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第167話

「天使がグレた!」 「俺らの綾ちゃんがっ!」 「でも、堕天使でもいい!可愛いからっ!」 月曜日、学校へ来るものの金曜、土曜の拷問が糸を引いて綾人は絶不調だった。 学校を休むよう言われたが、門倉の言う通りにするのが癪で根性で登校したが周りのクラスメイト達が自分の不機嫌さに近付いて来ない。 それはかつてない程嬉しいことではあるのだが、口々に微妙に聞こえてくるふざけた言葉に苛立ちが増していった。 「綾、おはよう。なんか、辛そう。大丈夫?」 「・・・ざくろ」 机に突っ伏していた綾人は優しい声で顔を上げた。情事で叫び過ぎたせいで綾人の声はまだ少し掠れていて、ざくろは風邪を引いたのかと勘違いに顔を心配そうに顰めてはのど飴を差し出してくれた。 優しさに触れて、ありがとうと飴を受け取ると、そんな優しいざくろとの外出を拒否する門倉が頭の中に浮かんで綾人は憎々し気に罵倒した。 「あの、変態マジでどうにかなんないかな。天罰くらって泣けばいいのに!一回痛い目見ればいいんだっ」 名前は出さずともその変態が誰なのか、なんとなく想像が付いてざくろは乾いた笑いを浮かべた。 「ざくろ、九流先輩に僕と遊びに行くこと言った?」 「うん。でも、反対されてて困ってる。ナンパされると駄目だからって・・・」 シュンとなるざくろに綾人は舌打ちしてざくろのところもかと息を吐いた。 そして、門倉への反発意識から相談してみる。 「黙って行かない?今度、生徒会の仕事が忙しいときにまた計画立てよう!友達と出掛けるのが禁止とかおかしいもん!」 「喧嘩したの?」 「喧嘩!?そんな生易しい言葉使わないで!もう、暴力だよ!暴力っ!!僕のこと、人形か実験台のマウス程度にしかあの人思ってないっ!凄いムカつく!」 机をドンっと拳で叩きつけて綾人は半泣きで叫ぶとざくろは驚いた顔になった。 「だ、大丈夫?」 「大丈夫じゃないっ!だから、ざくろ!お願い!一緒に二人には黙って出かけよう!二人で楽しもう!!息抜きしなきゃ、僕が死んじゃうよ」 本当に息抜きしなくては死んでしまいそうな綾人にざくろは目を見張った。 門倉は普段はそこそこ温厚で優しいのだが意外と独占欲が強くて、自分が少し誰かと話しているだけで喧嘩腰の嫌味を言ってくる。 それが自分の中でも引っかかり毎度ケンカになっていた。 たいがい、門倉が機嫌取りに来るのだが意固地になっていると昨夜のような事態に陥って殺したい衝動に綾人は最近よく駆り立てられていた。 綾人から迸る異様な殺気にざくろは困った様に笑って頷く。 「・・・・うん。分かった。先輩には妹と会うって言ってみる。でも、今度四人で出掛けようって言ってたよ?ダブルデートもいいよね」 和かに笑うざくろが可愛いと綾人は溜息を吐いた。 二人のデートがどれだけ甘いのかは知らないが、綾人は門倉との外出を快く思っていない。 いつも門倉中心に動く彼に振り回されては何故か叱られて喧嘩になるのがオチなのだ。 出掛けると確実に喧嘩になることから門倉との外出は極力避けていた。 そのことを伝えるとざくろは笑顔で提案してきた。 「俺らが一緒だし、二人の何がそんなに喧嘩に繋がるのか見ていてあげるよ!」 その言葉に客観的な思考を求めるのも一つかと綾人が頷くと、ざくろは今度の土曜日ダブルデートしようと計画を立て始めた。

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