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第93話

「綾・・・」 揺れる瞳を逸らさぬよう注意する綾人の頬を門倉は両手で包むと、互いの鼻の頭同士を擦り合わせてきた。 熱い吐息が触れて、恥ずかしい 「キスしていい?」 焦れると悩めかしい声で聞かれ、目を逸らしそうになる。 「・・・だ、めっ・・」 蚊の鳴くような声で答えると、門倉の指先が頬を擽った。 「ッん!」 肩を竦めて身を捩ったら、優しい笑顔が目の前に広がった。 綺麗過ぎる顔をいつまでも見つめていたい。 だけど、自分にはあまりにも眩しすぎて・・・ 「はぁ・・・っんぅ・・」 ゆっくりと瞬きをしたら、目を逸らしたと判断されたのか、するりと舌を差し込ませる濃厚なキスをされてた。 「・・・可愛い。もっと口、開いて」 そっと、髪を掻き上げられて綾人は門倉の舌を押し返そうとするが、その抵抗も経験値の高い舌技で絡め取られてしまう。 「はぁふっ・・・っ、んンッ・・やっ、くるしっ・・」 腕を突っ張り、逃げようと体を捩ったとき、門倉の手が服の裾に入ってきた。 「やっ、やっ、やっ!!!」 焦ったように足でベッドを蹴っては上へ逃げようとしたが、体に体重を掛けられてままならない。 「逃げたね」 耳元で囁かれ、潤んでいた瞳に恐怖の色が差し入んだ。 嫌だと本気で暴れそうになる華奢な体を抱きしめると、門倉は綾人のシャツを捲り上げ、ベルトを外してズボンの中へと手を差し込んだ。 「イやぁ!!」 中心へ伸ばされた門倉の手を押さえつけて叫ぶと、今度は捲られたシャツの間から覗くピンクの飾りへ舌を這わされる。 「んんっ!」 乳首を舐めあげ、啄むように唇で吸い上げられてじわじわと身体中に熱が篭り始めた。 「ヤッ・・・っ、ゥンッ・・」 手の中の中心のものもやわやわと揉み込まれ、頭がボーッとしてくる。 強張る体なのに、何故か力が入らなくて綾人は自分の体に困惑した。 「だんだん硬くなってきた。気持ちいい?」 手の中のものを言われ、綾人は恥ずかしくてギュッと目を閉じて顔を逸らす。 「可愛い・・・。綾、好きだよ。もう一度、俺と付き合って」 薄っすら瞳を開くと、至近距離で見つめて告げられ、目眩が起こった。 こんなことされて、こんな風に告白されたら嫌でも意識してしまう。 好きじゃないのに、心臓は痛いぐらい鳴り響いて頭がグラグラした。 「お願い・・・。綾ちゃん。俺のこと、好きになってよ」 懇願するように体を擦り寄せてくる門倉に言葉が詰まった。 あの門倉 優一がここまでへりくだるのかと疑ってしまう。よく似た偽物ではないのかと錯覚を侵しそうだ。 「ぼ、僕は・・・、僕の言うこと聞いてくれる人じゃなきゃやだ・・・」 顔を逸らし、だから無理だと伝えたとき、真面目な声が降ってきた。 「なんでも言うこと聞く。約束するよ。お前の為なら・・・」 一拍おいて綾人は逸らした顔を戻され、強い瞳に見据えられた。 「プライドなんて捨ててやる」

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