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第13話
「どーして信じてくれないかな〜?」
机で頬杖を付いて居なくなった幼馴染みを責めると、門倉は視線を伏せて感慨にふけた。
去年の冬、門倉はこの学園の理事長に呼び出されていた。
今年の春、この学園に上流階級ではない一般市民が2名入学することを告げられたのだ。
名家揃いと名前を轟かせるこの学園に一般市民が入学してくるのはこれが初めてのことで、理事長からその2名について色々と聞かされた。
一人は西條 ざくろ(さいじょう ざくろ)。
家庭環境が劣悪な美少年と聞かされていた。
恐らく、先ほど九流が言っていた生徒会の意見箱を賑わしている売春行為を行っている者だろう。
もう一人は白木 綾人(しらき あやと)。
俺が一目惚れした天使だ。
彼も西條同様、家庭環境が複雑で天涯孤独の身だと知らされた。そして理事長へ、目をかけるよう命じられたのが白木 綾人だった。
彼は優れた容姿を持つものの、それを上手に扱えない可哀想な子だと教えられた。
飢えた男子校で更に後ろ盾がない綾人は格好の餌食になりやすいと踏んだ理事長は何か相談されたら力になるよう言ってきた。
そんなの知るかと内心ボヤいて、表面上は笑顔を保って受け流していたのだが、まさかその人物に恋をするなんて思いもしなかった。
門倉は幼馴染みの九流と共に昨年、男子校という洗礼を受けた。
強烈なラブアピールに九流が男なんてありえないと言った言葉に内心、強く同意を示していた。
それなのに、まさか自分が男に発情して下半身をおっ勃てたことに失笑する。
それも、恋に落ちるなんて・・・
マジでウケるな・・・
抱けば自分に落ちるかと頭の隅で思っていたら、なんと処女でこれまた燃えた。
なかなか手酷く抱いて泣かせたから反省はしている。しかし、サドスティッスな一面を持つ自分としては綾人の抵抗しては怖がる泣き顔にグッとくるものがあった。
あったが、慣れるまではちゃんと優しく抱いてやらねばと自身を諫めては、欲望と煩悩に日夜悩まされていた。
取り敢えず、今は失恋した事になってんのかな?
「でも、まっ!近々、付き合うからいいや」
強姦して、死ねと罵られたにも関わらず、信じられないポジティブ発想力の門倉は携帯電話を取り出して入学式のあの中庭で撮った綾人の写真を見た。
冷や汗を流し、顔面蒼白になりながら涙を浮かべてショック状態の綾人は可愛い天使が辛そうに泣きべそかいているとしか言えない可愛い写真で門倉はニヤニヤ笑ってそれを待ち受け画面へ登録した。
「今度は気持ちよくてたまらないって顔、撮ってあげよ!」
クスクス笑い、楽しくて仕方ないと言わんばかりの門倉は携帯画像を見つめていると突然携帯電話に着信が入った。
ディスプレイに表示されたのは寮の公衆電話からで、それは寮長である自分へ寮生からのSOSの着信だ。
「はーい。どうかした〜?」
また、寮生同士の喧嘩か?それとも新一年生のホームシック?
うんざりする気持ちを決して悟らすことなく、明るく元気な声で対応する。
『か、門倉先輩ですか!?た、助けて下さい!!1年の白木と三年生が揉めてて!!!』
新入生からの焦った声に綾人の名前が挙がって門倉の心音が大きく鳴った。
あれほどの容姿だ。
何かと目をつけられて揉め事を引き起こすとは踏んでいたが、こんなに早いと思わなくて苦笑する。
それと同時に寮へ戻れば自然な流れで綾人に会えると思うと、スキップでもしてしまいそうなぐらい門倉は気分が高揚した。
「りょーかい!今から行くから、三年に綾ちゃんに手、出したらお仕置きするぞ!って伝えといて〜」
一年生には酷すぎる指示を出すと、門倉は電話を切って生徒会室を飛び出した。
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