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第95話

「もしもし!」 心なしか弾むような声が綾人から出た。 相手はその声に呼応するように嬉しそうに返事を返してきた。 『もしもし!白木⁉︎』 「うん!」 『もう、寮に帰ってる?もう少し後に電話しようか悩んだんだけど、白木の声が聞きたくて』 屈託のない明るい声は昔と変わらない桜田で、綾人は安心感を持つ。 「あのね、僕も桜田とまた話したいって思ってたんだ!だから、今日会えて凄い嬉しかった」 その言葉に桜田のテンションは上がって、二人の話は盛り上がっていった。 互いの近況を聞きあったり、中学時代の話やその他の友人の話題になったりと、話が尽きることはない。そんな感じに嬉々として桜田との会話を楽しんでいた時、隣で横になっていた門倉の腕がスッと伸びてきた。 少しウエーブがかった自分の蜂蜜色の髪を指先に巻いて弄びだす。 視線を向けると、その表情は少し寂しそうで、何となく胸が痛んだ。 『・・・白木?』 「え?・・・あ、ごめん!」 一瞬、上の空になってしまい話のテンポがズレてしまった。 その後も桜田は話を進めてきたが、どうにも門倉が気にかかってしまい、綾人は謝った。 「あ、あの、ごめん!また、掛け直していいかな?」 綾人がそう言うと桜田は一拍おいて緊張感のある声で聞いてきた。 『・・・今度、会えない?』 その問いに、勿論!と、答えようと口を開いた瞬間、門倉の手が髪から携帯電話へ移動して、電話を取り上げられた。 「それは出来ない。これ以上、こいつにちょっかい出すな」 低く冷たい声音で告げると、門倉はブチっと電話を切ってしまった。 「な、な、何してんの‼︎?」 わなわな震えながら、勝手に電話に出て切ったことを責めるものの、門倉は眉を寄せて電話をベッドの下へと放り投げた。 「それはこっちの台詞。なに、他の男と遊びに行こうとしてるわけ?流石にそれは許さないから」 グイッと、腕を押さえつけられベッドの上に張り付けにされる。 怒っているとしか言えない門倉の雰囲気に綾人は眉間に皺を寄せて吠えた。 「離して!僕の上から退いてよ!!だいたい、先輩にそんな指図される覚えない!別に許してもらう必要もない!!」 「・・・・・」 「僕はあんたのこと嫌い!好きなんかじゃない!!だから、もう付き纏わないで!やり直すこともありえなっ・・・ぅええ‼︎?」 黙る門倉に綾人が畳み掛けるように拒絶の言葉を投げつけたとき、予期せぬ事態に綾人は言葉を止めた。 「ちょ・・・っ、ちょ、ちょっとっ!!な、泣いてるの⁉︎嘘でしょ‼︎?なんで‼︎?」 あり得ないと、声を荒げて目を見開き、綾人は門倉を見上げた。 ポタポタと自分の頬を打つ雫は明らかに門倉の瞳から落ちるもので、言葉を失う。 「俺のこと、振るの?」 「・・・え、・・っと・・」 「こんなに好きなのに?」 「・・・それは・・」 「チャンスが欲しい。お願い、付き合って?絶対、大事にするから・・・」 涙を流して、必死に訴えてくる門倉に綾人は何かを言おうと口を開くものの、言葉は出なくて閉ざすの繰り返しを行っていた。 「綾・・・、苦しいんだ。俺のこと、受け止めてよ。すごく・・・、すごく好きなんだ・・」 綾人の頬を撫で上げ、門倉は吐息で囁き、切に願った。 「頼むよ・・・。ちゃんと、綾の言うこと聞くから・・・」

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