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第38話
「お・・・、おはよう」
朝、気まずい気持ちに包まれながら登校した綾人を待ち受けてたのは自分を昨日襲おうとした10人近いクラスメイトだった。
皆、門倉の暴力で包帯やら絆創膏やらと腫れ上がる顔が見事に痛々しい。
自分の前へ駆け寄ってきたクラスメイトにびくんっと、体を竦めた瞬間、10人は土下座した。
「白木!ごめん!!昨日は俺ら、どうかしてた!!今後あんなことは絶対しないって誓うから側に居させてくれっ!!!」
門倉によって前歯を全部折られた親衛隊リーダーの坂田を筆頭にお願いしますと、他の男達も頭を下げてきた。
「え・・・」
怒って、一、二発殴られるのを覚悟していたのにまさかの事態に目を瞬かせる。
「白木!俺らにもう一度チャンスをくれ!まさか、あの門倉先輩と付き合ってるって知らなくて!今後は純粋にお前を守るって誓うから!!」
顔を上げ、門倉の名前を出されて綾人の心臓が飛び跳ねた。
「しっかし、あの門倉会長とな〜。流石、白木だよ!!」
「恋人は作らない主義で有名だったもんな!」
「ほんと、ほんと!あの会長も天使にはさすがに堕ちたんだなー!」
嬉々として門倉と綾人の関係を勘違いしながら話すクラスメイト達に綾人は青ざめていった。
「二人の仲、応援するよ!だから、今度こそ信じてお前のこと、守らせてくれ!!」
真摯な瞳を向けて再度、親衛隊へ立候補してくる男達に綾人は曖昧な笑顔を浮かべることしか出来なかった。
・・・・どうしよ。
付き合ってないなんて言えないな
一限目の授業が始まり、男の群れを解放された綾人はノートを取る振りをして冷や汗を流していた。
あの門倉の威力はやはり絶大なもので、下心満載で近寄ってきた男も驚く程の早さで身を引き、更には今までとは別の好意的な姿勢を向けてまでくれた。
有難い
感謝してます
今なら門倉に土下座できそうだ
だけど、
だけど!!
付き合うのは無理!!!
あ、あんなこともう出来ない!!
昨日の情事を思い出し、綾人は顔を赤くして頭を抱えた。
気が狂いそうなほどの羞恥と快楽に自分が分からなかった。
初めての体験をいくつも経験し過ぎて心が保てない。
苦しい・・・
キャパオーバーしそう・・・
考えれば考えるほど、頭が痛くなって吐き気がしてくる。
財布を取り出し、小銭入れに入れている白い小さな錠剤を取り出すと、綾人はそれをそっと噛み砕きながら唾液で飲み込む。
目を閉じて無心になることを心掛けた。
そうすることで、頭痛は治り吐き気も引いていった。
そのことにホッと息を吐いて顔を上げると、綾人は気を取り直して黒板を見つめた。
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