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第46話

「先生!違うんです!俺らが勝手に・・・」 坂田が焦って綾人を庇おうと前へ出たとき、岩川が再び一喝した。 「黙れ!」 その声にびくんっと、体を跳ねさせる綾人の腕を掴んで岩川は力尽くでソファから綾人を立ち上がらせた。 「貴様というやつは、他の奴に罪を擦りつけるなんて本当に性根がなってないな!来いっ!鍛え直してやる!!」 「やっ!」 引き摺るように綾人を連れて行こうとするのを坂田が必死に岩川の腕へしがみ付く。 「マジで違うんだって!白木は何も悪くなくてっ!!」 「うるさいぞ、坂田!・・・通信簿に響くぞ?」 最後の方は坂田にしか聞こえないようにそっと耳打ちする岩田に坂田は言葉を詰まらせ、しがみ付いた手を離してしまった。 それを鼻で笑うと、岩川は綾人へ視線を下ろし、付いて来いと乱暴に連れ去っていった。 「綾ちゃん、元気ないね〜?どうかした?」 夕刻、綾人は体育教師の岩川に解放されてから門倉の部屋へと向かった。 談話室から体育館へ連れ去られた綾人は竹刀を構える岩川を前に永遠正座を強いられていた。 少しでも身じろぐものならば、床をバシンっと竹刀で叩かれ、姿勢を戻さないと打つぞと脅され続けるという拷問を二時間近く、身に覚えのない説教と共に受けた。 その間、艶めかしい視線を向けられ、自分の配下に下れだの、自分のことを尊敬しろだのと、訳のわからない暗示をかけてくる岩川にグッタリした。 「綾?本当にどうしたの?顔色悪いよ?」 ソファにてカルピスを飲んでいた綾人がぼんやりとしていることに真剣に心配し始めた門倉に我に返った綾人はぶんぶん首を横へと振った。 「いえ!大丈夫です。今日、宿題いっぱいしたからちょっと疲れただけ・・・」 憂いを消し去るような笑顔を見せると、門倉は安心したように頭を撫でてきた。 相手は教師 流石の門倉も太刀打ちは出来ないだろう・・・ 卒業後は自分との関係を清算したいとも考える男だ。危険な綱渡りはしないはず。 それなら、この件は頼れないと綾人は口を噤んだ。 岩川の視線はいつも自分を性的な目で見ている。 それは、他の者たちから感じる視線と同じだから間違いはない。だから、もっと気を引き締めないと・・・ いつも難癖ををつけてくるあの男に強行手段を取られると厄介だ。 なんとかこれ以上、目を付けられぬようにと綾人は拳を握り締めた。

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