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第134話

「・・・・親戚から」 門倉の服の裾を力一杯握りしめ、綾人は絞り出すような声で言った。 「・・・・嫌なことされました」 ぎゅーっと、瞳を閉じて怯える綾人に門倉は抱きしめ、先をただす。 「どんなこと?ゆっくりでいいから言って・・・」 しがみ付くように抱き着いてくる綾人はボロボロ涙を流しながら言葉を紡いでいった。 「ふ、服・・・脱がされたりしたぁ・・・」 「うん」 「体も・・・触られて・・っ・・・」 「うん」 「・・・・写真・・っ・・ぅゔ〜・・・」 もう、話したくないと門倉の肩へ額を押し付け声を殺して泣く綾人へあやすように瞼へキスを落とした。 「頑張れ」 どうあっても許してくれない門倉に綾人はポカポカ拳で殴りつける。 「言いたくないっ!なんで、先輩に言わなきゃだめなの!?もう、放っておいてよ!」 火が付いたように怒鳴り出し、暴れ始めた綾人を門倉は力づくで押さえつけた。 「離してっ!離してぇ!!」 大声で叫ぶ綾人に門倉が乱れぬ一定の感情と優しい声で告げる。 「言うまで許さないって言っただろ。俺の性格知ってるよね?」 静かに問われ、綾人は止めることが出来ない涙を流す瞳を向けた。 『有言実行』 門倉の座右の銘でもあるこの面倒で厄介な性格はいつも綾人を困らせていた。 自分の秘密を自分の口から聞き出すまで、恐らく泣いても叫んでも、怒っても門倉は許さないだろう。 追い詰められた綾人はぶわっと涙を再び溢れさせ、門倉の胸へ顔を沈めた。 「っ・・・ゔぅ・・ひっ・・くぅ・・・っ」 嗚咽を零しながら泣く綾人をしっかり抱きしめて肩をさすると綾人は門倉の背中へ腕を回してか細い声で言った。 「・・・写真、撮られたぁ・・・・」 「・・・うん」 「ビ、ビデオも・・・撮られて・・・っ・・」 「うん」 「今回は・・・い、淫乱な僕をビデオで撮るって・・・・。友達まで呼ばれて、怖くてっ・・・助けて欲しくて、先輩に電話してしまいました・・・っ・・」 迷惑かけてごめんなさいと何度も謝る綾人に門倉は迷惑などしていないと、囁きながら抱きしめてやる。 そして、この件に対して初めて知った事実に門倉の瞳の色が鈍く光った。 泣きじゃくる綾人の口からは出てはいないが、これだけのことをしているのだ、調べ上げれば親戚連中の綾人へ対する卑劣な犯行は更に出てくるであろう。 この悪人たちをどうしてくれようかと、門倉の中の怒りが暴れ出しそうになる。 しかし、その心の内を今、綾人の前で晒すわけにもいかず門倉は綾人を宥めることに全力を注いだ。 「辛かったね・・・。もう、あんな家帰らなくていいから」 キツく体を抱きしめ、言い聞かせるように囁くと綾人もコクコク頷いた。 まだまだ聞きたいことはあったが綾人の状態からここまでかと門倉は口を噤んだ。 今からは綾人の心と身体を優先させるべきと判断したのだ。 かなりの勇気を振り絞ったであろう綾人へちゃんと自分のことを自分の口で告げたことを褒めてやる。 「・・・綾、よく頑張ったね。賢いよ。本当にありがとう」 頭を撫でて、キスの雨を降らせると何度も感謝の言葉を掛けた。 顔を赤くした綾人は恥ずかしそうに胸の中へとうずくまってきた。

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