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第37話

「綾ちゃん、朝だよ〜。そろそろ起きないと遅刻するよ〜」 ちょんちょんっと、頬を突かれ、綾人はまだ眠たいと身を捩りながら、枕を抱き締め寝返りを打った。 しかし、ふと、自分一人のはずが己を誰かが起こすという不可解な事態に気付いた綾人はガバっと、体を起こして目を見張った。 目の前にいたのは、学校の制服をキチンと着こなし、王子様さながらの美貌で優美な笑みを浮かべた生徒会長、門倉 優一で、綾人はくらりと眩暈を起こす。 「・・・・・うそ」 顔を真っ青にし、何故こいつがと回らない頭でぐるぐる昨日のことを思い出すと、綾人は徐々に顔を赤くして顔を両手で覆った。 その姿を前に門倉の顔がニヤける。 「照れてんの?かぁ〜わい〜なぁ〜。今日は金曜だし、お泊まりにくる?」 門倉はボスっとベッドへ腰掛け綾人の手を顔から外させる。 赤い麗しの天使が睨みつけてきて生意気だなと心の中でほくそ笑んだ。 「僕に触らないで下さい!」 バシッと手を振り払われ、門倉は肩を竦めて苦笑する。 「どうして俺にはいつもそんなに不機嫌なわけ?恋人になったんだし、他の奴よら多く甘えて笑顔見せてくれても良くない?」 「はぁ!?恋人!!?」 「え?違うの?」 嫌そうな顔で拒否するように声を荒げた綾人へ大袈裟に驚いて聞く。 「違うに決まってんでしょ!?ふざけたこと言わないで!!」 「じゃあ、なに?セフレってこと?」 「セ、セフレって・・・」 顔を赤く染め、その言葉の意味は知っているのか綾人はぶんぶん首を横へ振って喚いた。 「違う!違うっ!!もう、しないもんっ!!あんなことしない!ばか、ばか、ばか、ばぁーーーーかっ!!」 近くにあった枕でバシバシ門倉を叩いては綾人は半狂乱に叫んだ。 「じゃあ、綾ちゃんはあの親衛隊という名の馬鹿どもにこれからは昨日みたいなことさせるってこと?」 自分を叩いてくる手を止めさせ、門倉が低い声で詰め寄って聞くと、綾人は首を横へ振った。 「そんなわけないだろっ!馬鹿ぁ!!もう、やだっ!皆んな、こんな事ばっか考えてんの!?変態、変態、変態っ!!」 涙を浮かべ、あからさまにショックを受けた綾人に門倉は小さくため息を吐くと少し様子を見るかと震える華奢な腕を離した。

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