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第118話
「どうしよう・・・」
帰りたくない・・・
速水の所を出て、寮へ帰らなければならないのだが綾人の足取りは重く、寮付近の小さな公園にて立ち寄っていた。
ベンチに腰掛けて握り締めた両手の拳を額へ当てると綾人は重い溜息を吐いた。
速水へ門倉に何処まで自分のことを明かしたのか聞いたのだが、自分へ言ったように小学生の精神年齢なこと以外話していないと伝えられた。
あとは綾人自身から聞くようにと言って帰したらしいのだ。
なので、寮へ戻ると門倉が自分を待っている可能性が高くて綾人は怖かった。
自分にこれ以上、踏み込んで欲しくない
好きだと言ってはくれるが、所詮最後は自分から離れていく人間だ
血の繋がりを持つ、あの三上家だってあの体たらく。
門倉にはこの高校生活のみの関係。
それ以上求めてはいないし、求めてはいけない。
体を繋げて守ってくれていることから気を許しかけていたことを反省した。
心をほだされてはいけない
だって、最後に泣きを見るのは自分だけなんて嫌だ
だから、好きになんてならない
一人がいい
また、お父さんやお母さんのように大切な人を失くすのは辛い
自分の心が保てないと綾人は震える手を強く握り締めた。
細く、長く息を吐いて心を落ち着かせると綾人は閉じていた瞳をそっと開いて心の声を小さな音にする。
「大切なものなんて僕には必要ない」
決意を口にすると同時に綾人は椅子から立ち上がり、門倉の待つ寮へと戻った。
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