19 / 94

第19話 初めての放課後デート

 放課後。  進一郎と冬多は駅前のショッピングモールにある百均の店へ行った。  冬多は、壊れてしまったヘアクリップとよく似たものを買い、玲奈へ返してくれるよう、進一郎に託した。  そのあと、モール内にある本屋で、新作のホラー小説をそれぞれ一冊ずつ購入し、 「読み終わったら、交換しような」  進一郎がそんなふうに提案すると、冬多は真っ赤になりながらも口元をほころばせた。  すぐに真っ赤になって、はにかむ様子がかわいくて、進一郎は眩しい思いで、冬多を見つめる。  そのとき、二人のおなかが、クゥと同時に空腹を訴えた。 「そういえば、おなかすいたなー」  進一郎が言うと、冬多は恥ずかしそうにうつむきつつも、小さくうなずいた。  二人はモールの入り口にあるファストフードの店に入った。  注文を済ませ、窓際の席に向かい合って座ると、冬多は学生でいっぱいの店内を見渡して、びっくりするようなことを口にした。 「僕、こういう店で、食べるの初めて……」 「え? ハンバーガー食べるの、初めてなの? 冬多」 「あ、そ、そうじゃなくって……、買って帰って、家で食べたことは何度もあるけど……、お店で、食べるのって、初めてで……」 「ああ、そういうこと……」  それでも充分、びっくりすることではある。今時の高校二年がファストフードの店で食べた経験がないというのは。 「うん……。なんだか、とっても、楽しい……」  冬多はうつむき加減ながらも、とても楽しそうに見え、その様子は進一郎の心をも楽しく、暖かくさせた。

ともだちにシェアしよう!