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第152話

「いたっ!」 「わっ!ごめん!!」 何を急いでいたのか、相手の男があまりに勢いがあった為、綾人は軽く吹き飛んでボスんっと花畑に尻餅をついた。 打った鼻を押さえて顔をあげると、その人物に目を見開き、声を上げた。 「さ、桜田!!?」 「え?・・・えぇ‼︎?し、白木‼︎?」 以前、門倉の買い物に外出を付き合ったとき、偶然にも再開した中学時代の同級生が目の前に現れて綾人は目を丸くした。 「どうして、ここにいるの!?」 「いや、白木に会いたくて・・・って、何その格好!凄く・・・かわいい・・」 驚いたと目を瞬かせていた桜田は綾人の女装姿に顔を赤くして見惚れた。 「え・・・、これは、その・・」 恥ずかしさに顔を俯かせていると、桜田の逞しい腕に手を掴まれて引き起こされる。 「街で会ってからずっと気にしてたんだ!今日は立春高校は祭りだから一般人も入場できるって聞いたから来たんだけど、人の多さに会えるか不安だったんだ。そしたら、白木を呼び出す放送が流れて・・・」 急いできたと、嬉しそうに笑う桜田に綾人はふわりと微笑んだ。 「わざわざ来てくれてありがとう・・・」 自分も桜田とはもう一度、会いたいと思っていた。 なので、こうして会いに来てくれた事は素直に嬉しかった。 「それにしても白木、お姫様みたいだ!本当に可愛い!!」 まじまじと見つめては握り締めてくる手に力を込められる。 恥ずかしさに顔を背けると、視界の端に門倉が映った。 門倉は相変わらず、女子に囲まれては笑顔で楽しそうだ。そんな姿を見たくなくて顔を曇らせ、瞳を伏せると桜田は綾人を自分の胸へと掻き抱いた。 「また、あの先輩?」 「え!?」 いきなり抱きしめられたこともだが、質問の内容にも驚いて顔を上げると、桜田は辛そうに顔を覗かせた。 「あの人いつも女はべらかせてるよな。あんな女タラシ、白木には似合わない!」 街であった時も門倉は逆ナンにあっていた。そのことを言っているのか、不快そうに桜田が言うと、綾人の両肩を掴んで意を決したように口を開いた。 「白木、好きだ!俺と付き合って下さい!!俺、中学のときからお前のことがやっぱり忘れられない!あの日、あそこで再開したのも運命なんだって思ったんだ!!」 真摯な瞳で熱い告白をしてくる桜田に綾人は赤面する。 嬉しい気持ちはある。 あるのだが、自分は・・・・ 「・・・あの・・、んっぐぅ!!!」 ごめんなさいと、続けようとした瞬間、後ろから口を覆われて強い力で引き寄せ、体を抱きすくめられた。 「運命?そんなの勘違いだよ」 頭上から落ちてきたその声はとても冷ややかで怒りを伴う声音に綾人は身を強張らせた。 そっと視線のみを上げて自分を抱きしめる男を確認する。 それは自身をとり囲む女を全て振り払っては自分の元へとやってきた門倉で、綾人は不覚にも喜びに胸を震わせた。

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