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第41話
side 門倉
「門倉君、好きです!」
同じ二年生で、可愛いとやたら評判の同級生に門倉は呼び出され、愛の告白を受けていた。
参ったなと、苦笑しながら柔らかな声で口を開く。
「ごめん。俺・・・」
「一年の白木?」
「え?」
断りの台詞を遮るようにまさかの名前を出されて驚いた。
「門倉君と白木が付き合ってるって一年の間で聞いて・・・」
「いや・・・」
付き合ってはない
出来れば付き合いたいのだが、相手がなかなか了承してくれないのだ。と、門倉は失笑した。
「俺じゃ駄目?白木より門倉君のこと気持ちよくしてみせるよ!」
ズイッと、前へ一歩出ては門倉の手を取って目をハートマークにする同級生に眉を垂らして笑った。
これが、綾ちゃんだったらな〜
っつーか、綾ちゃんから付き合おうとか言ってくるわけないかぁ・・・
小さく溜息を吐き、門倉は握られた手をそっと解く。
「ごめんね。俺、白木に本気なんだ。だから、他の子とは遊べない」
女の子ならまだしも、男は綾だけで十分だと、心の中で呟く門倉はふと、渡り廊下へ目を向けた。
すると、泣き出しそうな顔で必死に走る天使を見つけ、顔を笑顔にしたあと、その後ろを物凄い形相で追いかける男の列に目を見開いた。
「なんだ、あれ!?」
素っ頓狂な声を出す門倉は告白してきた男の子そっちのけに綾人の姿を追いかけ始めた。
あいつはまた・・・
なにやってんだか・・・・
綾人が走る廊下の曲線に沿って駆け抜ける。
呆れる想いで胸を満たすのに、何故か口元が笑みを作っていて自分でも驚いた。
あの子を見ると体が勝手に動く
いつ見ても可愛いけど、天使はいつも困った顔と泣き顔しか見せない
「そろそろ、可愛い笑顔も見てみたいんだけどね・・・」
ポツリと、独りごちると門倉は綾人へ追いつくべく足に力を込めて走る速度を上げた。
side 門倉 終わり
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