来た。
だからオレはこのタイミングでお前の所へ行った。」
京香は、……父が…康太の所へ…と、呟いた
「京香、琴音は何処にいる…」
京香は、康太を…見上げた…
その瞳から…涙を溢れさせ…康太を見ていた
「琴音は…死にました…。
家を出て直ぐでした…母が徘徊でいなくなって…探している時に…
………目を離した隙に…車に…」
一歳半の琴音はヨチヨチ歩いて…
目を離した隙に…車に…跳ねられました…
と、京香は涙ながらに…話をした
「琴音の遺骨は?」
康太が聞くと…京香は立ち上がり…荷物を探り…
荷物の中から小さな骨壷を…取り出した
「離れていたくなくて…持ち歩いてました…」
康太は…京香から骨壷を受け取った
「見付けた…琴音…
もうお前の母は大丈夫だ…
オレと来るが良い……」
康太は…骨壷をの中の琴音に話しかけた
「母ちゃん、この骨壷を預かってくれ。
明日…菩提寺に連れて行く時に…もらい受ける…オレは会社に戻る…。
力哉、伊織を家まで送ってくれ
オレは瑛兄と帰る」
帰ろうとする康太の手を取り榊原は、康太を抱き締めた
「待ってます」
榊原は、康太を抱き締め…頬にキスした
「オレの帰る場所はお前の所しかない…だろ」
榊原は、にこやかに笑い、康太を離した
康太は片手を上げ…部屋を出て行った。
部屋から出て正面玄関に行きタクシーに乗ると、飛鳥井建設に行ってくれ…と、告げた
飛鳥井建設に着くと正面玄関は、シャッターが下りていて、康太は横の守衛室を覗いた
康太を見付けた警備員は
「副社長はまたお部屋にいらっしゃいましたよ」と、教えてくれた
「なら直接行くから、連絡は通さなくて良いよ」と言い、康太はエレベーターに乗った
最上階の副社長のドアをノックすると、待っていたのか直ぐにドアは開いた
「康太…最近…何をしてるんだ?」
瑛太は…ついつい言葉に出てしまった
本当は聞いても答えないのを知っているから…
聞かないでおくつもりだった…
「オレは今、飛鳥井の家の終焉を食い止める為に動いている…」
康太は、飛鳥井の置かれた現状を…口にした
瑛太は…終焉…ならば、飛鳥井は終わるのか?……と、聞いた
「子を成さないオレが産まれたって事が…それを告げている
飛鳥井は最近…子供が産まれない…
男の子が…産まれて来ない
蒼太も子を成さない人間で…飛鳥井はどうなる?
考えた事はあるか?瑛兄」
康太の言葉に…瑛太は…何故蒼太の事を…と、言葉にならない…呟きを発した
「恵太の所は女…瑛兄は離婚…
いても子供は女…それで誰が飛鳥井を継ぐんだ?」
瑛太は言葉を失った
「オレは飛鳥井の再生を司る為に産まれた
オレの邪魔をするなら、兄でも排除する
それがオレの真贋としての努め!」
瑛太は…邪魔なとする筈がない…と、康太から目を離さず答えた
「瑛兄、来年早々…再婚しろ
そして……子を作れ
それが出来ないのであれば…オレは飛鳥井の家を出る。
飛鳥井は終わる…それをこの目で見るのは堪えれねぇかんな…オレは瑛兄の側から逃げる…そしたら殺すか?」
瑛太は康太を抱き締めた
「総ては…お前の想いのままに…。
私はそう言った。
お前が言うなら…総て受け入れる…
……私に…お前を失わさないでくれ……」
康太は瑛太の背中に手を回した
「多分…オレは瑛兄に残酷な事を…言っている……そして残酷な事を…する…。
今は言えない…永遠に言えない…だけど…オレは…」
康太…言わなくて良い…お前が苦しまなくて良い…
瑛太は全身でそう物語り……康太を抱き締めた
「私はお前の荷物を持つ為に総代を継いだ…
お前を命を懸けてサポートする為に私は生きている…
お前のいない世に…生きろと言うとのか?
…それとも……この手でお前の息の根を止めろと言うのか……?
総代としてそうならない道が有るのなら…私はそれを選ぶ……」
「瑛兄…」
体全身で…飛鳥井康太を守る防波堤に……
兄瑛太はなっている
康太を守る為だけの防波堤に………
そこに康太がいないのであれば…
意味を成さない…存在になってしまう…
「瑛兄…ごめん…」
謝る康太を、瑛太は抱き締めた
「康太、帰りにカフェに行こうか?
