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第59話 甘い朝のひととき
「おはよ、冬多」
進一郎は冬多が『冬多』でいることに安堵した。
「冬多、体……平気か?」
安心したら、急に進一郎も気恥ずかしさが込み上げてくる。
昨夜、二人は確かに結ばれた……。
気がかりはたくさんあっても、その事実は確かで、進一郎の心を暖かな幸せで満たしてくれる。
「うん……、大丈夫……」
恥ずかしそうに答える冬多は、食べちゃいたいくらいという形容がぴったりなほど、かわいい。
「今、朝ごはんっていうか……、もうお昼ごはんって言ったほうがいいのかな……作ってるから……」
そういえばキッチンからすごくいい匂いがしていた。
冬多はパジャマにエプロン姿で、前髪はピンクのヘアクリップでまとめ、眼鏡もかけていない。
ようやく進一郎と二人きりのときは、完全な素顔でいることに慣れてくれたようだ。
冬多が用意してくれた朝食兼昼食は、ホットサンドだった。
挟んであるのは、ハムやチーズ、ツナサラダなどのスタンダードなものから、スライスしたちくわという変わり種まであった。
ホットサンド以外にもポタージュスープにパスタサラダとボリューム満点である。
そのどれもがとてもおいしくて。
「冬多って、料理上手なんだな。もしかしてこのポタージュも手作り?」
「うん……。時間があるときに作って、冷凍しておいたんだ……」
「すごいな。やっぱり一人暮らししてると、料理もうまくなるのかな。まあ、もともとの料理の才能うんぬんっていうのもあるんだろうけど」
意外にも、とてもパンと相性が良いちくわのスライスのホットサンドを食べながら、進一郎が感心していると、冬多は遠慮がちに笑いながら、首を横に振った。
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