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第121話
あ〜・・・
僕ってほんと、居場所ない奴・・・
帰る家もなければ、時間潰す場所もない。
虚しくて悲しくて心が塞ぐ・・・
この一週間をたとえ乗り切ったとしても寮へ戻ればまた、門倉がいる。
2年も契約なのだ。
落ちていく気持ちを切り替えろと自分に言い聞かせながら綾人はポツポツと道を歩いた。
電車に乗れば、30分程で着く親戚の家が嫌で8月の灼熱の炎天下の中を2時間掛けて徒歩で帰宅した。
三上家の前に立つや、合鍵を取り出す。
カチャリと音を立てて施錠を解くものの、中へ入りたくなくて扉を開くのを躊躇していたら、中からガチャリと、戸を開かれた。
「えっ!!」
「よぉ!綾人!」
中から出てきたのは同じ年で従兄弟の広樹(ひろき)だった。
「・・・え、うそっ・・」
家族旅行の為、この家には誰もいないと聞かされていたのにまさかの従兄弟の登場に綾人は驚きに身を固くする。
恐怖のあまり一歩、足が後退した。
それを見た宏樹は逃がすものかと綾人の腕を掴んで家の中へと引き摺り込む。
「今日から一週間、俺と二人きりだぞ。父さん達には二人で旅行へ行かせたんだ」
ニヤリと下卑た笑みを見せる宏樹に頭の中がパニックに陥る。
「ぼ、僕、それなら・・・」
手を振り払って家を出て行こうとしたとき、宏樹の不機嫌な声が大きく部屋中に轟いた。
「あー!そうっ!!それなら、あの写真!!!ネットに晒そうかなぁ〜」
その一言に綾人はびくんっと体を竦めて足を止めた。
青ざめる顔をゆっくりと振り返ると宏樹は腕を組んで綾人を足の先から頭のてっぺんまで舐めるように見上げた。
「相変わらず、お前可愛いよな・・・。来いよ。大人しくしてたら優しくしてやるから」
ククッと嘲笑うような顔で笑って宏樹は部屋の奥へと進んでいった。
そんな従兄弟の背を綾人は目の前を真っ暗にさせ、息苦しさに苛まれながらも一歩ずつ重い足を前へと進めた。
どうしよう・・・
逃げなきゃ駄目なのに頭の中が真っ白で考えがまとまらない
助けて・・・
助けて、助けて、助けてっ・・・
目をキツく閉じて念じるように助けを求めた。
怖くて、頭が痛い
眩暈もして吐き気もある
何より、息が苦しかった
歪む視界の中、綾人は歩く足を止めて壁へと寄りかかり、ポケットに入れていた携帯電話を握り締める。
思う相手はただ一人・・・・
「門倉先輩・・・」
ポツリと縋るように名前を呼ぶものの、首を左右へ小さく振ってその考えを改めた。
校外での契約は入っていない・・・
頼っては駄目だと、自分に言い聞かせると綾人は携帯電話を直した。
「綾人!早く来いっ!!」
そんなことをしていたら、来るのが遅いと従兄弟の怒号が放たれた。
「は、はいっ!!」
綾人は身を竦め、出来るだけ大きな声で返事をすると、これ以上宏樹の機嫌が悪くならないようにとリビングへ走って向かった。
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