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第21話 近づきたい気持ち
二人は大型のCDショップが入っている向かいのショッピングビルへ、場を移した。
進一郎は冬多を促して、dvdコーナーのほうへと歩いていく。
「探しているdvd、なんていうタイトルなの……?」
ホラーのジャンルの前でとまり、dvdソフトの背を細い指で辿りながら、冬多が聞いてくる。
進一郎はしばし考えた。
冬多ともっと一緒にいたくて、出た言葉だったから、正直言ってしまうと、そこまで欲しいと思っているdvdはなかったのだ。
でも冬多は真剣に探そうとしてくれているみたいだ。
進一郎は、機会があれば観てみたいと思っているいくつかの作品の中から、一つを選んで言った。
「……キャンプファイヤーの夜、っていうやつなんだけど……」
「えっ……?」
「なに?」
「あの、佐藤くん……、僕、そのdvd持っているけど……」
「え……?」
進一郎は運命に感謝した。このチャンスを逃す手はない。
「あ、あの、もしよかったら、かーー」
「貸して!」
内気な思い人との距離を縮めたい一心で、進一郎は思わず勢い込んで、冬多に詰め寄っていた。
「じゃ、じゃあ、あの、とりに来る?」
だから、冬多がそんな言葉を言ってくれたのは、ほとんど進一郎の勢いに巻き込まれしまったからだろう。
「え? 行っていいの? 今からだよ?」
「ぼ、僕は、かまわないけど……、佐藤くんは……?」
「行く。今夜にでも観たいしっ……」
冬多がこの勢いに巻き込まれているうちに、と進一郎は畳み掛けて言い、彼の了承を勝ち取った。
女子生徒たちの憧れの的で、いつもクールな進一郎にしては、いささか姑息なやりかただったが。
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