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第88話 救い
「じゃ、大丈夫なんですね!?」
「ああ。手首の傷がふさがるまでは入院してもらうけど、もう大丈夫」
医師は大きくうなずいてくれた。
「……っ……、良かった……。冬多」
進一郎はギリギリまで張りつめていた神経が緩んで、その場にへたり込んでしまいそうになった。
それをなんとかこらえて、
「先生、本当にありがとうございました……!」
医師に向かって深々と頭を下げる。
すると、男性医師は少しだけ表情を引き締めてから、言った。
「傷のほうは完治までそれほど時間はかからないと思うけど、問題は心のほうだね。彼はどこか、心療内科とかそちらの方面の医者に通っているのかな?」
「あ、はい。越智こころのクリニックに」
「ああ……あそこね。分かった。そちらには私のほうから連絡を入れておくよ。ところで彼、親御さんは?」
「え?……あ、……彼の両親にはオレのほうから連絡をしておきます」
「……なんか事情がありそうだけど、できるだけ早く頼むよ」
医師はそう言い残すと、その場を去って行った。
冬多は集中治療室から個室へと移された。
看護師が点滴を調節して出ていくと、進一郎は冬多のベッドの傍に座り、寝顔を見つめる。
先ほどよりは幾分顔色も良くなっていて、少し安堵した。
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