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第24話 そして、通じ合う思い

 進一郎は、冬多の部屋から帰ろうとしたが、もう一度、彼の傍に戻った。  まだ茫然としている冬多へ、 「冬多……、オレと付き合って欲しい」  そう告げてから、うつむく彼の長い前髪をかきわけ、なめらかな額へそっと口づけをした。  どうか、オレの気持ちがきちんと冬多へ伝わっていますように……そんな願いを込めて……。 「……返事はいつでもいいから」  進一郎はそう言葉を加えると、ますます速くなる鼓動に追い立てられるように、冬多の部屋をあとにした。  マンションを出て、少し歩いてから、進一郎は振り返り、冬多の部屋がある辺りを見上げた。  正直言えば、早くも少し後悔していた。  少しずつ距離を縮めていくつもりだったのに、なんだかとても性急に告白をしてしまった形になったから。  怖がらせてしまったかもしれない。  軽いやつだと思われたかもしれない。 「……それも女の子からの告白じゃなくて、同性からの告白だもんな……」  溜息とともに呟いてから、不安に痛む心をごまかすようにマンションから視線を逸らし、自宅へと歩き始める。 「……うくん……」  そのとき、かすかな声が耳に届いた。  ……え?  進一郎が振り返ると、冬多がマンションのエントランスを抜けて、走ってくる姿が見えた。 「……さとう、くん……」  彼は顔を真っ赤にして、前髪は風に流され額を全開にしながら、必死に進一郎のほうへと走ってくる。 「……佐藤くん……、これ、……忘れ物……」  進一郎のすぐ傍まで来ると、冬多は肩で息をしながら、dvdソフトを差し出す。 「え? ……あ。ありがとう」  冬多は荒い息が落ち着いてきても、まだ深くうつむいたまま顔をあげない。 「冬多……?」  冬多はしばらくそのままでいたが、やがて、渾身の勇気を振り絞ったという感じで、顔をあげた。 「……佐藤くん……、本当に……、本当に、僕なんかで、いいの……?」

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