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第42話
つ、疲れた!
無理っ!
もう、無理ぃ〜〜〜!!!
ゼイゼイ息を切らせ、いっそ捕まってキスをした方が楽かもしれないとまで思い始めた綾人は走る速度をゆっくりと緩めていった。
もう、駄目だ・・・
諦め・・・
「うっわぁあ!!!」
諦めたと腹を括った瞬間、開いていた窓から腕が飛び出してきて引き摺り込むように窓の外へと連れ出された。
落下する衝撃に目を固く瞑ったが、その衝撃は起こらず、体は優しく包まれたことに綾人は何が起こったのかと目を開いた。
「か、門倉先輩!!」
まさかの救世主に綾人が叫ぶと、後ろを追いかけてきた男達が息を切らせて窓から身を乗り出してきた。
「げぇっ!!」
綾人ではなく、門倉の姿を目撃した者達は皆、一斉に嫌そうに顔を顰めて硬直した。
「綾ちゃんって足、速いんだね〜。だけど、こんな汗だくになるまで鬼ごっこしてどうしたの?」
綾人の汗で張り付く額を撫で上げ、門倉が聞くと、主犯者の男がしどろもどろになりながら嘘の言い訳を言い放った。
「こ、こいつが遊ぼうって誘ってきたんだよ!捕まえたらキスしてくれるって!」
「僕、そんなこと言ってない!」
門倉に必死に弁解するよう蜂蜜色の瞳を向けると、フフッと優しい顔が近付いてきて、チュッと、音を立ててキスをされた。何が起こったのかと綾人の目が点になる。
「ん?捕まえたらキスでしょ?」
役得だと笑う門倉に綾人が顔を赤くして拳を振り上げた。
「だから、僕言ってないってば!」
「はいはい。っで、これでゲームはお終い。ね?」
それでいいだろう?と、鋭く光る紅茶色の瞳を綾人の後ろの連中へ向けると、首謀者と取れる男がムキになって言い返してきた。
「門倉、そいつ渡せよ!先に俺が目をつけたんだ!」
手を差し出す男に門倉は目を細めて微笑み、綾人の耳元で囁く。
「だって・・・、どうする?綾ちゃん」
楽しげな門倉に綾人は眉を垂らし、不安げに瞳を揺らして嫌だと首を横へ振った。
しかし、男はそれを阻止するように畳み掛ける。
「早く来いよ!別に門倉とナニって関係じゃねーんだろ?」
「そうだ!そうだ!!付き合ってるわけでもねーんだし、特別風吹かせんなよ!」
やいやい外野が騒ぎ出し、門倉から引き剥がそうとする複数の手が伸びてくる。
それらを拳を握りしめた門倉の腕が振り払おうとしたした瞬間、綾人が顔を真っ赤に染めて門倉の胸倉を掴んで詰め寄った。
「ぼ、僕と付き合って!門倉先輩っ!!」
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