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第48話 もっと近づきたい
大人のキスを堪能したあと、煌めく糸を引かせて、唇を離すと、冬多は甘い吐息を漏らした。
進一郎は冬多を自分の腕の中に抱き込んで、彼の髪を優しく撫でる。
うっとりと目を閉じてされるがままになっていた冬多が、ぽつんと呟く。
「ね……佐藤くん、僕、分かった……」
「ん? なにが?」
「誰かをすごく好きになったら、その人のことなにもかも知りたいって、その人のなにもかもを手に入れたいって、思うんだなって……」
「冬多……」
「……僕も、佐藤くんの、なにもかもを知りたい……。佐藤くんを、手に入れたい……。佐藤くん……、好き……」
「冬多……!」
もうダメだった。
今まで抑え込んでいた冬多を欲しがる自分が、堰を切ったように溢れてしまう。
「そんなこと、言ったら、冬多。後悔しちゃうよ……?」
最後の自分自身への牽制だった。
自分の雄の欲望で、彼を傷つけることだけはしたくなかったから。
けれど、冬多はゆっくりとかぶりを振って、進一郎の背中に遠慮がちに細い腕を回してきた。
「後悔なんか、しないよ……? 僕、佐藤くんを……もっと知りたい……」
進一郎は、冬多の体を力いっぱい抱きしめ、そのまま彼を横抱きにさらい上げた。
寝室のベッドの上に冬多をそっと横たえ、髪や顔にキスを繰り返す。
潤んだ瞳で、甘い吐息を漏らす冬多がとても扇情的で、進一郎は、自分が暴走してしまう危機感を覚えた。
「……冬多……、今ならまだ、オレもストップかけられる。でも、これ以上したら、もうオレ、とめられなくなる。おまえに痛い思いをさせてしまうかもしれない……」
冬多は宝石のような瞳で、進一郎を見つめて、とても綺麗に笑った。
「いいよ……。佐藤くんが、あたえてくれるものなら……痛みだって……」
「冬多……」
進一郎は冬多への愛おしさの赴くままに、今一度、彼に口づけを贈った……。
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