その帰りに最近出来たヤマダ電機に行こうか?
お前の好きなの何でも買ってやるぞ」
甘い兄の、言葉に康太は嬉しそうに微笑み…
抱き着いた
「なら…直ぐに行くもんよー」
康太の言葉に瑛太は笑い康太を抱き上げ他
子供でも抱くように片手で抱き止めた
地下の駐車場まで行き、行きつけのカフェまで走る
カフェの駐車場に止まると、康太を抱き上げて車から下ろした
まるで…子供の頃…そうしてくれたように…
カフェで…康太の好きなのを沢山食べさせ…
ヤマダ電機で、康太の欲しがる物総てと
ゲームと最新のPCを買わされ…少し財布の痛い瑛太だった
康太は何もねだらないから…たまの散財位は可愛いものだった
帰りの車の中で…康太は瑛太の膝の上で眠った
まるで猫か子犬の様に…丸くなり眠っていた
家に着くと瑛太は車から降り康太を抱き上げた
家の玄関のドアを開けると悠太がいて、瑛太の姿を見ると康太の靴を脱がせた
瑛太は康太の自室に行くと、ドアをノックした
中から榊原が出て来ると、優しく微笑み康太を榊原に渡した
「康太をベットに寝かせたら、駐車場に来て欲しい…
少し甘い兄だがら…康太の欲しいのを買いすぎた…」
瑛太はバツの悪い顔をして笑った
「この次は伊織の欲しいのを買って上げます
この兄に甘えなさい伊織」
榊原は、「はい。」と頷いた
瑛太は嬉しそうに…駐車場にいます。と背を向けた
榊原は康太をベットに寝かせ、軽いキスをした
すると、するっと腕が伸び…榊原の頭を押さえ…舌が差し込まれ…激しい接吻になった…
「起きてたんですか?」
「寝てた…でも伊織の臭いがしたから目が醒めた」
康太は悪戯っ子みたいに舌を出して笑った
「瑛太さんを待たせられないので…君のおねだりの品を取りに行きます」
榊原は立ち上がり、部屋を後にした
駐車場に行くと瑛太はトランクを開け荷物を出していた
かなりの紙袋があり…榊原は青褪めた…
「これ…康太が買わせたのですか?」
榊原が聞くと瑛太は
「もう…私の財布はスッカラカンになる程にね…
甘えられたら…つい…買ってしまうんですよ」
と、恥ずかしそうに答えた
「伊織、半分頼めますか?」
瑛太は榊原に荷物を半分頼んだ
何か手伝おうかと出て来た悠太は…
瑛太と榊原の姿を見て…兄弟…の様な姿に息を飲んだ…
悠太の姿に気が付き…二人同時に振り向いた姿は…酷似して…兄弟だよ…
と言われたら疑う事なく信じてしまえる…
瑛太は「悠太…お前は…康太の許可なく触れないのですが…何か欲しいのがあったら…兄にこっそり言いなさい…
でもバレると康太が怖いし…」
……と、悠太に声をかけた
その台詞に榊原は、えっ…と言う顔をした
それに気が付き瑛太は榊原に教える
「悠太の総ては康太が管理して育ててる
下手に口も手も出せないんですよ…
この先も…悠太は康太の管理下で仕事をする
…私の弟ですが…悠太は異例…母でさえ…
小言は言えぬ…総てが康太の管理下にある子なんですよ…」
悠太は「瑛兄、飯位なら康兄も目を瞑ってくれる…何たって腹に入ったら怒りようもねぇしな…と、言う事で今度たらふく食べさせて…それで手を打って下さい」と、頭を下げた
瑛太は笑って「なら会社に寄ったら何時でも食べさせて上げます」と、悠太の頭を撫でた
「悠太、この荷物を伊織の部屋に運んで下さい。
私はもう寝ます…おやすみ、伊織、悠太。」
瑛太は荷物を悠太に渡すと、トランクを閉めた
持ってる鍵でロックをすると、玄関のドアを開けた
榊原と悠太が入ると鍵を閉め、3階に上がって行く階段を登り始めた
榊原は軽く頭を下げると…自室に足を運んだ
部屋の前に行くと悠太から荷物をもらい
悠太におやすみを言い…凄い荷物を…部屋に運んだ
康太はベットの上で、榊原を見ていた
スーツは既に脱ぎ…トランクス一枚はいた状態で…
「凄い荷物ですね…瑛太さんに買わせたんですか?」
榊原が聞くと康太は
