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第77話

「おはよう、白木」 「今日も可愛いな〜」 「本当、天使!」 学食にて、スープとフルーツを中心に朝食をとっていたら綾人はいつも通り、親衛隊に囲まれた。 夏が近づいてきて、薄着になるにつれ親衛隊達の視線もより一層艶かしいものとなる。 デレデレしながら自分の真横に腰をかけては朝からハンバーグだのローストビーフだのとボリューム満点の食事をする同級生をジッと見つめた。 「朝からお肉食べたら大きくなるの?」 自分の体が平均より華奢で小さいことは分かっていた。食は細いが好き嫌いなく、ものは食べる。それなのに何故成長が遅いのだろうと悩みを吐露する綾人に親衛隊は詰め寄ってきた。 「白木はこのまんまでいいんだよ!」 「そうそう!そのまんまの可愛い姿でいてくれよ!」 「本当だ!大きくなんてならなくていい!!」 皆のあまりの身勝手な願いにムッと顔を歪めたとき、スッと自分の横を通り過ぎる二つの影に目が奪われた。 同じクラスの西條ざくろと二年の九流猛だ。 カリスマ性が強い二人からは眩いオーラを感じた。 ギスギスした雰囲気で主に九流が怒っている姿をよく目撃していたが、今日はお互いがどんよりと暗い。 そんな所に、自分の名ばかりの恋人の門倉が加わった。 絵になる三人に周りは否応無しに騒つき始めた。自分も視線を逸らしたいのに逸らすことがままならないほどの引力に惹きつけられた。 生徒会会長の王子様の容姿で柔和な笑顔と並外れた万能な能力を誇る門倉。 生徒会副会長にして、門倉の親友。強面で無愛想だが影では九流の表に出ぬ魅力に絶大な人気を呼んでいた。 そして、同じクラスの西條ざくろ。見るものを虜にするあの漆黒の瞳に見つめられると頭の芯がぼーっとした。 綾人の中では心の友的存在となっていた。 そんな三人を見つめる中、門倉と九流に囲まれて困った顔をするざくろを見つめる。 門倉先輩も西條ざくろが本命なのかな? 親友の恋路を邪魔しないように僕で我慢してる? 自分には見せない楽しそうに話す門倉の姿にどことなく暗い気持ちが陰った。 完全な女顔の自分もせめて、可愛いよりざくろのように綺麗よりなら迫力もあったのにと気持ちが沈む。 「九流先輩、西條に本気で熱あげてるよな〜」 「西條も満更じゃねーんだろ?商売やめたっていうし」 「九流先輩が専属なだけだろ?」 ブツブツとざくろへ意味深な目を向けて話し込む親衛隊に綾人が首を傾げた。 「商売?」 言ってる意味が分からなくて親衛隊達を見上げると、信じられない言葉が返ってきた。 「西條、ウリやってるんだよ。一回十万!すげぇ、人気らしいよ」

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