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第148話
肩紐のキャミソール型のベビーピンクのワンピースはビーズの花とレースがふんだんに使われていて、ウエストは細くみせるデザインだった。腰の背後には大きな花がシルクで結ばれていて華やかさがある。
悲しき事に男なだけあってぺたんこの胸が虚しかったが、童顔で雰囲気も幼さがある綾人には違和感がなく只々、可愛いとしか言いようがなかった。
「うわぁ〜!すっごく可愛い!!お姫様だ!!!」
髪の毛はショートだがふわっふわのパーマがかった蜂蜜色の髪は綾人が動くたび揺れて愛らしい。何処から見ても可愛い女の子だった。
「白木君、門倉先輩絶対に鼻血だすよ!」
「嫌な褒め言葉止めてよ」
「だって、あらゆる面で興奮する!」
自分が鼻血を出しそうだとざくろは鼻を押さえる。
「っていうか、こんな高そうなのいいの?」
「うん。是非着て!使い道が無くて困ってたんだ」
大きく頷いて力強く言い切るざくろに綾人は目を丸くした。
ただならぬ訳ありを感じ取ったのだ。
「ただ、写真一枚だけ撮っていい?先輩のお母さんにこんな可愛い子が着たよって言えば喜んでくれるはずだから!」
「うん・・・」
写真に不安感はあったが、ざくろからは悪意を全く感じなくて綾人は小さく頷くと、携帯電話をカメラモードにするざくろに写真を一枚撮らせてやった。
満足そうに笑うざくろは部屋の壁に掛かる時計を見た。
「もうすぐ12時だ!俺、妹が来るからもう行くね。白木君も門倉先輩とちゃんと仲直りしてね」
ソファから立ち上がり、その可愛い姿を早く見せに行ってやれと背中を押される。
「あ、ありがとう・・・」
言われるままに部屋を出て、小さな声でお礼を言うとざくろは本当に可愛いなと微笑んだ。
その顔がとても優しくて綾人は上目遣いで頼んだ。
「ねぇ、友達になれない?」
「え?」
「僕と友達になって!」
お願いと、詰め寄ると一瞬、戸惑う様子を見せたざくろだったが、にっこり笑って頷いてくれた。
「もちろん!お願いします!!」
その言葉に安堵した綾人はふわりと微笑んで右手を差し出した。
「ありがとう、ざくろ。僕のこと、綾って呼んでね」
差し出された手を握り返してくるざくろに、屈託のない笑顔を向けると、綾人はひらりとスカートの裾を翻し、門倉を探しに走った。
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