「たまにはお金を使わせないとな…
瑛兄は独身になって使い道がねぇもんよー」
と、何だか訳の解らない事を言って笑っていた
「伊織、中を見てみろ」
榊原は、荷物の中を見ると…
そこには…ベビー用品があった
「瑛兄の子供とは永久に教えはしない
だが…瑛兄の子だ…
瑛兄の想いの籠った品を与えてやりたい…
だから買わせた
まぁオレのゲームと最新のPCも有るがな…」
榊原は、袋の中からゲームを見つけ…
「また…ろっしょーいと騒ぐ気ですか…」
と、溜め息を着いた
寮にいた頃から…康太は良くゲームをする
夢中になりすぎて…榊原が妬く程に…
「伊織の前ではやらんもん…
セーブ前にゲーム消すもんよー
苦しい思いして倒して喜んでたら…ブチッってコンセント抜くかんな…
そんで押し倒して好き勝手されたのは…忘れねぇかんな…」
康太が恨み言を言う
榊原は部屋の鍵をかけると、スーツを脱いだ
「康太が、僕を見ずに夢中になるからいけないんです…」
榊原はゲームでさえ…妬く…
「伊織の顔を見てたら…ゲームオーバーになる…」
「なれば良いんですよ…」
一糸纏わぬ姿になると…部屋の照明を落とした
「僕は独占欲が強い…例えゲームでも…嫌です」
榊原は康太の足を掴むと…指を舐めた…
「伊織…汚いってばっ…」
康太は仰け反り……榊原に言う
「康太の体で汚い所なんてない筈ですよ
毎日…康太を洗っているのは僕なんですから…」
榊原は、言い切り…執拗に康太の脚に舌を這わせた
「ねっ…康太…今度、スーツ着たまま…犯って良い…?
ネクタイを外さずYシャツをはだけて…ズボンを少し脱いで…繋がりたい…」
最近…変態…っぽく……嫌…最近…じゃねぇな…
去年の桜林祭で女装した康太をワンピースのまま犯し…服をダメにした…
変態は…元々か…
「ねっ…康太…」
榊原の舌が…太股を舐め上げる
「す…好きにすれば…良い…もんよー
オレは…伊織のだから…伊織の好きにすれば良い…」
と、言った後で……
「でも…ムチとかローソクは嫌だかんな…
後、縛られて吊るされるのも…嫌…」
榊原は、康太を舐めるのを止めた
体を起こし…膝の上に抱きあげた
「康太…僕は…そっちの趣味はありません
何処で…そんなのを見たんですか…」
誤解をされたままでは…困るのだ
「一生が昔…見せてくれた…お姉ぇさんにいたぶられるサラリーマンとか…」
榊原は、ぷるぷる震えた
「そんな変態仕様では…ありません…
でも望むなら…勉強して…康太にしてあげますよ…」
康太は榊原に抱き着いた
「しないでぇ…普通に抱いて…
伊織に…優しく愛されるのが良い…」
「僕は康太を傷つける様な事はしません…
康太を愛しすぎて…たまに変態が入るのは許しなさい…」
康太は榊原の唇をペロッと舐め
「変態と言うより…親父…だよな…」
と、トドメを刺した
榊原は康太を押し倒した
「ならば…親父の愛撫を受け取りなさい…
簡単にイケるとは思わないで下さいね」
榊原は、そう言い…ニャッと嗤った
康太の体に…愛撫の雨を降らせる…
優しく…優しく…舌は這って行く…
だが…決定的な刺激はくれなくて…
康太はイク手前でタイミングをずらされ…
焦れったさに…榊原にねだった
「伊織…ねっ…お願い…イカせて…」
お願いされると…聞いてしまえしかない…
「惚れた弱味です…イカさせて上げます」
榊原は、康太を貫いた…
一つになり…交わり…繋がる…
この絶頂を目指して…放出する瞬間が…
堪らなく欲しくて…康太は総てを吐き出した…
榊原も…康太の中で…総てを吐き出した
微睡み…眠りそうになる体を起こし…
康太はバスルームに行った。
「伊織…オレはこれより、身を清め…琴音の転生の準備をする…伊織も来るか?」
榊原は、頷いた
康太と共に…それが榊原の願いだった
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