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第173話
「門倉先輩、きらーい!」
約束の時間にざくろ達が迎えに来て、四人は街へと繰り出したのだが、綾人は門倉の隣は歩かないとざくろにべったりくっついていた。
ご機嫌斜めな天使に一同、呆れた溜息を吐く。
朝食の青汁は結局、飲む・飲まないの言い争いの結果、キレた門倉が綾人を羽交い締めにして無理やり口の中へと注ぐ結果となった。
泣き叫んでは一気にヘソを曲げたのだが、綾人を思えばの行動で門倉は後悔していない。だが、あまりの機嫌の悪さを直して欲しくて幼馴染にアドバイスを求めた。
「どうしたら機嫌治ると思う?」
「さぁ。ぬいぐるみか何か買ってやれば?」
あまり当てになりそうもないアドバイスに参ったなと溜息を漏らし、九流と肩を並べて歩いていたら後ろから声を掛けられた。
「ねぇ、ねぇ〜。君たちヒマ〜?」
女の子特有の甘ったるい可愛らしい声に二人が振り返ると、そこにはかなりレベルの高い容姿の美女が二人並んで立っていた。
「やっばぁ!超かっこいい‼︎」
「ほんと〜!ねぇねぇ、お茶しよう?んで、カラオケ行こう〜」
門倉と九流の腕に一人一人絡みついては女の子は知り合いが如く甘え始めた。
自分の容姿に余程の自信がある為、この様なことをしても失礼に当たらないと馬鹿な思考を持ち合わせているのだろう。
馴れ馴れしく触るなと、九流が絡みついた女子を振り払うって一瞥した。
「気持ち悪いな。俺にさわるな!」
腕を組んでフンッと顔を背けると女の子は傷付いたように顔を歪ませ、プライドを踏み躙られたと口を開いた瞬間、門倉がそっと女の子の頬を掌で包んだ。
「可愛らしい妖精さん。お言葉は有難いんだけど、残念な事に今日は連れがいてね。また今度会えた時にそのお誘いに乗りたいな」
甘い王子の微笑みでにこやかに女の子に対応する門倉を九流はキザったらしい奴と、目を細めた。
そして、そんな九流と正反対の門倉に女の子は目をハートにして抱きついた。
「携帯番号教えて?いつでも呼び出して!!」
「私も!私も!!絶対予定空けるから!」
キャアキャアはしゃいでは無遠慮に体のあちこちをベタベタ触ってくる女子を相手に門倉は笑顔を崩さない。
「携帯電話なんて俗なものいらないでしょう?運命なら遠くない未来、必ず会えるんだしね!じゃあ、またね」
スルリと体を引いてパチンとウインクをすると、門倉は女の子を残して前を歩いた。
が、その前方にモノすっごく不機嫌かつ自分を睨みつける天使に笑みを固めて足が止まった。
綾人の隣では門倉の甘い対処方にざくろが顔を赤く染めて俯いている。
「・・・綾ちゃん?」
何をそんなに怒った顔をしているのか理由が分からず、門倉が機嫌を取るように側まで近付き、猫なで声を出す。
「どうしたの?パンケーキ食べに行こう?」
そっと、先ほどの女の子にしたように手を差し伸ばして自分へ触れようとしてくる門倉に綾人は嫌だと眉間に皺を寄せると、その手を叩き落とした。
「触らないで!あと、僕のこと気にしてるなら結構です!さっきの妖精とデート楽しんでください。さようなら」
吐き捨てるように言っては、踵を返して背中を見せる綾人に門倉は訳が分からなくて、すぐ側にいた九流とざくろを見た。
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