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第150話
「猛!綾、知らないか!?」
いつもの余裕風を吹かせる暇もないのか、珍しく制服も髪も崩れた門倉が逃げこむように生徒会室へと入ってきた。
「・・・白木?つーか、女共はもういいのか?」
書類から目を上げて、慌てふためく親友を前に九流が聞く。
「あんなのリップサービスに決まってるだろ!どれだけ免疫ないのか知らないけど、構えば構うほど図に乗って撒くのに時間が掛かったよ」
クソっと、ボヤきながら制服の身だしなみを整える門倉に九流が引き出しの中から携帯電話を取り出した。
「なんか、ピンクのワンピース着て校内駆け回ってるって噂が凄かったぞ。あと、これ。携帯落としたみたいだから、渡しとけ」
ポイッと投げられた携帯電話をパシッと掌で受け取とると、門倉は信じられないと目を細めてガクリと肩を落とした。
その携帯電話は綾人のもので、何度電話を鳴らしても繋がらない理由がようやく分かったからだ。
「っていうか、ピンクのワンピースなんてどうして着てる訳?」
「お前が着せたんじゃねーの?」
額を押さえて聞いてくる門倉に九流が首を傾げた。
「そんなの着せたら綾ちゃん、大変なことになるじゃんか!あの馬鹿!!マジで何処いったんだ!?」
髪を掻き上げては苛立ちを見せる門倉に九流が仕方ないと校内放送のマイクを門倉へとぶん投げた。
「これで、呼び掛けて待ち合わせしろ」
素っ気なく言われ、門倉はそのマイクを受け取るとなるほどと、校内放送をかけた。
ー ピンポンパンポーン ー
『1年A組。白木 綾人。一階、体育館小ホールの花の間のイベント会場へ今直ぐ来なさい。繰り返します。1年A組・・・・」
門倉は放送をかけるや否や九流へマイクを投げ返す。
「猛、ありがとう!じゃあ、あと頼むね」
これで綾人に会えると機嫌を直す門倉に九流が釘を刺した。
「明日はお前の番だからな!」
「え?」
「え?っじゃねーよっ!!今日は俺が全部の仕事を担ってるけど、明日はお前がちゃんとこなせよ!俺は何一つ手伝わねーからな!」
牙をむいて、明日は自分が休みだと訴えてくる九流に門倉は満面の笑顔を向けた。
「分かってる!分かってる!明日はちゃんとお前の分も働くって。だから、今日は一日遊ばせてよ」
パチンっとウインクしてはヒラヒラと手を振る門倉は軽やかに身を翻し、そのまま生徒会室をあとにした。
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