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第12話

「・・・は?ここの生徒?」 聞き間違えたのかと九流が繰り返し聞いてくるのを門倉は優美に微笑んでハッキリと告げた。 「ここの生徒だよ。性別は男。天使とアダ名が付いてる超絶美少年。見たら納得すると思うっていうか、猛は会ってるよ?」 「・・・・・」 そんな天使と言われるほどの超絶美少年に会った記憶がない九流は首を傾げる。 それに対して、門倉がニヤリと笑って付け足した。 「俺の恋人って言ったじゃん」 その言葉に九流はまさかと目を見開いた。 「入学式の!?」 入学式、4月でもっとも大きな行事に生徒会は天手古舞になる。 人でが欲しいときにこのアホな生徒会長は見慣れぬ男を担いで仕事を放棄するや、しけ込んでは雑用を自分へ丸投げしてきたのだ。 「嘘だろ!?お前、本当に男にまで手を出したのか!!?」 俺はストレートだとこの男子校へ入学するや、迫り来る生徒相手に声を大にして告げてきた門倉のまさかの趣旨変えに九流は驚愕した。 「いや〜。俺もまさか男に惚れるとは思わなかったな〜」 あははと他人事のように笑う門倉に九流は唖然とした。 「まあ、高校生活の思い出だよ!それ以上は俺も分を弁えるから安心しろって」 一目惚れした、恋に落ちたと喚く割には意外にも冷静な親友にこれまた九流は呆気に取られた。 「俺は門倉家の跡取りだし、婚約者もいる。立場はちゃんと踏まえてるよ。相手の子にもちゃんとそれは伝えるつもりだし心配しなくていいから」 飄々と現実を述べる門倉を前に九流は溜息を吐いて肩を竦めた。 「なんだ、遊びか・・・」 「え?」 「いや、恋って俺もしたことないけど、するとそんな冷静さ保てなくなるって聞くから。お前見てたら全然そんな風じゃないし、いつもより少し熱の入った遊びだろ?」 驚いて損したと椅子から立ち上がる九流に門倉はぷくりと頬を膨らませてボヤいた。 「失敬な。本気だよ!あんなに胸がドキドキしたの初めてなんだから」 「それ、きっとただの疲労だよ。2、3日ゆっくり休んだら動悸も耳鳴りも無くなる。んじゃ、お大事に」 阿呆らしいと吐き捨てる九流は門倉を残して生徒会室を後にした。

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