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第17話
なに、あの変態!
よくもまあ、あんな事しといて僕の前に顔が出せるもんだよ!!
あの日、中庭にて襲われたことを思い出し、綾人は顔を青くしてギリギリ歯を鳴らせた。
「キモい、キモい、キモーーーーイっ!!!」
歩く足を止め、両手を口元へ添えて、やまびこを求めるが如く叫ぶ綾人に通りすがりの生徒はビクッと体を跳ねさせた。
ハッと我に返った綾人はここが寮の廊下であることを思い出し、顔を赤くして俯くと自分の部屋へと走って帰っていった。
一方、公衆の面前で人生初めての罵倒と平手打ちを決められた門倉は上機嫌で、ある場所へと向かっている。
綾ちゃん、可愛かったな〜
鼻歌交じりの軽快な足取りは頭の中と同じで花畑を歩いているかのように遅い。
のらりくらり、寮の廊下を歩いて階段をトントントンっと降りていく。
行き先は・・・・
「はっけーん!!」
一年生、白木 綾人の個人部屋だ。
「綾ちゃ〜ん?」
トントンっと、扉をノックするが中から声は返ってこない。
避けられているのかと思う反面、薄い壁の向こうで物音一つしないことに不在を連想させた。
ポケットに忍ばせたマスターキーを寮長という名の職権乱用を酷使して鍵を開ける。
「お邪魔しま〜す」
ギィっと、扉を押し開いて少し遠慮がちに入ると整理整頓された綺麗な部屋が目の前に広がる。
カーテンやベッドカバーなどが淡い水色で統一され、ソファやテーブルは優しいクリーム色に揃えられていて、とても涼しげで爽やかな部屋だった。
ただ、勉強机やら窓の端に猫やらクマやらといったファンシーで小さな置物が置かれていた。
小さな子供や女子が好みそうなもので、門倉は綾人らしいと口元を綻ばせる。
「げっ!!」
玄関にて靴を脱ぎ、中へ入ろうとしたとき、真後ろで蛙が潰れたような声が聞こえて門倉は振り返った。
そこには、この部屋の家主である綾人が信じられないものを見る目で自分を見つめていた。
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