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第38話 プラトニックな一夜

「冬多?」  急に慌て始めた冬多を進一郎が不思議に思っていると、彼が、それこそ蚊の鳴くような声で言った。 「あ、あの、ち、違うから……」 「? なにが?」 「だ、だから、その、そ、そ、そういう意味で、い、言ったんじゃないから……」  もうこれ以上はないくらい真っ赤に顔を染め、布団で顔を隠してしまう。  進一郎もピンときた。  自分が言った言葉が、一夜を共にする……はっきり言ってしまえば、エッチをする誘いにも聞こえるということに思い至ったようだ。  焦って、どんどん布団の中へと、もぐり込んでいってしまう冬多がかわいくて、進一郎はふとんを引っ剥がし、彼を引き寄せ、腕の中へ包み込んだ。 「分かってる。今夜は一晩中、オレが傍にいてあげるから……」 「……ありがとう……」  胸にもたれかかって、はにかんだように微笑む冬多が愛しくて、進一郎は、彼を抱きしめる腕に少しだけ力を入れた。  夕食はデリバリーのピザをとり、冷蔵庫に入っていた野菜で、二人で簡単なサラダを作って、食べた。  順番にシャワーを浴びて……進一郎は間違っても冬多に襲い掛からないように、欲望を処理して……、ホラー小説の話で盛り上がって、日付が変わるちょっと前に冬多はベッドに入った。  進一郎はベッドの横に敷かれた布団のうえに座り、スタンドの淡い光だけを灯して、冬多が眠るのを見守る。 「おやすみ、冬多」  囁きと一緒に瞼に口づけると、 「おやすみなさい……」  疲れていたのだろう、冬多はすぐに寝息を立て始めた。  けれども、芯から眠れているわけではないみたいで、夜中に何度も目を覚ました。  そして、その度、進一郎が傍にいることを確かめ、また安心したように眠る、夜明けまでその繰り返しだった。

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