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第81話 二人、学校をサボる

 翌朝、進一郎と冬多は、ほとんど同時に目を覚ました。  時計を見ると、もう十一時前だった。七時にアラームをセットしてあったらしいが、どちらかがとめてしまったらしい。  冬多は眉を下げて、気の毒なくらいオロオロしている。 「さ、佐藤くん……、どうしよう……。学校、遅刻するよね……」  パニックのあまりそんな当たり前のことを聞いてくる。 「遅刻も遅刻。もう、いいじゃん。今日はサボっちゃおう、冬多」 「えっ!?」  真面目な冬多にとっては、学校をサボる、ということは、ものすごい大罪なのだろう。  彼の罪悪感がヒシヒシと伝わってくる。 「だってさ、冬多。よく考えてみろよ。今から行ったって、昼ごはん食って二時間だけ授業受けて帰ってくるだけなんだしさ。めんどくさいじゃん。それより二人きりで過ごそうよ」  進一郎のほうは世間一般の高校生と同じくらいに、学校をサボることに対して罪悪感はない。 「でも、そんな、やっぱり……」  躊躇いの言葉をオドオドと繰り返している冬多を籠絡すべく、進一郎は甘えるような上目づかいで彼にお願いをした。 「それよりさ、冬多。オレ、おなか空いたんだけど、なんか作ってくれる?」  進一郎のお願いに、冬多は頬をピンクに染めてうなずいた。 「うん……。スクランブルエッグくらいしかできないけど……、それでもいい?」 「勿論」 「あ、でもその前に……」 「ん?」 「その傷の手当て、しなきゃ……」  冬多は綺麗な顔を曇らせて、進一郎の頬の傷にそっと触れた。

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