48 / 94

第48話 もっと近づきたい

 大人のキスを堪能したあと、煌めく糸を引かせて、唇を離すと、冬多は甘い吐息を漏らした。  進一郎は冬多を自分の腕の中に抱き込んで、彼の髪を優しく撫でる。  うっとりと目を閉じてされるがままになっていた冬多が、ぽつんと呟く。 「ね……佐藤くん、僕、分かった……」 「ん? なにが?」 「誰かをすごく好きになったら、その人のことなにもかも知りたいって、その人のなにもかもを手に入れたいって、思うんだなって……」 「冬多……」 「……僕も、佐藤くんの、なにもかもを知りたい……。佐藤くんを、手に入れたい……。佐藤くん……、好き……」 「冬多……!」  もうダメだった。  今まで抑え込んでいた冬多を欲しがる自分が、堰を切ったように溢れてしまう。 「そんなこと、言ったら、冬多。後悔しちゃうよ……?」  最後の自分自身への牽制だった。  自分の雄の欲望で、彼を傷つけることだけはしたくなかったから。  けれど、冬多はゆっくりとかぶりを振って、進一郎の背中に遠慮がちに細い腕を回してきた。 「後悔なんか、しないよ……? 僕、佐藤くんを……もっと知りたい……」  進一郎は、冬多の体を力いっぱい抱きしめ、そのまま彼を横抱きにさらい上げた。    寝室のベッドの上に冬多をそっと横たえ、髪や顔にキスを繰り返す。  潤んだ瞳で、甘い吐息を漏らす冬多がとても扇情的で、進一郎は、自分が暴走してしまう危機感を覚えた。 「……冬多……、今ならまだ、オレもストップかけられる。でも、これ以上したら、もうオレ、とめられなくなる。おまえに痛い思いをさせてしまうかもしれない……」  冬多は宝石のような瞳で、進一郎を見つめて、とても綺麗に笑った。 「いいよ……。佐藤くんが、あたえてくれるものなら……痛みだって……」 「冬多……」  進一郎は冬多への愛おしさの赴くままに、今一度、彼に口づけを贈った……。

ともだちにシェアしよう!