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第67話 彼の腕に包まれて
冬多が目を覚ますと、すごい美形と目が合った。
何度見ても、いつ見ても、進一郎の端整な顔立ちには慣れることができず、ドキドキしてしまう。
特に、こんなふうに目覚めたときにアップで飛び込んでこられると、心臓に過剰な負担がかかって、止まってしまうんじゃないかとさえ思う。
しかし今、目の前の進一郎は、とても心配そうにその整った顔を曇らせていた。
「……佐藤くん?」
呼びかけた冬多の声はひどく掠れていた。
掠れ声の原因が、昨夜、与えられる快感に、さんざん泣き叫んだからだと思い至り、冬多は恥ずかしさで顔が赤くなった。
進一郎の手が優しく頬を撫でてきて、
「冬多……、どうしたんだ?」
そんなふうに問いかけてくる。
「……え? なにが……?」
「だって、おまえ、泣いてるから……」
彼が親指でそっと冬多の目尻に触れた。
「え?」
冬多は自分の手で目元に触れてみると、確かに濡れている。
「……多分、なんか夢を見ていたんだと思う」
泣きながら目を覚ますことは、冬多にとっては珍しくないことだ。
それなのに、進一郎は冬多の胸が痛むほど心配そうな顔をして、尚も聞いてくる。
「どんな夢だったんだ? 悲しい夢? 怖い夢?」
「それが全然覚えていないんだ。……目が覚める瞬間に忘れちゃうっていうか……」
「…………」
進一郎は冬多を見つめたまま、まだなにか言いたげにしていたが、結局、それ以上はなにも言わず、冬多を強く抱きしめた。
「佐藤くん……」
冬多もゆっくりと進一郎の背中に両腕を回す。
冬多よりもずっと広い背中、力強い腕。
愛する人の腕に包まれて、冬多は泣きたいくらいの幸せと安らぎを感じていた。
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