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第17話 放課後の約束
「で、でも……」
冬多が尚も続けようとするのを、進一郎が穏やかに遮った。
「とにかく歩きながら話さないか? さっきから、通学するみんなの流れを邪魔してるような気がするんだけど」
「あ……」
進一郎に言われて初めて気づく。
二人は通学する生徒たちのど真ん中で、立ち止まって話をしていたのだ。
「……だから、あんなのはもういいから」
通学路を歩きながら、進一郎はヘアクリップのことは気にしなくていいと笑う。
「でも……、やっぱり、そういうわけには……」
「きちんとしているんだな……、冬多は」
進一郎はそんなふうに呟き、すごくやさしい瞳で冬多を見つめてくる。切れ長の瞳がとても綺麗で、冬多は不意に涙が零れそうになり、慌てて顔を背けた。
「……そんなに気になるなら、放課後に二人で駅前の百均へ行って、あれと似たもの探そうか?」
「えっ……?」
二人でって……、今、言った……?
「それで冬多の気が済むなら、オレも昨日のヘアクリップと似たもの探すの手伝うよ」
「…………」
背けた顔をまた彼のほうへ戻してしまった。
分厚い硝子のレンズと、長めの前髪越しに、気のせいか少し照れたような顔をしている進一郎の端整な顔が見える。
予想だにしていなかった展開に、冬多が言葉を返すこともできないでいると、
「決まり、放課後いっしょに見に行こ」
進一郎はポンとやさしく冬多の頭を叩いた。
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