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第39話 二人きりの朝

 翌朝、冬多は、「昨夜はありがとう……」と、頬をピンクに染めて言い、ベーコンエッグとサラダとトーストの朝食を用意してくれた。  一睡もしていない進一郎のことを心配して、ダイニングの椅子に座らせたまま、自分はかいがいしく動き回る。  そんな冬多のエプロン姿を見ていると、なんだか新婚夫婦にでもなったみたいで、進一郎は少しくすぐったいような気持ちになってしまう。  だが一つ、進一郎の心を曇らせたことは、冬多は前髪こそヘアクリップでとめて、綺麗な額を見せていたが、また眼鏡をかけていたことだった。  一晩経ったら、眼鏡を外すことへの不安と抵抗がぶり返してしまったようだ。  朝食の用意ができ、食事を始める前に、進一郎は冬多へあらためてお願いしてみた。 「冬多、言っただろ? 二人でいるときは眼鏡、外して?」 「…………」  冬多は困惑もあらわに、うつむいてしまう。 「別にね、眼鏡をかけていようが、いまいが、冬多は冬多なんだけどさ。オレは、おまえの顔を見て、不愉快になったりしないよ? だっておまえのこと大好きだから。性格も顔も、冬多のすべてが好きなんだから。……特に必要ないときにも眼鏡をかけ続けたり、そうだね、長い前髪もね、目が悪くなっちゃうよ?」 「うん……」  根が素直な冬多は、ほんの少しの躊躇のあと眼鏡を外してくれた。 「ありがとう、冬多。無理言ってごめんな」  進一郎がそう言うと、冬多はうつむいたまま大きくかぶりを振った。  二人声をそろえて「いただきます」を言い、冬多お手製の朝食を食べ始めたのだが、彼の作ったものは完璧においしかった。  ベーコンのカリカリ具合も、卵の半熟加減も、進一郎好みで、サラダのドレッシングも手作りらしく、それがまた進一郎の好みに合った。  冬多の料理の火加減や味付けが、あまりにも自分の好みにぴったりなので、進一郎は、冬多は運命の相手だと確信したくらいだった。  朝食を綺麗に平らげ、 「すごくおいしかった。ごちそうさま」  しみじみと進一郎が頭を下げると、冬多はとてもうれしそうに笑って、 「じゃ、これからは佐藤くんがうちへ来るときは、僕が料理作るね……」  いつになく元気のある声で、そんなかわいいことを言ってくれた。

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