18 / 26

第18話

夜が明ける頃――白夜が満ちるの家に戻ってくると――庭で鳥斗が空を見上げて佇んでいた。 「坊ちゃん!?ここにいつから――!?まさか――寝てないんですか!?」 白夜が驚いて訊くと、鳥斗は真っ赤に泣きはらした目をして言う。 「白夜――白夜ごめん。良かった――帰ってきてくれないかと思った――!」 泣き出してしがみついてくる鳥斗を、地面に降り立ち人の姿で抱きとめながら、白夜は詫びた。 「私が坊ちゃんから離れるはずがありませんでしょう――申し訳ありません――こんなにご心配かけるつもりはなかったんですのに」 「ちが……僕が悪いんだ――白夜が言ったとおり、繁殖期でおかしくなってるんだ。ごめん。ごめんね。酷いことして――」 「坊ちゃん……」 鳥斗が、白夜が手に持っている細い枝の束に気がついて、涙を拭いながら訊ねた。 「それ……里の……?」 「あ、はい!祝木(いわいぼく)です!そうだこれで――お祝いに必要な縁起の品が全部揃ったんですよ!」 「まさか――昨夜はそれを探しに行ってたの?」 「あ、いいえ……」 白夜は照れたように言った。 「かなり探したんですけど、街の近くでは、これだけはどうしても見つからなかったんです。どうやら里にしかないものらしくて。でも里まで行ったりしたら一日では帰ってこられないから……あきらめてたんですが、昨夜どういうわけか黒羽が――これを持って来て、私に……」 「黒羽が……?」 「ええ。妙な奴ですよねえ……」 部屋へ戻って祝木を、二人で他の品と一緒に飾りつけた。そして白夜がそれらの前で、全部は覚えていないけどと言いながら、恥ずかしそうに鳥斗のために里の祝唄(いわいうた)を歌ってくれた。まだそれぞれの布団の中にいた他の皆も、微かに聞こえてきたその静かだが明るい節回しに目を覚まし、まどろみの中、良い心持で耳を傾けた。

ともだちにシェアしよう!