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第15話
「・・・か、どくら先輩」
閉じた瞳を開いて悠然と立ち憚る門倉を綾人は目を丸くして見つめた。
「綾ちゃん、三日ぶりだね〜」
ひらひら手を振って、どこまでも軽い門倉に場の空気が和んでいく。
「もしかして、門倉のお手付きか?」
綾人を抱える三年生が嫌そうに顔を顰めて聞く。それに対し、綾人が口を開いたが、声を発するより先に門倉が答えた。
「俺の恋人です。だから・・・」
にこにこ笑っていた目をスッと細め、綾人へ触れる男の手を忌々しげに門倉は視線を向けた。
冷ややかなその視線にぞくりと背筋を凍らせた男は綾人の体をゆっくり地面へと下ろす。
あれほど、下ろせと叫び抵抗したにも関わらず、門倉の一言で命令をきくことに綾人は絶句した。
「綾ちゃん、ちゃんと先輩に俺との関係言わなきゃ駄目じゃん?そうじゃないと、襲われちゃうよ?それとも、襲われたくて黙ってたわけ?」
男から奪うように自分の手を引いて抱き締めてくる門倉は細い顎に手をかけ、上を向かせてきた。
「・・・もしそうなら、お仕置きが必要だね」
紅茶色の瞳が妖しげに光を放ち、綾人は不覚にもその美しさに目を奪われる。
2人を包む空間が一気に艶かしいものに変わった。
「可愛いね。俺の天使・・・」
涙滲ませる目尻へ指を這わせ、耳元で甘く囁く門倉の声に綾人は我に返ったとき、クスっと形の良い唇が弧を描く。
それに気付いた瞬間、綾人はその魅惑の唇が自分の唇へ重なったことに蜂蜜色の瞳を揺らした。
目の前いっぱいに広がる美貌に一瞬見惚れたとき、周りの騒ぐ声に我を取り戻した綾人は右手を大きく振り上げた。
バチーンッと、自分でも驚くほどの大きな音を立てて振りかぶった平手が王子様さながらの綺麗な左頬を打つ。
「ッテ・・・」
いきなりのことに流石の門倉も体勢を崩し、その隙に綾人は体を離して距離を取った。
「勝手なこと言うな!お前なんて恋人でもなんでもない!!」
怒鳴りつけて担架を切る綾人にその場にいるギャラリーは青ざめて固まった。
生徒会長としての威力がここまで凄いことは認める。
認めるものの、自分を襲った限りこの男が他の奴と同じ危険人物なことに変わりはないと綾人は攻撃的な視線を向ける。
「・・・なに?あのこと、まだ怒ってんの?」
叩かれた左頬を自分の掌で摩りながら門倉が呆れた顔を向けて聞いてきて、綾人はカァッと顔を赤くして怒りに顔を歪ませた。
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