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第68話

「帰りたいぃぃいっーーー!!」 金曜日の夜、気を失った自分を門倉は自室へと運んだ。 気がつくと同時に土曜日は朝から晩まで体を貪られ、日曜日の朝、帰りたいのに腰が痛くて帰れない天使はベッドの上で自分の部屋へ帰りたいと嘆き続けた。 「帰ってもいいけど、襲われないようにだけ気をつけてね」 金曜の夜に綾人ファンを煽りに煽った門倉は心配心から忠告する。 気を失う綾人を抱えて部屋へ戻る途中、目の色を変えて常軌を逸する輩に危機感を持ったからだ。 元々、綾人の体を労って好き勝手するのは金曜の夜と土曜日のみと自分の中で決めていた。 なので、日曜日は綾人の自由にすればいいと思っていたが、腰が痛くて動けないなら好都合だと門倉は生徒会の仕事の資料から顔を上げた。 「綾ちゃん、もうお昼だし一緒にご飯食べよう。運ばせるから」 携帯電話片手に誘ってくる門倉に綾人は戸惑いを見せる。 また逃げられてはと金曜から食事や睡眠そっちのけで綾人を犯しまくっていたこともあり、二人はろくに食事をしていなかった。なので、綾人も空腹感はある。 「お肉?魚?それともパスタとかがいい?」 好きなものを用意するよと微笑む門倉に綾人はそれじゃあと希望を口にした。 「オムライス」 「え?」 「だめ?そしたら、カレーがいいな〜」 嬉しそうに笑う綾人に門倉は面食らった。 フランス料理だのイタリアンだのと我儘を吹っかけてくると思ったのに、言われた内容がオムライスやカレーといったお子様料理に唖然とした。 「・・・もっと我儘言っていいよ?」 遠慮しているのかと安心させるように笑顔で催促すると、無邪気な笑みで付け足された。 「わーい!じゃあ、イチゴパフェも食べたい!」 「・・・・・そう。カレーとイチゴパフェね」 遠慮とかではなく、本心から望んでいそうな綾人の様子に門倉は目を点にしながら了承した。 「美味しい〜!これ、寮のカレー?」 フルーティーな甘みと数種類もののスパイスによる絶妙な辛さのカレーに綾人は足をパタパタさせながら喜んだ。 まるで小さな子供のような仕草に可愛いなと門倉の顔に笑みが浮かぶ。 「俺の実家の料理長が作ったんだよ。朝食や土日の食事は基本的にここに運んで貰ってるんだ」 「へぇ〜!門倉先輩ってやっぱり凄いお坊ちゃんなんですね〜」 もぐもぐカレーライスを食べながら感心したように言う綾人に門倉が苦笑した。 「こっちのナンも食べてみる?」 「ナンって、そのパン?」 プレーンのものからチーズが挟まれたもの、胡麻が練りこまれたり、バターをふんだんに使った数種類のナンを門倉が指差した。 パンよりライス派の綾人だが、物珍しさから勧められたプレーンのナンを手に取って一口サイズに切り取り、カレーを付けて、口に放り込んだ。 「美味しい!僕、ナンって初めて食べました!ご飯もいいけど、ナンもいいですね」 にこにこ笑う綾人に先程から門倉の心臓がうるさい。 あまり笑顔を見せてもらえず、こんな風に会話して食事をするのが初めてなだけあり、実は食事に誘うのも緊張していた。 それが、こうも嬉しそうな顔を見せられては、釘付けにならない方がおかしい。 「綾ちゃん、好きな食べ物教えて?」 「え?」 「これから、金曜の夜と土曜日は綾の好きなもの用意するから」 天使の笑顔がそれで拝めるならお安い御用だと門倉は食事をする手を止め、テーブルの上に頬杖をついた。

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