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第28話
「ぅ、えぇ!?せ、生徒会長!!?」
門倉の登場にどよめき立つ同級生は全員硬直した。
「おい。その手、離せ」
顎で指して、綾人を押さえつけている男達に門倉がドスの効いた声で命令すると男達はサッとその手を引いた。
綾人はグズグズ涙を流して恐怖で身体が動かないのか固まっている。
門倉の足元には鞄でいきなり後頭部を殴られた男が痛みに呻いていて、それが目障りだったのか門倉の長い足が顎を思い切り蹴り上げて男は泡を吹いて気絶していた。
「っで?こんな狭い部屋で何してんの?」
冷たい紅茶色の瞳が鋭利に光る。
鈍く影を落とすその光によからぬ場数を踏んできた何かを感じ取り、恐怖に一年生達は体を震わせた。
「おい、お前。何してたのか答えろ」
自分の一番近くにいた男に門倉が命じた。
男は震える声で自分は何もしていないと答えると門倉は拳でそいつの鼻の骨を狙って殴りつけた。
男は鼻の骨が折れたのかボタボタと鼻血を流して呻きながらしゃがみこむ。
そして、近くにいる奴らへ次々と何をしていたのか質問していっては目を潰すように拳を振るったり喉を潰すように喉仏を強打したりしながら綾人のいるベッドまで距離を詰めた。
床に這いつくばる気を失った人数も7人で残りは綾人を押さえつけて、お腹を撫でたり服を捲ったり、口を押さえつけていた3人だけになった。
「っで?お前らは何してたの?」
にっこり笑って幾度となく繰り返してきた質問に男達は震える声で言い訳をまくし立てる。
「し、白木が腹が痛いって言うから心配で撫でてただけです!」
「どうして、押さえつけてんの?」
「なんか、暴れるから!」
「口を覆ってた理由は?」
「痛みで叫ぶから近所迷惑かなって・・・」
冷や汗を流しながら門倉の質問に必死に答える3人に門倉は綾人の腹部を撫でていた男の頬を殴りつけ床へ沈めるとその男の腹部をガンガン踏みつけた。
「どうだ?腹はいてぇーか?」
痛みどころか意識を失って無反応な男に舌打ちすると今度は率先して綾人を押さえつけていた男の髪を鷲掴み、壁へ押さえつけると鳩尾目掛けて何発も拳を見舞った。
口から血を吐いて嗚咽を漏らす男の意識がなくなったのを見て、男の髪を離す。
「おいおい、あんまり暴れるから押さえつけただけなのにどうしたんだよ〜」
場にそぐわない気の抜けた笑い声を出す門倉を前に、綾人の口を塞いでいた親衛隊リーダー、坂田は涙を流して腰を抜かしたようにその場に座り込んだ。
「ゆ、ゆるして・・・・・」
震える声で門倉に土下座する男に門倉は冷酷な瞳を向けると顔面を強打して前歯を全部折った。男はギャーギャー悲鳴をあげると門倉はポケットの中にあったハンカチを男の口に押し込んでて満面の笑顔で言った。
「あんまり叫ぶと近所迷惑だぞ」
綾人の部屋は男達が床に沈んで血の匂いが充満していた。
何より、襲われたショックと門倉の容赦ない暴力に更にショックが受けた綾人はガタガタ震えて、身を縮こませていた。
「これがお前の用意した親衛隊?」
皮肉とも取れる言葉に反論したいが、恐怖で声が出なかった。
「綾ちゃん。そろそろ腹、括んなよ?」
口元だけを笑みにして自分を見つめてくる門倉は手を差し伸べた。
「こいつらと俺。どっちを取る?今すぐ選べ」
門倉の血に汚れる手に綾人は身を引く。
「俺を取れば絶対に守ってやる・・・」
門倉のその絶対的安心感を得る言葉に綾人は乱れる思考のなか、考えがまとまらないまま、とりあえず自分を守ると宣言する男へ震える手で血に染まった門倉の手を掴んでしまった。
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