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第112話
あの家へ戻ることを考えると吐き気と頭痛が酷い。
でも、帰省シーズンは絶対に退寮せざる得ないのも現実だ。
今回は有難いことに三上一家が国外旅行へと行くことに綾人は救われたと安堵の息を吐いた。
朝から夜までネットカフェか何処かで時間を潰して、寝にだけ帰ろう。
あの人達がいなくても家へはいたくはない。
だけど、深夜に徘徊するのは正直怖いのも事実だった。
迫り来る帰省日にかなり憂鬱だったのだが、とりあえず希望の光が差して綾人は胸を撫で下ろした。
「あ〜や〜ちゃん!」
夕食時、寮の食堂へ向かっている所を門倉に肩を叩かれて綾人は振り向きざま、明らかに嫌そうな顔をした。
「あ!その顔、傷付くな〜」
満面の笑顔で馴れ馴れしくも自分の頬をプニプニ指で引っ張ってくる門倉に綾人は止めてと、その手を振り払った。
「何ですか?」
「ん?一緒にご飯食べない?」
「食べません。あんたの部屋に行くとろくなこと起こんないし」
苦々しげに毒吐く綾人に門倉がふふっとほくそ笑んだ。
「ミルク空っぽになるまで泣いちゃうもんね〜」
ニヤニヤ笑って情事を揶揄してくる門倉に綾人が顔を赤くして睨みつけた。
「綾ちゃん、来週から帰省でしょ?帰省時は会える?」
門倉を無視することを決め込み、スタスタ食堂への道を綾人は真っ直ぐ歩いた。
それを後ろから追いかけるように門倉が続く。
「綾ちゃん、綾ちゃん」
返事をしてくれない嫌だと構い倒してくる門倉に綾人はイライラしてきた。
ここ最近、昼は部屋を出ると生徒達から気持ちの悪い視線に侵されてはセクハラを受ける。夜は夜で門倉からのしつこくもド変態なプレイに付き合わされ来週からは親戚の家へと行かねばならないのだ。
それに加えて、速水心療内科からの薬が切れていた。
心の負荷がかかり過ぎてしんどい。
頭がごちゃごちゃで、一人になりたかった。
「うるさーーーいっ!あんたといると疲れるの!僕に構わないで!!大体、金曜と土曜だけって約束でしょ!?」
大きな声をあげて威嚇してくる綾人に門倉は別段引く様子もなく、厚かましくも手を握ってきては王子の笑みを浮かべて甘く囁いた。
「金曜と土曜だけじゃ足りないくらい、綾ちゃんに夢中ってそろそろ分かってよ」
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