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第76話
土曜日、綾人は門倉の宣言通り気が狂うかと思うほど好き放題体を弄ばれた。
以前から使おうと用意していたらしい沢山のヤラシイ玩具まで持ち出しては綾人の反応を楽しむ門倉に自身がオモチャなのを再確認する。
土曜日の夕飯も一緒に食べようと誘われたのだが、自分でも驚くほどの吐き気と眩暈。そして頭痛に食事を断って部屋をあとにした。
「ぐっ・・・、おぇっ・・・カッはぁ・・ぁ・・」
部屋へ着くなりトイレへ駆け込み、綾人は胃の中のものを吐き出した。
目の前が白く霞、意識が朦朧とする。
気を失うと思った瞬間、意識はプツリと途切れた。
「・・・っ」
トイレで目を覚ますと、綾人は再び嘔吐した。
頭痛も再開し、嫌なあぶら汗がダラダラと流れる。
「苦しっ・・・、はぁっ、くぅ・・」
涙を流して胸元を押さえ、自分の体調不良を振り返った。
心当たりはある。
例の薬だ。
金曜日、土曜日と門倉から与えられる快楽の恐怖から逃れるため、綾人は2日続けて薬を飲んでいた。
副作用が強く、使用回数は週に一度と聞いていたが連日の服用に体が悲鳴を上げているのだ。
頭の中が苦痛一色に染まり、胃液と共に涙が込み上がった。
「オエッっ・・・ゔぅぁ・・」
もう、幾度となく繰り返される嘔吐に綾人の胃からはモノではなく胃液だけが吐き続けられた。
酷い頭痛と吐き気、そしてそれに耐えられなくなるとそのまま意識を手放す。
そして、目が覚めると同じように吐いては頭痛に襲われた。
繰り返されるこの地獄は日曜日の夜まで続き、綾人の肉体のみならず精神もボロボロにしていった。
汗と汚物塗れの体をシャワーで流し、飲むことも食べることもままならない綾人はおぼつかない足取りでベッドへと横たわった。
心身共に疲れ切った綾人はそのまま瞼を落とすと眠りについた。
月曜日、まだ体は怠かったが副作用は消え失せていて安堵する。
「日曜日、あれさえ耐えたらいいのか・・・」
近くに置いてあった薬箱を見つめてそう呟く綾人はあの薬を飲むのをやめる気がなく、金曜日の夜までに体調を整えることを考えた。
胃の中は空っぽで苦しいぐらいの空腹感に襲われた。
朝ごはんが待ち遠しいが、空っぽの胃にガッついて普通食を食べると体に障る知識を持っている綾人は冷蔵庫の中から大好きなイチゴを取り出す。
一口、イチゴを含むと甘酸っぱい味に笑みがこぼれた。
「美味しい・・・」
冷蔵庫にある全てのイチゴを平らげると、元気が出たと気持ちも浮上した。
制服に着替えて今日から週末までの安息日に心が軽くなる。
門倉と契約を結んでから綾人は月曜日が一番好きになっている。
「今日も頑張ろう!」
軽やかな言動で綾人は準備を整えると、部屋をあとにした。
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