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第143話

「今日、イチゴのシャーベット用意してるよ。部屋に戻ったら一緒に食べよう」 学食で向かい合わせに座って夕飯のステーキを食べながら門倉が言うと、綾人は視線を落として力なく笑った。 「え〜っと・・・、今日から僕、自分の部屋に戻ろうかなって・・」 付け合せのポテトをフォークに突き刺し、口籠りながら言う綾人に門倉が怪訝な顔をする。 「綾ちゃん、なんか変だよ?どうしたわけ?俺に怒ってんの?」 ナイフとフォークを置いて身を乗り出し、本腰入れて話しを切り出してくる門倉に綾人はブンブン首を横へと振った。 「そうじゃなくて!そもそも、門倉先輩の部屋に入り浸ってることがおかしいんです。僕にはちゃんと部屋があるし、元々のルールの金曜日と土曜日だけ会いましょう?」 にっこりと完璧な笑顔を作って言うと、門倉は不機嫌そうに視線を逸らした。 怒らせたくはなくて、内心焦るものの綾人はそれを表には出さずに明るく振る舞う。 「門倉先輩だって、一人の時間欲しいでしょ?ずっと僕がいてリラックス出来ないと辛いと思うんです」 ニコニコ笑ってポテトを頬張り、綾人はツキツキ痛む胸が鬱陶しくていつも以上に饒舌になった。 「先輩は寮長の仕事もあるし、人気者だから!僕が独占してたら申し訳ないないもん」 あははと、笑ってご飯を口にかき込むと門倉は机に頬杖をついてボヤいた。 「恋人なんだから、独占して何が悪いわけ?」 その言葉に心臓がドクンッと飛び上がる。 嬉しさと切なさが入り混じり、一瞬息が止まった。 「・・・ん。でも・・・・」 門倉の恋人はきっと、沢山いる・・・・ 喉まで出かかった言葉をご飯と共に飲み込んだとき、目の前に昼間、門倉とキスをしていた男子生徒を発見してしまった。 「・・・・っ」 見たくないのに目が反らせれずにいたら、知らず内に口が開いていた。 「キス・・・」 「え?」 門倉の聞き返してくる声に我に返った綾人はナイフとフォークを下ろして、笑顔で声を張った。 「あー!なんか、お腹いっぱい!!ご馳走様でした!」 二人を視界に入れたくなくて、半分以上残る夕飯を切り上げる綾人は席を立った。 「綾?ちょっと、どうしたの?」 腕を掴んで様子が明らかにおかしい綾人に門倉が聞いた。だが、綾人はその腕を拒むように思い切り振り払うと自分でも驚くほどの大きな声で門倉を怒鳴りつけた。 「僕に触らないで!」 その声に食堂中の生徒達の視線が集まる。 驚くほどにヒステリックな綾人に頭を悩ませると、門倉は綾人の精神を考慮して渋々、分かったと溜息を吐いて手を引いた。 安堵と共に、追いかけようとしてくれない門倉の態度に寂しさが募った。 綾人はこれもまた自分のエゴだと考えを改める。グッと拳を握りしめ、詰めていた息を吐くと門倉を残して一人で学食をあとにした。

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