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第5話

「助けてくれてありがとうございました・・・」 「どーいたしまして」 中庭に降りてきた門倉へ綾人は強烈な方法ではあったが、強姦魔を撃退してくれたことに深々と頭を下げて礼を告げた。 永遠顔を伏せて深々とお辞儀する自分に飄々とした声が返ってくる。 緊迫し、緊張感に溢れて絶体絶命だった一分前が嘘のようで綾人は安心感からじわりと目尻に涙が滲んだ。 そして、そっと自分を助けてくれた男へ顔を上げた。 門倉は紅茶色の明るい髪に同じ色をした瞳は少し垂れ目で二重の瞳をした御伽の国の王子さながらの美貌を持つ男だった。 高い鼻筋に少し薄い唇、180センチに届きそうな身長はスラリと高いモデル体型で、全身均等の取れた美しさに綾人は息を呑んだ。 「・・・君、新入生だよね?」 「あ、はい!」 「サボり?」 「え!?いや・・・、えっと・・」 答えに窮して顔を伏せたら、門倉に顎を人差し指で持ち上げられた。 「可愛いね・・・。噂の天使ちゃんかな?名前は?」 「・・・・し、らき・・・あやと・・です・・・・」 こんな聞かれ方をして、普段なら名前を名乗ったりはしないのだが、この整い過ぎる顔面と優美な声につられて名乗ってしまった。 しどろもどろとピンクの唇が名前を答える瞬間を門倉は魅入るように紅茶色の瞳を輝かせた。 ・・・・なんだ、これ? 決して表には出さないが、綾人を見てからずっと、かつてないほどのスピードで己の心臓がガンガン鳴り響くことに門倉は狼狽えていた。 こんなこと、生まれて初めての経験でどう処理していいのか分からない。 分からないが、とりあえず目の前にいる綾人へ悟られぬよう、いつも通りの自分を演じた。 「綾ちゃんっていうんだ。俺は門倉 優一。この学園の生徒会長兼、寮長してるんだ。宜しくね」 「せ、生徒会長っ!!!」 門倉の役職に綾人は頬を紅潮させて前のめりになり、すごい勢いで食いついてくる。 「あ、あの、あの!お願いします!!僕とお友達になってくれませんか!?」 「・・・・・・お友達?」

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