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第27話 事件の始まり
季節は移ろい、秋も深まった頃に事件は起きる――。
進一郎と冬多は、付き合いだしても、学校ではほとんど以前と変わらなかった。
冬多が依然、クラスになじんでいないことがその大きな理由である。
とにかく目立つのを嫌がり、体を小さくして存在さえも消そうとしているかのようだった。
そんな冬多とは対照的に、進一郎のほうは華のある容貌のため、黙っていても自然と目立ってしまう。必然的に、冬多は学校では進一郎へ話しかけてこない。
今までと同じように、進一郎が話しかけると答えはするが、笑顔はあまり見せず、言葉も少な目だ。
それでも、放課後は学校の外で待ち合わせて遊びに行くことが増えたし、電話やメールも頻繁に交わして、休みの日はほとんど一緒に過ごしていた。
その日の放課後、進一郎は鞄を教室に置いたままで、どこかへ行っていた。
冬多はチラと進一郎の席を視界におさめてから、自分は帰り支度を済ませて、席を立ったときだった。
クラスでも比較的素行の悪い四人の男子生徒たちが、冬多の周りを取り囲んだ。
「……なに?」
冬多はうつむいたまま、小さな声で聞いたが、次の瞬間には、体を引きずられて、教室の後方にあるロッカーへ叩きつけられた。
四人の中でも一番体格がよく、リーダーのミヤチという男子が冬多に近づき、凄んできた。
「トロ多よー。おまえ、最近いい気になってんじゃね?」
「…………」
「何人か見たやつがいるんだけど、おまえ、休みの日に進一郎とつるんでるんだって?」
「…………」
「進一郎とおまえじゃ住む世界が違うんだよ。そんなことくらい分からないのかよ? だいたいおまえ、どうやって進一郎に取り入ったんだよ?」
冬多はなにを言われても、うつむいたまま返事をしなかった。
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