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第6話

いつも自分へ求められることは「恋人」「愛人」「セフレ」といった「特別な関係」だった。 それをこの天使は当たり障りない「友達」枠を求めてきて、門倉は驚いてしまった。 「知り合いとかでもいいんです!」 更にランクを落としてくる綾人の意図が分からず、訝しむように目を細めたら、焦ったように理由を述べられる。 「あの、僕、昔から変なのに好かれる傾向があって困ってるんです。さっきも・・・」 眉間に縦皺を作って忌々しそうに言う綾人に門倉は何を言いたいのか察した。 「つまり、守ってくれってこと?」 「え?ま、守って・・・、いや、はい。そうですね。お名前をお借りしたいんです」 率直な言葉に弾かれたように顔を上げると、真っ直ぐ門倉を見て頼んだ。 「ご迷惑はお掛けしないって約束します!先輩の名前も傷付けないって誓います!」 だから、お願いしますと頭を下げてくる綾人に門倉は宙を見て、腕を組み勿体振るように唸った。 「君を守ることで俺に何かメリットってあるわけ?」 気がつけばこんな意地悪なことを口走ってしまい、門倉自身幼稚な自分に驚けた。 一方、ギブアンドテイクを求められた綾人は困ったように顔を顰めて考え込み始めた。 その数分後、拳を握りしめて名案だと輝く顔を向けてくる。 「報酬を支払います!提示金、仰ってください!」 満面の笑顔を向けられた瞬間、門倉の心臓がドクンっと音を立てて大きく跳ね上がる。 破壊力抜群! 目の前、霞むな・・・ 痛いほど心臓が鳴り響き、天使の無垢な笑顔に触れたい衝動に掻き立てられた。 それと同時に、自分の中の嗜虐心が頭をもげる。 苛めて、泣かせて、縋りつかせ、欲にまみれる天使を無性に見たくなってきた。 そんな門倉の考えに気付くわけもなく、綾人は純真無垢の笑顔を向ける。 「基本的に先輩のお名前だけお借りしたいんです!生徒会長の知り合いって言えば皆んな怯みますよね?だから、お願いします」 再度、頭を下げて頼み込んでくる綾人に門倉は少しウエーブ掛かった柔らかな蜂蜜色の髪を鷲掴んで顔を上げさせた。 「イッ!!」 いきなりの手荒な行動と痛みに綾人が小さな悲鳴を上げて硬直する。 「俺、金には困ってないんだよね。んでもって、人に利用されるの大嫌いなんだ」 冷たい声で淡々と答える門倉は綾人を冷ややかな目で見下ろした。 そして、そのままふわふわの髪を握る手に力を込めると綾人は痛みに顔を歪ませ、門倉はニヤリと笑う。 「いいね。その顔・・・・」 小さく呟くと同時に門倉は綾人の足を払って、地面に組み敷く。 「な、なに・・・・!?」 景色が一転して、何が起こったのか瞬時に理解できない綾人は身体を強張らし、顔を青くさせた。 そんな綾人に門倉はにっこり笑って、細くまだ未熟な小さな体へと馬乗りになった。

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