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第126話
「や、止めてっ!やめて下さいっ!!」
綾人は目の色を変えて宏樹の足へ抱き着くように縋り付き、土下座しながら請いた。
「他のことなら何でもします!ご飯も作るし、掃除もする!!買い物もちゃんと行くし、な、殴ってストレス発散してもいい!!!」
だから、許してと涙を流して懇願するも宏樹の考えは変わらないのかビデオカメラを弄っては準備に勤しむだけだった。
「で、出て行く!!」
立ち上がり、逃げようとした瞬間、宏樹の足に腹部を蹴り上げられた。
「うっ!!」
痛みに体を丸めて呼吸が止まる。
それと同時に心と体が完全なる恐怖に支配されたのを感じとった。
駄目だ・・・
逃げられない
本能的に理解してしまった綾人は地べたに倒れたまま脱力した。
「やっと観念して大人しくなったか?余計な手間掛けさせんなよ」
綾人から抵抗が薄れて気を良くした宏樹が嬉々として更なる脅しをかけてきた。
「いい子にしてたら、あの写真も今日撮る動画も俺の趣味で終わらせといてやるよ」
アハハとこの上なく楽しそうに笑う従兄弟に綾人は両手で耳を塞いで瞳を閉じ、体を小さく丸めて涙を流した。
数分後、家のインターホンが鳴って宏樹は玄関へと赴いた。
綾人は色を映さない瞳で体を起こしたとき、ズボンのポケットに入れていた携帯電話が落ちて目を向けた。
・・・・・ダメ元で頼んでみようか
甘い期待が胸に湧く
いや、この期待を壊したかったのかもしれない
帰ってきてかずっと頭の片隅で助けを求めていた。
だから・・・
完膚なきまで突き放して欲しい
自分には助けてくれる人も頼る相手もいないことをとことん思い知りさえすれば、今から行われる従兄弟の興事にも腹をくくれるかもしれないと思えた。
綾人は携帯電話を持つと、震える手で、指先である男の名前をタップした。
数回後のコール音のあと、あの爽やかで涼し気な耳触りの良い声が聞こえた。
綾人はその声に息を呑んだあと、震える涙声でその男の名前を口にした。
「門倉せんぱ・・・、たすけてっ・・」
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