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第114話
いつもの門倉ならぬ雰囲気にも驚かされたのに、その発せられた言葉に綾人は目を見開いた。
どういう意味かが分からなくて固まっていたら、A4判の茶封筒を差し出される。
「・・・・なに?」
不審な目を向けながら恐る恐るその封筒を受け取り、中を見た。
すると、そこには『白木綾人の調査書』と書かれた数枚の紙が出てきた。
青ざめて顔を上げ、門倉を見る。
門倉は少しバツが悪そうな顔で謝ってきた。
「綾が気になって少し調べた。ごめん・・・」
その言葉に綾人は怒りで目の前を真っ赤に染めた。
「あり得ない!誰の許可とってこんなこと・・・」
「・・・・」
言いたいことは沢山ある
沢山あるのに、手の中の書類が気になって綾人は罵倒よりも紙へと目を向けた。
自分のことをどこまで調べたんだろうか
どこまで知られた?
親戚の家へ帰らなくていいと言うならば自分がいやらしい行いをさせられていたことは?
心療内科の速水のことも?
親のことは?
あの事件も・・・・・?
そして、
本当の僕のことも・・・・
気が動転し過ぎて、頭の中が混乱していく。
心が乱れて息苦しい。
それと同時に強烈な吐き気に見舞われて綾人は口元を押さえて先程の夕食を吐き出してしまった。
極度のプレッシャーに体が震える。
戻したにも限らず、吐き気は治らなくて綾人は口元を覆いながら地面に座り込んで数をかぞえ始めた。
「・・・に、さん・・・ご・・・ろく・・」
青ざめては冷や汗を流し、震えながらも冷静さを取り戻そうと必死に数を数えては縮こまる綾人の異常さに門倉は驚いた。
「綾・・・」
「ぃ、いやァアーーーーーッ!!!」
綾人に手を差し伸べようとした瞬間、その手を怯えて綾人は頭を抱えて拒んで叫ぶ。
蜂蜜色の瞳は恐怖で支配されていて、自分を見ているのに一枚フィルターを掛けたような感覚で自分の姿を映してくれていないことを感じ取った。
正直、この状況下に門倉自身驚きが隠せず、表には出すことはなかったが内心、焦りに焦っていた。
収拾のつけ方が見出せず、頭の中にどうすればいいかを巡らせたとき、あの心療内科の速水を思い出した。
そして、門倉は携帯電話を取り出すとすぐ様、速水へと電話をかけた。
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