171 / 309

第171話

「ちょ、ちょっと、待って!こ、腰がっ!!」 朝、ざくろと九流が朝食を誘いに来てくれたのだが、腰が立たないと綾人は顔を青くしながら、ベッドの上でもがいた。 「綾ちゃん、今日出かけれんの?」 扉付近にて壁に背を預け、呆れた顔で門倉が聞いてくるのを綾人は恨めしそうに睨みつける。 誰のせいでっ!!! 憎悪を込めた瞳を向けると、ざくろがまあまあと宥めに入ってきた。 「じゃあ、俺と九流先輩で食べてくるね。約束の11時までまだ時間あるし、ゆっくりしなよ」 笑顔でそう告げるとざくろはパタンっと扉を閉じて九流と食堂へ行ってしまった。 それを見送った門倉は部屋へ自分家の執事を呼び寄せ、綾人と二人分の朝食を用意させた。 シャワーを浴びて身支度を整える門倉は相変わらず隙がなくて完璧だ。 それに比べて、綾人はまだ腰が痛いと裸で毛布に包まり横に寝そべっている。 「綾ちゃん、お湯張ったからゆっくり浸かっておいで」 そっと、綾人を毛布ごと抱きかかえ、門倉は風呂場へと移動した。 毛布を剥ぎ取ると少し熱めのお湯を張った浴槽に綾人の体を沈めてやる。 「いい子だね。ちゃんと、浸かるんだよ」 濡れたタオルでキュッキュッっと顔を拭いてくる門倉をゆっくり見上げた。 整い過ぎる顔がカッコよくて胸がときめく。 目の毒だと視線を伏せたとき、ジャバンッと頭からお湯を被された。 「ぷはっ!な、なに!?」 「いや、あんまり可愛いから洗ってあげようと思って」 「いらないよ!」 出て行けと、パシャんっとお湯を跳ねさせると門倉は笑って退散していった。 一人、湯船へ肩まで浸かると綾人はホッと息を吐く。 昨夜の情事の疲れが吹き飛んで、温かなお湯のおかげか腰の痛みも緩和されていった。 「う〜・・・。気持ちいい」 うっとりと体の力を抜いてリラックスすると綾人は頭と体を洗って朝風呂を満喫した。 十分に体を温めてお風呂から出ると脱衣所にはバスタオルと着替えが用意されていた。 白のタンクトップのフード付きトップスに麻の黒色の七分丈のパンツだ。自分が購入した記憶がないことから門倉のセンスで見立てられたプレゼントのようで、少しドキドキしながら袖を通した。 サイズはピッタリで自分で言うのもなんだが、似合っていた。 まだ少し濡れた髪のままリビングへ戻ると、コーヒー片手に新聞を読んでいた門倉がこちらを見る。 「服、似合ってるね。可愛い。・・・髪、乾かしてあげるからおいで」 コーヒーと新聞をテーブルへ置いてドライヤーを用意していた門倉が手招きして呼ぶので、素直に従ったら膝の上へ座らされた。 濡れた髪を温かい強風で乾かされる。 風呂上がりの為、体も熱いのに汗をかかないのは少し低めに設定してくれている室内の温度のおかげだろう。 「幸せ〜」 長い指で梳くように優しく髪を乾かされ、綾人はその心地よさにうっとりと瞳を閉じた。

ともだちにシェアしよう!