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第15話

渋々という様子でついて来る鳥斗と共に、人貴は帰路についた。少し可哀相な気もしたが仕方が無い。 まだ混雑が残る電車にいつものように二人で乗ったが、やがて人貴はその中の何人かが――男性も女性もいたが、大概若者だった――気になって仕方がないと言う様子で鳥斗をちらちらと見ているのに気がついた。 あの派手な髪色では注目も浴びるだろうと人貴はそう考えていたのだが、いつのまにか人波に押されて自分から少し離れた所にいた鳥斗に、若い男が話しかけるのを見て慌てた。付近の人を掻き分け、近付く。 「こいつに――なんか用?」 人貴が男に訊ねると、彼は驚いて 「いや。なんでも――ないです」 と言い、丁度停止した電車から逃げるように降りて行った。人貴は小声で鳥斗に訊いた。 「あいつ、なんだって?なに言ってた?」 「一緒に飲みに行かないか、って」 人貴は溜め息をついた。 「ナンパされてんなよ……」 鳥斗が微かに笑う。 「笑いごとじゃないよ……知らないヤツに付いてくんじゃないぞ?危ないからな」 「付いてったりしません。僕らはいったんつがいの相手を決めたら、よっぽどの事がない限り、変えたりしないですから」 つがい?そうか、俺って……つがいの相手に選ばれたんだ?苦笑いした人貴だったが、ふと気が付いた。 「よっぽどの事が、って……変わる場合も、あるんだ?」 駅に着いたので先に立って電車を降りる鳥斗に訊ねる。 「ありますよ。もっとふさわしい、強い相手が現れれば」 「なにぃ~?」 「でも相手を変えるかどうか決められるのは雌だけなんです。強い雄は強い子供を作るのに有利ですから、そのために。――だから僕から変えることはありません。決めるのは、人貴さんです」 「ああそう……え?ちょっと待て!ということは……?どういう意味だ?決めるのは雌?で、俺に決めろってお前が言うってことは?鳥斗!俺は今……ものすごーく混乱してるぞ!」 人貴は改札を抜ける鳥斗を追いながら叫んだ。

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