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第115話
白木 綾人
7月24日生まれ
並外れた容姿を持ち、両親から多大な愛情を注がれて育った。
父は中小企業の経営者で仕事が出来る優しい人だった。
母は専業主婦で綾人に似た華やかな風貌の穏やかな女性だった。
優しい陽だまりの中にいるように大事に大事に育った綾人は人から好かれる見た目も中身も天使のような子供だった。
しかし、その容姿が災いして成長とともに不幸を招いた。
幼稚園時、母親の側を悪戯心で離れたときその愛らしい容姿に惑わされた輩に誘拐されそうになった。
それ以来、綾人は外出時は両親から離れなかった。
月日が流れて、小学校に上がった時にはその華やかさがまた災いを成した。
学校では羨ましい気持ちと妬ましい気持ちを持つクラスメイト達からイジメを受けた。
毎日泣いていた為、学校帰りに公園に寄って両親に心配かけないように気持ちを落ち着かせて帰宅していた。
そこで、一人の男に出会う。
加賀美 司 (かがみ つかさ)
茶色の髪に爽やかな笑顔のどこにでもいるような大学一年生でいつも落ち込む綾人を慰めては放課後遊んでくれていた。
学校であった嫌なことを聞いては励ましてくれて綾人にとっての良き理解者だった。
ある日、その加賀美のことを両親に話した小学5年のとき、綾人は加賀美と会うことを禁止された。
両親からのいきなりの禁止に疑問と反発心が生まれた。
理由を聞いても教えてくれなくて綾人は学校で再び虐めにあった日、親を罵倒して加賀美を求めて家を飛び出した。
必死の形相で自分を追いかけてくる両親を横目に小さな交差点に差し掛かった時、黒い一台の車が自分目掛けて突進してきて綾人は足を止めて固まった。
堅く目を瞑って身を小さくした時、思い切り突き飛ばされて地面へ倒れ込み、目を開けたら自分の代わりに車に轢かれた血塗れの母親が倒れていた。
車は停車して中から出てきたのは自分がよく知る加賀美で、綾人は母親を助けるよう頼んだ。
だが、加賀美はゆったり笑って手に持つ包丁をギラギラと見せつけ綾人へ近寄って呟いた。
「僕の可愛い小鳥ちゃん。僕が救ってあげるよ」
不可解な台詞にパニックに陥った時、父親の声が聞こえて綾人が目を向けたとき、振り翳された加賀美の包丁から父が自分を守るように包み込み、身を挺して守ってくれた。
父親の背中に加賀美は何度も刃を突き立て、その恐慌を幼い綾人は悲鳴を上げてただ見ていることしかできなかった。
加賀美は綾人のストーカーで、両親は綾人自身には言わなかったが多大な嫌がらせを数年に渡って受けていた。
白木家には綾人の隠し撮り写真も脅迫めいた手紙も毎日のように送られていた。
綾人の身を案じた両親は加賀美の名前が我が子から出た事に驚愕し、かつてない程の加賀美へ対する拒絶の言葉で綾人を追い詰めた結果がこれだった。
両親を亡くし、精神状態が崩れた綾人は、はやみ心療内科へ掛かった。
警察から全ての経緯を聞いて綾人の心を癒す努力を速水はした。
だけど、その努力も虚しくトラウマはとてつもなく大きくて綾人の精神はどれほどの年月をかけても小学5年生で止まってしまったのだ。
自覚はあるようで大人になろうと足掻く綾人は多大なストレスを感じると頭痛、吐き気、目眩を起こし、過呼吸に陥る。
それらのストレスを少しでも和らげるように速水は精神安定剤を処方していた。
心の痛みが分かるから人の気持ちに機敏で、自分の秘密を守る為に自身をさらけ出せない。
幼い言動を指摘されたら過去を暴かれる気がして恐怖に綾人は大人になろうと足掻いては自分を律して行動を弁えていた。
幼い精神は小学5年生から門倉との関係でかなりの成長を遂げていた。
それがどれほどの効果があったのか分からない
分からないが、この経験は今の綾人には抱えきれないものへと変わっていた。
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