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第147話
「ねぇ、九流先輩と喧嘩とかする?」
自分が今、門倉と喧嘩をしているのかもいまいち分からないが、仲直りの仕方はもっと分からなくて綾人は相談がてら聞いてみた。
「えっと・・・、喧嘩っていうか俺が悪くてよく怒らせちゃうかな」
シュンっと肩を落として申し訳なさそうに言うざくろの謙虚さに綾人は感心する。
「・・・九流先輩って嫉妬深そうだよね。今日、僕が門倉先輩みたいに他の人を優先したら九流先輩どうする?怒る?呆れる?それとも無頓着?」
先ほどの門倉の対応のことを言ってるのか、綾人の口ごもる質問にざくろは腕を組んで考えた。
「・・・多分、怒ると思う」
最近は妹にすら構い過ぎだと怒ってたほどなので、怒鳴り散らされるだろうなとざくろは怯えた。
その返答を聞いた綾人は何処か元気を失い、今度はざくろが質問をした。
「門倉先輩は?なんだかんだと嫉妬深そうだけど」
「嫉妬?そんなのしないよ。あの人、自分が一番だから。取り乱したりしないし、遊び相手は掃いて捨てるほどいるもん」
以前見かけた男子生徒とのキスシーンや先程の女の子達への対応を思い出しながら綾人は眉間に皺を寄せた。
そんな綾人を見てざくろはクスリと笑う。
「白木君は俺と一緒で嫉妬深そうだね。門倉先輩、何かしたの?」
門倉をけなすくせにその表情はとても辛そうで、綾人の素直さが滲み出ていた。
そんな幼さにざくろの中の綾人への評価が上がっていく。
「・・・男ってやっぱり女の子が好きだよね。あの人も自分から付き合ってって言ってきたくせに今日は外部から女子が来たもんだから全力ではしゃいでてウザイ!」
拳を握りしめて吐き捨てる綾人をざくろは黙って見つめた。
女の子には申し訳ないが、よほどの美少女でも綾人の右に出る者は容姿だけでは、まずいないであろう。
芸能人のアイドル、モデルでもここまで綺麗な人間はなかなか見ることはない。
なので、何をそんなに不安がっているのか謎ではあったが、綾人が女の子達へ嫉妬していることは理解できた。
「女の子になりたいの?」
「はぁ!?なりたくないよ!」
「俺、ドレス持ってるよ。着てみる?」
ソファから立ち上がり、箪笥の中から白い厳かな箱を持ってくると、ざくろはテーブルの上へそれらを広げた。
箱の中にはベビーピンクの華やかなドレスがあって、綾人はざくろを若干引き気味に見つめた。
「・・・・女装の趣味でもあるの?」
「違うっ!!!」
少し軽蔑気味の目を向けられたざくろは全力で否定する。
「これは、九流先輩のお母さんが・・・」
「え!親公認なわけ!?凄い!!」
身を乗り出して興奮する綾人に、もう何て言えばいいのか分からず、黙々と九流の母親がプレゼントしてくれたベビーピンクのドレスを箱から取り出した。
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