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第176話
パンケーキを食べた後、四人は水族館へ移動した。入場すると、九流は嬉々としてざくろの手を取り水槽の中を見て周る。
そんな後ろ姿を見つめて門倉が綾人の手を取ろうとしたが、また鬱陶しと嫌がられそうだとやめた。
「綾、おいでよ。小さな魚がいっぱい、いるよ」
少し離れた場所で手招きすると、綾人はパァっと顔を笑顔にして駆け寄ってきた。
「凄く、綺麗!」
「そうだね」
やっといい雰囲気になってきた二人にざくろは視線を向けるとホッと胸を撫で下ろした。
「こら。よそ見すんな!」
チュッと、おでこへキスを落として甘い文句を言ってくる九流にざくろはふふっと小さく笑って身を擦り寄せる。
幸せを噛み締めてはうっとりと水槽を眺めて恋人同士の時間を満喫していたら、また二人のいがみ合う声が耳へと入ってきた。
「そんなに女の子がいいなら女の子とデートしてよ!」
「そんな事、一言も言ってないだろ?」
「言ってる!今だって女の子と目が合ったら気のある笑顔見せて、やらしいっ!」
「会釈されたから会釈し返しただけじゃんか!」
段々大きな声で揉め始める二人にざくろが何事だと慌てて駆け寄った。
「ど、どうしたの!?」
「門倉先輩が、僕と女の子を比較する!」
ざくろの質問に綾人が涙を浮かべて抗議してきた。すると、門倉が違うと大声で否定した。
「比較じゃなくて、夕涼み会での綾人の姿は可愛かったなって思い出して褒めただけだ!」
ピンクのワンピースにロングのウイッグを付けた女神をまた見てみたいと何気なしに言ったのだが、どうやらそれが綾人の癇に障ったらしい。
ざくろとしては自分も女装経験があるが、男である為、そんな姿を褒められても嬉しくはないしそれをまたして欲しいと言われてもいい気はしない。なので、綾人の気持ちは痛いほど分かった。
「ん〜・・・。ちょっと、門倉先輩・・・・」
無神経過ぎますよと、続けようとしたとき九流がズカズカ歩いて門倉の肩を組むと水族館の隅っこへと有無を言わさぬ勢いで連行して行った。
「え!?九流先輩!?」
驚いたざくろが目をパチパチ瞬かせるなか、九流は門倉へ何かしらのアドバイスをし始め、それをざくろと綾人は見守ることにした。
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